Mr.Children
1996-06-24

【収録曲】
全曲作詞作曲 桜井和寿
全曲編曲       小林武史&Mr.Children
プロデュース 小林武史

1.Dive インストなので省略
2.シーラカンス ★★★★★
3.手紙 ★★★★☆
4.ありふれた Love Story 〜男女問題はいつも面倒だ〜 ★★★★★
5.Mirror ★★★☆☆
6.Making Songs インストなので省略
7.名もなき詩 ★★★★★+2
8.So Let's Get Truth ★★★☆☆
9.臨時ニュース インストなので省略
10.マシンガンをぶっ放せ ★★★★★
11.ゆりかごのある丘から ★★★☆☆
12.虜 ★★★★☆
13.花 -Mémento-Mori- ★★★★★
14.深海 ★★★★☆

1996年6月24日発売
トイズファクトリー
最高位1位 売上274.5万枚

Mr.Childrenの5thアルバム。先行シングル「名もなき詩」「花 -Mémento-Mori-」を収録。今作発売後に「マシンガンをぶっ放せ」がシングルカットされた。前作「Atomic Heart」から約1年10ヶ月の期間を経てリリースされた。

前作で爆発的なヒットを記録し、波に乗っているかと思われたが桜井の精神は暗くなる一方であった。当時桜井は不倫をしていた。発覚したのはリリース翌年の1997年であるが、「バレる前にぐちゃぐちゃした精神を吐き出してしまおう」という思いがあったという。そのため、暗く重苦しい曲が多く並んでいる。歌詞も闇(病み)を感じさせるものが多い。
「深海」という一つのテーマが元になったいわゆる「コンセプトアルバム」。プログレッシブ・ロックと言ってもいいかもしれない。ひたすらに暗く、シニカルな内容である。そのためかアルバム全体の統一感はかなり強い。

「Tomorrow never knows」「everybody goes -秩序のない現代にドロップキック」「【es】 〜Theme of es〜」「シーソーゲーム 〜勇敢な恋の歌〜」と前作アルバム発表から多数のミリオン達成シングルがあるものの、その全てが「今作のテーマに合わない」という理由で収録を見送られ、次作「BOLERO」にまとめて収録されることとなった。これは当時のMr.Childrenにとってはかなりの決断であったと思う。普通のアーティストではこのようなことはできないだろう。
結局それだけのミリオンシングルを見送ったにもかかわらずダブルミリオンを達成している。当時のMr.Childrenの勢いの凄さを思い知らされる。


「Dive」はタイトル通り海に潜っていく音で構成されたインスト曲。「深海」をテーマにしたこのアルバムは不気味な程静かに幕を開ける。


「シーラカンス」は重苦しい一曲。シーラカンスに問いかけるような歌詞。自らをシーラカンスに例えているようにも思える。「ある人は言う 君は滅びたのだと」「ある人は言う 根拠もなく 生きてると」という歌詞が印象的。シーラカンスは3億年以上姿を変えずに生き続ける「生きた化石」。桜井は当時、変わらないものを求めていたのか?


「手紙」は「シーラカンス」と繋がって始まる曲。優しい雰囲気を持った曲である。前の「シーラカンス」と後の「ありふれた Love Story 〜男女問題はいつも面倒だ〜」とを繋ぐ役割の曲。単体で聴くことは殆ど無い。


「ありふれた Love Story 〜男女問題はいつも面倒だ〜」は若いカップルの恋の始まりから終わりまでを描いた曲。「"愛は消えたりしない 愛に勝るもんはない"なんて流行歌の戦略か? そんじゃ何信じりゃいい?"明日へ向かえ"なんていい気なもんだ」という歌詞が印象的。自らの以前の楽曲をバカにしているようにすら感じられる。このようなシニカルな世界観がたまらない。サブタイトルは当時の桜井の思いがそのまま表現されているようである。


「Mirror」は後にベスト盤に収録された、今作には少ない比較的明るい曲。3分程度の小品。窓際でギターを弾き、夕暮れの空に向かって歌う男が描かれている。歌っていたのは「そりゃ碌でもなくポップなんてものでもなく ましてヒットの兆しもない ただあなたへと想い走らせた 単純明解なLovesong」である。そして、「あなた」のことを待ち続けている。その答えはどうなるのだろうか。


「Making Songs」は曲作りの場面を切り取ったようなインスト。数曲のデモ音源を断片的に繋げたものだという。最後に次の「名もなき詩」の一部分が流れて終わる。


