【収録曲】
全曲作詞作曲 浜田省吾
全曲編曲       浜田省吾&水谷公生
プロデュース 浜田省吾&鈴木幹治

1.光の糸 ★★★★★

2.旅するソングライター ★★★★★
3.きっと明日 ★★★★★

4.マグノリアの小径 ★★★★★ 
5.美しい一夜 ★★★★☆

6.サンシャイン・クリスマスソング ★★★★★
7.五月の絵画 ★★★★☆
8.瓶につめたラブレター ★★★★☆
9.ハッピー・バースデイソング ★★★☆☆
10. 夢のつづき ★★★★☆
11. 夜はこれから ★★★☆☆

12. 恋する気分 ★★★★★ 
13. 永遠のワルツ ★★★★☆
14. アジアの風 青空 祈り part-1 風 
15. アジアの風 青空 祈り part-2 青空
16. アジアの風 青空 祈り part-3 祈り
14~16 ★★★★★

17. 誓い ★★★★★ 


DISC2(完全生産限定盤、期間限定生産盤のみ) 評価は省略させていただく。
1.ハッピー・バースデイソング (Acoustic Version)
2.アジアの風 青空 祈り part-3 祈り (Instrumental Version)
3.光の糸 (Remix Version)
4.旅するソングライター (Remix Version)
5.マグノリアの小径 (Remix Version)
6.瓶につめたラブレター (Remix Version)
7.きっと明日 (Remix Version)
8.恋する気分 (Remix Version)
9.夜はこれから (Club Mix 2015 Version)
10.永遠のワルツ (Instrumental Version)


2015年4月29日発売(完全生産限定盤、期間限定生産盤、通常盤、完全限定LP盤)
クリアウォーター
最高位1位 売上15.9万枚


浜田省吾の18thアルバム。先行シングルは無し。「夢のつづき」は今作に先立って発売されたミニアルバム「Dream Catcher」に収録されている。前作のオリジナルアルバムから10年ぶりのリリースとなった。
複数形態でのリリースは浜田自身初。
初登場1位を獲得しただけでなく、2週連続1位を獲得するというヒットを記録。年間アルバムランキングでも25位を獲得した。男性ソロアーティストだと福山雅治の「魂リク」に続いて年2位となった。


前作は王道と言えるロックが主であったが、今作はロックやポップスの他にもワルツ、クラシック、R&B、EDM等の要素を持った楽曲が展開されており、バラエティ豊か。アコギを使った楽曲も多く、弾き語りによる曲もある。


「光の糸」はアルバムのオープニングを飾るに相応しいポップな一曲。リード曲であり、今作のCMにも使われた。PVも制作されている。モノクロの映像に浜田がギターで弾き語りしているだけではあるが、何とも言えない力強さがある。サックスが効果的に使われ、曲を盛り上げていく。60代を迎えた浜田ならではの思いが綴られた歌詞が円熟味を醸し出す。力強く、そして優しく、生きていくことへの勇気を与えてくれる。



「旅するソングライター」はタイトル曲。浜田曰く自らの職業は「ソングライター」だという。この曲はレゲエ調。主人公は浜田自身だろうか?生きることへの喜び、離れたところで自らの帰りを待ってくれる愛する人への思いが語られている。サビの「成し遂げたことより 今をどう生きるかって考えてる」という歌詞が印象的。



「きっと明日」は大人の色気を持ったラブソング。しかし、若さも感じさせる。アコギが主体となったサウンドではあるが、とてもポップ。「きっと明日」「きっといつか」と繰り返される歌詞が印象的。詳しい描写がされているわけではないが、聴いているだけでカップルの姿が思い浮かんでくるようだ。管理人は今作の中ではこの曲が一番好き。



「マグノリアの小径」は浜田流のウォール・オブ・サウンドが展開された一曲。厚いコーラスが繰り広げられている。この曲を聴くまで知らなかったが、「マグノリア」という言葉は木蓮のことなのだという。舞台はイタリアのトスカーナ。歌い出しの「もっと自由でいいんだ 太陽の下」「もっと自分でいいんだ 人波の中」という歌詞は現代を生きる人々へのメッセージだろうか。1曲目から4曲目までの勢いが凄い。とてもポップな曲が並んでいる。



「美しい一夜」はムード溢れる静かなラブソング。ここまでのアルバムの流れを落ち着けるような一曲。流麗なストリングスがサビで効果的に使われ、曲のイメージを膨らませてくれる。「美しい一夜」「美しい人よ」とどちらでも取れる歌詞が印象的。



「サンシャイン・クリスマスソング」は暖かい雰囲気溢れるクリスマスソング。むしろ暑い感じ。日本ではなくオーストラリアでクリスマスを迎えているのかと思ってしまう程である。
浜田のクリスマスソングは切ないものばかりだが、この曲は幸せな内容。サウンドはレゲエ調。今まで一人ぼっちの寂しいクリスマスを過ごしてきた男に彼女ができ、舞い上がっているという内容の歌詞。中高生のようにピュアな男の心情が何とも微笑ましい。
「いつもと同じ街並み 違って見える今年は 不思議!」聴いているこちら側にもその嬉しさが伝わってくる。



