SING LIKE TALKING
1997-05-28


SING LIKE TALKING
2015-02-11(リマスター盤)


【収録曲】
全曲作詞 藤田千章
3.作詞 佐藤竹善・藤田千章
5.作詞 Cat Gray,藤田千章 対訳 森田義信
6.作詞 佐藤竹善
8.作詞 藤田千章・Cat Gray
全曲作曲 佐藤竹善
全曲編曲 SING LIKE TALKING&Cat Gray
5.編曲 Cat Gray
5.ホーンアレンジ 小林正弘
6.ストリングスアレンジ 塩谷哲 
プロデュース Cat Gray

1.Seasons Of Change ★★★★★
2.Real Life ★★★★☆
3.Starting Over ~ありあまる想いで~ ★★★★☆
4.Skylark ★★★★★
5.Forever ★★★★★
6.君の風 ★★★★☆
7.Rendezvous ★★★☆☆
8.Spirit Of Love(Sanctified Version) ★★★★★
9.Flame(Remix) ★★★★☆
10.Speed ★★★★★
11.The Light Is You ★★★★☆

1997年5月28日発売
2015年2月11日発売(リマスターBlu-Spec CD2再発)
ファンハウス
Ariola Japan(2015年リマスター盤)
最高位4位 売上30.5万枚

SING LIKE TALKINGの9thアルバム。先行シングル「Spirit Of Love」「The Light Is You」「Speed」「Flame」「Seasons Of Change」を収録。前作「DISCOVERY」からは約1年10ヶ月振りのリリースとなった。

デビュー以来毎年オリジナルアルバムをリリースしてきたSLTだが、1996年はリリースが無かった。これは「1996年はシングルの年」と決めていたからのようだ。実際に1996年はシングルを3作リリースしていた。

今作は佐藤竹善にとってはSLTだけでなく、SALT&SUGARやPLUS ONEでの活動も経てリリースされている。SALT&SUGARはSLTの楽曲でもお馴染みのピアニスト塩谷哲(塩=SALT)と佐藤竹善(さとう=砂糖=SUGAR)の二人によるグループ。そちらはライブ活動をメインにしていた。PLUS ONEは小田和正と佐藤竹善のユニット。その二つのグループでの活動と並行してSLTの楽曲を仕上げていったという。

楽曲制作では今まで行っていた、一定期間スタジオに入って曲を作る形ではなく、「いい曲が書けたら、その段階でスタジオに入って仕上げる」という「一曲集中」という形でレコーディングされたようだ。そうしたことで、前述したユニットでの予定が入っても気軽にSLTでの作業を中断できたという。

今作はキャット・グレイがプロデュースに参加した最後のアルバム。今作はこれまでのプロデュース作品の到達点のようになっており、ポップな曲が今までの作品よりも多いが、ロック色の強い曲も多くなっている。
今作リリース前の1996年にはSLT自身初となる武道館公演を果たした。その勢いのままに、演奏の面で充実した曲が並んでいる。


「Seasons Of Change」は今作のオープニングを飾る先行シングル曲。日本テレビ系番組『TVおじゃマンモス』のエンディングテーマに起用された。藤田千章曰くタイトルは「悠久の時の流れの中での、人物や事象の様々な移り変わり(常識や価値観など)に対する詩的表現」という意味があるという。アメリカで主に使われている表現のようだ。オープニングを飾るにはあまりにも壮大な曲。オープニングにしてエンディングと言いたくなる程の風格がある。どこまでも広がる大地や雄大な景色を想起させる曲である。力強く隙のないバンドサウンドは大地の鼓動のようにも聴こえる。繊細で美しいメロディーや、優しさと力強さを併せ持った佐藤竹善の歌声には思わず聴き惚れてしまうことだろう。それでいてサビはとてもキャッチー。この曲の聴きどころは歌の部分が終了してからの2分半程ある演奏部分。西村智彦によるギターには圧倒されてしまう。歪みのある音色ながら、聴き手を包み込むような包容力も感じさせる。
歌詞は大自然の光景が描かれている。そして、その中を生きる自分たちは果てしなく小さな存在である。どのような悩みを抱えていても、自然を前にしたらそれは小さな物に過ぎない。自分が生きている意味を考えさせられるような大きなテーマの曲。
壮大なサウンド、メロディーの良さ、歌詞の訴求力…どれを取っても大好き。管理人の好きなSLTの曲の中でもかなり上位に入ってくる。