「名もなき詩」は先行シングル曲。フジテレビ系ドラマ『ピュア』の主題歌に起用された。シングルは初動120.8万枚という近年まで歴代1位だった初動売上記録を持っていた。最早語る必要も無いレベルの名曲。「ジャカジャーン!」というギターから始まるシンプルなイントロが印象的。そして、バンドサウンドが曲を引っ張っていく。サビどころか歌詞全体が名フレーズ。「ノータリン」と放送禁止用語が使われているがそれもご愛嬌。カラオケで歌おうとすると後半の早口な部分でやられる。


「So Let's Get Truth」は1分50秒程度の非常に短い曲。インストを除けばMr.Childrenの楽曲全てを含めてもかなり短い曲である。桜井の歌い方は長渕剛そっくり。桜井自身も「作曲中に長渕剛さんが降りてきた」と語っている。歌詞は社会を風刺したものになっている。アコギとハーモニカの弾き語りがメインになったサウンド。


「臨時ニュース」は臨時ニュースの音声とテレビのザッピング音から構成されたインスト。わずか15秒の非常に短いもの。


「マシンガンをぶっ放せ」は今作発売後にシングルカットされた一曲。「臨時ニュース」からはそのまま繋がって始まる。この繋がり方が大好き。歌詞の内容は社会への強烈な批判が主になっている。重苦しい曲が多かった「深海」〜「BOLERO」くらいの時期を代表するような曲。冒頭の歌詞は1995年にフランスが世界中の反対の中で核実験を行ったことが元ネタ。ミスチルはロックバンドだということを再確認させてくれる名曲。


「ゆりかごのある丘から」は9分近くある今作最長の曲。曲調は非常にゆったりとしたものになっている。失恋をテーマにした歌詞ではあるが、戦争を思わせるフレーズもある。この曲の主人公は戦場に行った男だと管理人は解釈している。戦争を終えて帰ってきたものの、恋人はもう他の誰かのものになっていた。あまりにも悲し過ぎる曲である。


「虜」は恋愛をテーマにした重苦しい曲。歌詞のみならずサウンドも非常に重厚でずっしりとしている。状況も非常に重い。彼女と別れそうな状態なのだが、女には既に新たな男がいた。しかし女はどっちつかず。そして主人公の男は「不能になるまでずっと束縛されてたい」と宣言する。男は「虜」になってしまったのである。最後のコーラスが印象的。ゴスペルシンガーによる一発録りだという。


「花 -Mémento-Mori-」は先行シングル曲。サブタイトルはラテン語で「死を想え」という意味がある。桜井が感銘を受けたという藤原新也の著書から取られた。サビの「負けないように 枯れないように 笑って咲く 花になろう」という歌詞が印象的。アルバムの流れはここまで来てやっと救いどころが見えてきた。悲しみを敢えて認め、受け止めることでそのダメージを減らそうとしている。絶望から這い上がろうとする男の姿には心打たれる。


「深海」はアルバムのラストを飾るタイトル曲。「シーラカンス」とは対極をなす存在の曲。元々はインストにする予定だったものの、小林武史の提案によって歌詞が書かれた。「今じゃ死にゆくことにさえ憧れるのさ」と自殺願望を仄めかしたり、「連れてってくれないか 連れ戻してくれないか 僕を 僕も」とシーラカンスに呼びかけたりとダークな世界観が全開。結局深海から抜け出すことはできないのだろうか?海に潜っていくようにも、海から出てくるようにも聴こえる意味深な水の音で終わる。


大ヒット作ということで、中古屋で溢れかえっている一作。しかし、中古屋に埋もれさせるにはあまりにも勿体無い名盤である。Mr.Childrenはロックバンドだということを再認識させてくれるような重厚なバンドサウンド、社会批判を交えた歌詞、ダークな世界観、全体の統一感… どれを取っても素晴らしいものがある。当時の桜井和寿が命を削るようにして作った曲は今もメッセージ性を失っていない。
ファンからこの作品は「踏み絵」と呼ばれている。これに耐えられないファンを離れさせ、耐えられたファンのみを残す… Mr.Childrenのバンド史においても音楽性の面でかなり大きなポイントとなっている。
重苦しい世界観ではあるが、管理人はこのアルバムがMr.Childrenのアルバムの中で最も好き。本当のMr.Childrenファンになるために、このアルバムを聴くことは避けて通れない。是非とも聴いていただきたい。

★★★★★