「五月の絵画」はギターの弾き語りによるシンプルな一曲。前作収録の「花火」のアンサーソングと言える。家出して行方をくらませていた父親とそれを許さずにいた娘が再会するという内容の歌詞。「また、会えるよね?」と笑顔で娘が言ってくれた。父親は「許す」という意味と捉える。ドラマや映画のシーンのようだ。少しずつ時間を取り戻していくのだろうか。



「瓶につめたラブレター」は3分半の短い曲。メッセージボトルにラブレターを詰めて君に送る。それは届くかどうかわからないが、読んでくれなくても構わないと言ってしまう。「独り言のようなラブレター」と言い切る男の心情が印象的。明るい曲調が無理しているように感じられる程切ない歌詞。



「ハッピー・バースデイソング」はタイトル通りバースデーソング。両親への感謝をしたくなるような優しい歌詞。ゴスペルのようなコーラスがメッセージ性を高める。父親が子供に歌っているようなイメージの一曲。



「夢のつづき」は今作発売前にリリースされたミニアルバム「Dream Catcher」に収録された曲。映画『アゲイン 28年目の甲子園』の主題歌に起用された。この曲もギターの弾き語りによるシンプルな曲。この映画は管理人も観たが、映画の雰囲気に合っていた。親子の愛、夫婦の愛が歌われた温かい歌詞。浜田のボーカルも穏やか。


「夜はこれから」は異色のEDMテイスト。サックスとギターによって彩られた浜田流のダンスミュージック。名前は知らなかったが、中嶋ユキノという女性歌手がコーラスで参加している。夜の雰囲気を持った曲。浜田のボーカルは加工されている。賛否両論が思い切り分かれそうだが、60代を迎えてもなお新たな音楽に挑戦し続ける浜田の姿は格好良い。



「恋する気分」は長らく一人で生きてきた男が恋に落ちるという内容の曲。その内容は「サンシャイン・クリスマスソング」を思わせる。
「あの娘がオレの前に 突然現れた時から 静かで平和な日々 一瞬で消えた でも It's OK. 恋に落ちてる この気分 ぜんぜん悪くない」というサビの歌詞が微笑ましい。曲はその気分を表現しているようなポップなもの。



「永遠のワルツ」はタイトル通りワルツを取り入れた一曲。浜田のボーカルとワルツの親和性が高く、違和感無く聴くことができる。結婚式をテーマにした幸せな歌詞。ストリングスが使用されており、美しいこの曲を静かに盛り上げる。



ここから3曲は「アジアの風 青空 祈り」。CD上の扱いは1曲扱いとなっている。プログレッシブロックのような印象を受けるが、同じメロディーをアレンジや歌詞を変えて3つの曲に分割したものである。40年近くに渡って戦争についての歌を発表してきた浜田ならではの重みがある。怒りや祈りを全ての世代にも通じるような簡単な言葉で表現している。
一続きとなっているため、まとめて評価させていただいた。



「アジアの風 青空 祈り part1 風」は波の音から始まる静かな一曲。過去の戦争で亡くなった兵士、今も何処かで戦っている兵士へのメッセージが綴られた歌詞。「陽の下で 月の下で誓おう No More War.」という歌詞は反戦のメッセージが込められている。浜田の父親は被爆者だという。反戦は浜田にとっては永遠のテーマであり、願いと言える。



「アジアの風 青空 祈り part2 青空」は前と一変し、力強い曲調に。原爆のことや、東日本大震災のことが歌詞に含まれている。
「あまりに多く血が流された とてつもない悲しみが襲った あまりに尊い犠牲を払った 充分過ぎるくらい学んだ…違うか?」というサビの歌詞は指導者への怒りが込められている。



「アジアの風 青空 祈り part3 祈り」は再びピアノ中心の静かな曲調に。「光の糸」でも出てきた「命の炎」という言葉が使われている。「命の炎」を燃やして生きていく。そのような誓いが歌われている。



「誓い」はアルバムのラストを飾る一曲。「アジアの風 青空 祈り」からそのまま続いているような内容の歌詞。しかし、その誓いは世界に向けたような大きなものではなく、日常への小さな誓いである。「飲もう」「弾こう」「再会の時を誓う」というメッセージ。
「大きな悲しみを乗り越えてこれからを生きていく」という誓い。誰にでもいつか訪れる大切な人との別れをどのように受け止めるか。考えなければならない。



60代を迎えた浜田は今作に「生きていくこと」への思いを託した。その思いは聴けば聴くほど伝わってくる。重苦しい内容に思えるかもしれないが、ポップな曲の方が多い。圧倒的な完成度を誇る一作。
管理人は2015年を代表する名盤だと思っている。浜田のアルバムが今作で最後にならないことを願うばかりである。今作を超えるアルバムを作るのは相当に難しいことだと思うが。活動してくれるだけで嬉しい。ただそれに尽きる。

★★★★★