「Real Life」は爽やかなポップナンバー。日本テレビ系番組『スポーツうるぐす』のテーマソングに起用された。「Seasons Of Change」が完成するまではこの曲が先行シングルになる予定だったという。前の曲とは異なり、クリーントーンのギターサウンドが展開されている。イントロから爽やかな音色のギターを楽しめる。間奏では歪んだ音色のギターソロを披露している。そちらも表現力豊かな演奏となっている。沼澤尚によるパワフルなドラムや藤田千章のシンセも聴きどころ。メロディーは全編通して爽やかで、サビは極めてキャッチー。シングル候補だったというのも頷ける。歌詞は恋人へのメッセージと取れるもの。忙しい日々を過ごしていても、恋人のことは忘れずに想い続ける。誠実な男性の姿が想像できる。「月日は とめどもなく移ろい続けて行くから ぼくはすべての願いをきみのためにする」という歌詞が好き。SLTのポップな要素を詰め込んだような印象の曲となっており、ベストに収録されていても違和感の無いような曲だと思う。


「Starting Over~ありあまる想いで~」はここまでの流れを落ち着けるようなミディアムバラードナンバー。シンセやエレピが前面に出たサウンドが展開されている。浮遊感のある音作りをしつつも、骨太なバンドサウンドもしっかり主張している。その脇をがっちりと固め、職人的な存在感を放つギターサウンドも素晴らしい。スッと流れていくようなメロディーは聴いているととても心地良い。サビでの佐藤竹善のファルセットは思わず聴き惚れてしまうような美しさがある。歌詞は藤田千章と佐藤竹善の共作によるもの。この組み合わせで作詞された曲は少ない。歌詞全体としては、恋人へのメッセージというような内容。「陽の当たらない暗い部屋で 心鎖す(とざす)なんて 望んだ君じゃないさ 行きたい場所へ 風にさえ逆らって 感じている未来へ」という歌詞が顕著。ポジティブなメッセージが並んでおり、曲調とともに気分が晴れるような明るさがある。


「Skylark」はファンクやフュージョン色の強いポップナンバー。アサヒ飲料「バヤリース」のCMソングに起用された。タイトルは鳥のヒバリを意味する。タイトかつ跳ね上がるような勢いを感じさせるバンドサウンドに加え、賑やかなホーンが曲を効果的に盛り上げている。重厚なスラップベースは聴いていると鳥肌が立ってしまう。ドラムは沼澤尚と神保彰のツインドラムとなっている。日本のみならず世界でも活躍する実力派ドラマーの揃い踏みであり、実に豪華。当ブログでサウンド面についてここまで熱く語ることはあまり無いと思うが、それだけ聴きごたえのある演奏がされている。歌詞はメッセージ性の強いもの。「今日もきっと 待ち続けるばかりだなんて 心に咲いた花が枯れてしまうだけ」という歌詞が顕著。「Skylark」「Skywalk」「Skyline」等と韻が踏まれているのが印象的。空を飛び回るヒバリのように自由な生き方をしたいものだ。


