【収録曲】
特記以外全曲作詞作曲 岸田繁
全曲編曲 くるり
プロデュース くるり トニー・ドゥーガン
2.作曲 くるり
3.作曲 岸田繁/佐藤征史
6.作曲 くるり
8.作曲 岸田繁/大村達身/クリストファー・マグワイア
1.グッドモーニング ★★★★★
2.Morning Paper ★★★★★
3.Race ★★★★☆
4.ロックンロール ★★★★★
5.Hometown ★★★☆☆
6.花火 ★★★★☆
7.黒い扉 ★★★★★
8.花の水鉄砲 ★★★☆☆
9.バンドワゴン ★★★★☆
10.How To Go 〈Timeless〉★★★★★
2004年3月10日発売
2005年9月22日再発
SPEEDSTAR RECORDS
最高位3位 売上約8.9万枚
くるりの5thアルバム。先行シングル「HOW TO GO」「ロックンロール」を収録。最高位3位を記録し、当時の自身最高位となった。
ドラマーのクリストファー・マグワイアが参加した唯一のアルバムである。岸田は今作を「クリストファーのアルバムやなと思ってて」とコメントしている。バンドサウンドは今作が最も充実しているといえる。
前2作にあったようなテクノ、エレクトロニカ、ダンスミュージック等の要素は無くなり、バンドとしての原点に立ち返ったようなストレートなバンドサウンドが中心となっている。音楽の変化について岸田は「飽きてしまったから」とコメントしている。
アルバムの共同プロデュースにはトニー・ドゥーガンが参加している。レコーディングエンジニアとして高山徹が参加した。
「グッドモーニング」はアルバムの始まりを飾る静かな曲。フォークソングを思わせるサウンド。静かでありながらも非常に美しいメロディー。朝方の日が昇ってくる情景が浮かんでくるような曲である。夜行バスで新宿へ行くカップルが主人公。夢が始まろうとしている二人の姿が印象的。
「Morning Paper」は重いギターサウンドがメインのロック。重いサウンドではあるが岸田のボーカルは無気力な感じなので不思議な耳触りとなっている。歌詞も気だるい印象のものである。このような曲はくるりの王道といえる。「モーニングペーパー」は朝刊を意味している。
「Race」は和風なサウンドがメインの一曲。バイオリンやチェロ、ビオラが使われている。歌詞の意味はよくわからない。ただ、歌い出しの「空が曇ってきたからって泣き言ばかり言ってんなよ 悲しみなんてぶっ飛ばせ 持ってる荷物放り出しなよ」というフレーズはとても力強く、印象的である。
「ロックンロール」は先行シングル曲。タイトルはライブ中のクリストファー・マグワイアの「ロックンロールは、好きですかー?」という日本語のMCが元になっている。サウンドはとても力強いものであるが、リフやメロディーはポップでキャッチー。岸田のボーカルも爽やか。歌詞はポジティブで心地良いもの。今作の雰囲気を代表するような曲である。
「Hometown」も重いギターサウンドが前面に出た一曲。地元から離れて音楽活動をしている自分たちを皮肉るような歌詞が印象的。曲は2分半とかなり短いものの、そのような歌詞のためインパクトが強い。バックボーカルとして五島良子が参加している。
「花火」は和のイメージを持った一曲。ベースが前面に出たサウンドである。後半になるにつれてバンドサウンドがどんどん力強くなっていく。最後には喧嘩をしているような迫力溢れる音になる。その展開には聴く度に驚かされる。
「黒い扉」は今作の中で最も長尺な一曲。虚無感を感じさせるメロディーが印象的。この曲の歌詞はとても短いので、演奏を聴かせる曲だと思われる。メンバーそれぞれの演奏が静かに響いてくる。8分半あるこの曲の内、約半分は演奏のみであるが、それでもダレることなく聴けてしまう。ジャズロックのようなイメージの曲。何度か聴いたら自然にハマった。
「花の水鉄砲」は民謡テイストの一曲。言葉遊びのような歌詞がとても印象的。「らんどう」「面倒」等と韻が踏まれている。静かに盛り上がっていくようなサウンドが心地良い。このような和のイメージを持った民謡テイストの曲はくるりの楽曲には結構ある。京都出身のくるりらしいといえる。
「バンドワゴン」は岸田によるアコギの弾き語りによる曲。初期のくるりを髣髴とさせる一曲である。段々と迫ってくるようなアコギの音が良い。「いつまでたっても僕がいて 誰かのためにあなたは笑う」という歌詞が印象的。歌詞はとても優しく、情景が浮かんでくるようなものとなっている。
「How To Go 〈Timeless〉」は先行シングル曲。シングルバージョンはドラムが打ち込みだったものの、こちらはクリストファー・マグワイアによる生演奏になっている。力強いサウンドに反して曲はとてもゆったりとしている。アルバムのラストにふさわしい壮大さを持った曲。クリストファー・マグワイア所属時代を代表する名曲。他のどの時代で同じように演奏したとしてもこのバージョンを越えることはできないと思う。諦めながらも小さく希望を持っているようなイメージの歌詞がとても良い。
「いつかは想像を超える日が待っているのだろう」という歌詞が特に好き。
ヒット作ということもあり、中古屋でそこそこ見かける。ロックバンドとしてのくるりを味わえる一作。他のアルバムに比べてバンドサウンドが非常に力強く、迫力がある。しかし、力強いとは言っても「図鑑」の頃のような狂ったようなサウンドという訳でもない。あくまでシンプルなイメージのサウンドである。
しかし、全体を通して聴くと、ポップな曲やキャッチーな曲が少ない。ライトリスナーにはあまりおすすめできない。ある程度聴くと自然と馴染んでくるようなアルバム。かなり地味な印象の作品ではあるが、聴く度に良いと思える。シンプルで気だるい感じが逆に中毒性を生んでいるのだろうか?今作を聴くシチュエーションとしては朝に聴くのがおすすめ。それはいうまでもなく「グッドモーニング」「Morning Paper」の繋がりが理由ではあるが。
★★★★★
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