「Forever」は豪華なファンクロックナンバー。鉄壁のバンドサウンドに加え、派手なホーンセクションもサウンドを分厚くし、曲を盛り上げている。この音作りに関しては、キャット・グレイ、沼澤尚、カール・ペラッゾから成る13CATSの色が濃い印象がある。Earth,Wind&Fireにも似ていると思う。うねうねしたベースラインや、「ファンキー」というフレーズを体現したような沼澤尚のドラムは圧巻。西村智彦によるキレの良いカッティングも魅力的。歌詞はほぼ全編が英語詞で構成されている。キャット・グレイと藤田千章の共作となっている。歌詞カードには対訳が付けられている。英語詞のためか佐藤竹善のボーカルがさらに格好良く感じられる。歌詞の意味については、対訳を見る限りだとメッセージ性の強いもの。自由になるために僕らは成長しなければならない…というような感じ。ラストの「命を刻め 動き出せ」という日本語の詞に圧倒的な力強さを感じさせる。ここは一番強調したかったところなのだろう。 サウンド面については、キャット・グレイがアルバム制作に関わり始めた「togetherness」から今作までの到達点と言える。


「君の風」は爽やかなポップナンバー。全国宅地建物取引業保証協会のイメージCM、テレビ東京系番組『サッカーTV』のエンディングテーマに起用された。流れるようなメロディーは聴いているととても心地良い。シンプルなバンドサウンドが主体となっているが、ストリングスやピアノがフィーチャーされているのが特徴。それらは力強いバンドサウンドを美しく彩っている。作詞は佐藤竹善が行った。これは当時メンバー内でもかなりの大議論になったらしく、解散という話が出る程荒れてしまったようだ。 作詞を佐藤竹善がすることは本人曰くバンドへの警告だったという。藤田千章の歌詞が形骸化してきているのではないか?という警告。歌詞はラブソングと応援歌が混ざったような感じ。「飛び立て その風は君だけの支えだから まだ知らない悲しみまで 受け止めて」という歌詞が好き。ソロでは佐藤竹善が作詞も行なっているわけだが、SLTで佐藤竹善が作詞もしているというのはとても珍しい。そのせいか、曲自体は王道なのだが、SLTのキャリアを通じても異色な曲というイメージがある。


「Rendezvous」はSLT王道のミディアムバラードナンバー。キーボードやエレピが主体となったアレンジであり、ギターが一切使われていない。西村智彦のギターが無いサウンドというのは少々違和感がある。それでも、都会的でクールなイメージのサウンドとなっている。繊細さと大胆さを併せ持った佐藤竹善の歌声がこの曲では冴え渡っている。男でも惚れてしまうような歌声である。歌詞は恋人同士の夜を想起させる歌詞。「風に抱かれて」ほどでもないが、かなりアダルトな世界観を持った歌詞だと思う。「夕暮れも朝日も 触れあう肩が美しく見せる と 君がつぶやく いっそこのまま連れて行きたい」という歌詞が好き。幻想的ではあるが、どことなく生々しい感じもしてくる。曲全体としては「togetherness」の頃の作風を彷彿とさせる。やはりこの手のバラードには一切の外れがない。安定感に溢れている。


「Spirit Of Love(Sanctified Version)」は先行シングル曲。「かぐら・みつまたスキー場」のCMソング、コクドの企業CM、フジテレビ系番組『猛烈アジア太郎』のエンディングテーマに起用された。武豊、佐野量子夫妻の結婚披露宴の中継番組のために作られたという。SLT最大のヒットシングルであり、一般的な知名度が最も高いと思われる。アルバムバージョンでの収録となっている。アメリカのゴスペルクワイアが多数招かれ、後半のコーラスは厳かかつ美しさに満ちている。クワイアが入る瞬間は圧倒的な高揚感がある。
曲自体はピアノが主体となったバラード。他にはパーカッションやオルガンが使われている程度であり、佐藤竹善やゴスペルクワイアの歌声を限りなく引き立てている印象のサウンドである。英語詞が多用されたサビはメロディーとぴったり合っている。歌詞はタイトル通り「Spirit Of Love」について描かれている。恋人たちが永遠の愛を誓うその瞬間を切り取ったような詞世界となっている。「空が少し近付いてくる 越えるときが来る」という歌詞は多幸感に溢れている。結婚式で使われることが多い曲というのも頷ける。
管理人がSLTの音楽を知るきっかけになったのもこの曲。初めて聴いた時は小学5年生の時で、その頃は全く良いと思えなかったが高校生になって久し振りに聴いてみると凄く良い曲だと感じられた。そこからベストを入手してSLTの音楽を聴き漁っていった。


「Flame(Remix)」は先行シングル曲。この曲もまた王道なバラードナンバー。SLT=バラードというイメージに沿った曲となっている。叙情的で美しいキーボードやピアノの音色はとても心地良い。バックではアコギが渋い存在感を放ち、サウンドやメロディーの美しさを引き立てている。広がりのあるサビのメロディーは思わず身を委ねてしまいたくなる。全てを包み込んでくれるような優しさがあると思う。歌詞は恋人への愛を誓う男性が描かれている。「愛してるから きっと それだけでも 現在(いま)は 君を支えるから」というサビの歌詞の一節は何とも言えない力強さが感じられる。「胸の炎」というフレーズは主人公の男性の心の強さを絶妙に表現したフレーズだと思う。恐らくそれがタイトルと繋がっているのだろう。静かで落ち着いた曲と言ってしまえばそれまでなのだが、心の奥底に火を灯してくれるような強さがある曲だと思う。


「Speed」は先行シングル曲。SLTには珍しい、ロックンロールテイストの強い曲。60年代〜70年代のブリティッシュロックからの影響を強く感じさせる。このような曲に挑戦したことについては、佐藤竹善曰く「ひとつの異端的証明」。楽しげな音色のシンセ(ハープシコード?)で曲が始まるが、サウンドは骨太なバンドサウンドが主体となっている。サビ前はボーカルが加工されている。間奏の西村智彦と浅野祥之によるギターソロはこの曲の聴きどころの一つ。爽やかかつ、全速力で駆け抜けていくような疾走感を持ったメロディーが展開されている。特にサビの高揚感は圧巻。歌詞は「今夜君にあえる」喜びが語られたもの。全編通してとにかく前向きな詞世界である。「きっと 思い出も蹴散らせる程の速さで突き破るよ」「この場所には愛の果ては無い」といった歌詞はそれが顕著に現れている。ベスト盤には収録されていないが、かなりの名曲だと思う。


「The Light Is You」は今作のラストを飾る先行シングル曲。金沢信用金庫のCMソング、TBS系番組『川柳役者』のエンディングテーマに起用された。重厚感のあるロックバラードナンバー。先行シングル曲ながら、今作のラストというポジションを意識して作ったのか?と言いたくなる。イントロの力強さと爽やかさも感じさせるギターサウンドが素晴らしい。しかし、サビまではピアノが主体となってしっとりと進む。そして、サビになるとバンドサウンドが一気に流れ込んで盛り上がる。この構成がたまらない。歌詞はタイトルからも想像できるように、恋人への想いをストレートに語ったもの。「僕の君への想いは胸を焼き尽くしても 燃える」という歌詞は聴いていて恥ずかしくなってしまうほどに直球である。SLTにしては珍しいくらいストレートな詞世界だと思う。そして、 今作はたっぷりと余韻を残して幕が降りる。


そこそこ売れた作品なので中古屋ではよく見かける。しかし、中古屋に埋もれたままというのはあまりにも歯がゆい。
SLTのアルバムの中でもトップクラスでポップな内容のアルバム。とはいってもAOR、ロック、ファンク、フュージョン等様々なジャンルを組み込んだSLTならではの音楽は健在。SLTの歴史を通しても一つの到達点と言える作品だと思う。
最大のヒット曲「Spirit Of Love」が収録されているため、ライトリスナーにも聴きやすい。SLTの音楽に興味を持った方には是非とも聴いていただきたい。
管理人の中では「Humanity」と並んでSLTの大好きなアルバムという位置にある。
余談ではあるが、今作のサウンド面は13CATS(今作にも参加したミュージシャンであるキャット・グレイ、沼澤尚、カール・ペラッゾの3人から成るグループ)の作風とかなり似通っている。今作を聴いて気に入った方は13CATSのアルバムも手に取っていただきたい。きっとハマれるはず。

★★★★★