KAN
2010-10-27

【収録曲】
全曲作詞作曲 KAN
全曲編曲       小林信吾、KAN
プロデュース KAN

1.Sunshine of my heart ★★★★★
2.牛乳のんでギュー ★★★★☆
3.結婚しない二人 ★★★★★
4.West Home Town ★★★★☆
5.東京に来い ★★★★☆
6.悲しみの役割 ★★★★☆
7.ホタル ★★★★★
8.Girlfriend ★★★☆☆
9.すべての悲しみにさよならするために ★★★★★
10.星屑の帰り道 ★★★★★

1994年11月26日発売
2010年10月26日リマスター再発
ポリドール(オリジナル盤)
アップフロントワークス(リマスター盤)
最高位21位 売上8.8万枚

KANの9thアルバム。「Sunshine of my heart」が今作と同時発売された。今作発売後に「すべての悲しみにさよならするために」「東京に来い」がシングルカットされた。今作がポリドールで発売された最後のアルバムとなる。

前作「弱い男の固い意志」から11ヶ月振りのリリース。前作でKANは自らの作品に対する評価が厳しくなっていたというが、それは今作でも続いていたようだ。しかし、コンサートが心の底から楽しく感じられていたことがKAN自身の心の支えになっていたという。そのためか、コンサートを意識して作られた曲もある。

「東雲」という言葉は明け方、茜色に染まる空のこと。しかし、アルバム名の由来は東京の江東区東雲町にあるスタジオでレコーディングをしたからだという。ジャケ写からも何となくわかるが、前作同様に落ち着いた雰囲気を持ったアルバムである。


「Sunshine of my heart」は同時発売のシングル曲。スティービー・ワンダーを意識して作ったという一曲。タイトルはスティービー・ワンダーの「You Are the Sunshine of My Life」から取ったと思われる。ハイテンションでダンサブルな曲調。彼女ができて舞い上がっている男の感情が歌われている。英語がかなり使われた歌詞だが、日本語も英語のように聴こえるところがあるのが面白い。「早稲田に慶応なんと東大まで一気に合格(うか)ったそんな feeling」という言い回しはKANにしかできない。全編通してとても微笑ましい歌詞。


「牛乳のんでギュー」はCDの帯にも紹介されていた曲。「またまた異色の話題作」と話題になる前から言い切るセンスには脱帽。イントロはビリー・ジョエルの楽曲から拝借している。背が低い男の悲しみが歌われたジャズテイストのブルース。「牛乳のんでギュー 君に恋してチュー」という歌い出しからインパクト抜群。「お前おれよりも全然背が高いからって友達に弟みたいだなんて言うことないだろう」のようなKAN自身の実体験なのではと思ってしまうような歌詞が展開されている。 


「結婚しない二人」はタイトル通り、結婚せずに自由に同棲しているカップルが描かれた一曲。二人とも知性があるように感じられる。「人間愛こそすべてと今も昔も誰かが歌う ぼくらにとってそれは 点数に追われた受験生達の現実逃避的理想論としか思えないけど」という歌詞が印象的。結婚に縛られずに幸せに暮らすというスタイルを20年前に歌っていたKANの先見の明には驚きである。


「West Home Town」はKANの故郷の福岡をイメージして作られた一曲。イントロからホーンセクションが使用され、ハネたイメージのポップな曲になっている。「ばい」「めんたいな」「ばってん」「きしゃん」等方言が使われている。地元の友人と酒を飲みながら語り合う様子が歌われている。KANの故郷を大切に思う心が伝わってくるような曲。


「東京に来い」は今作発売後にシングルカットされた曲。2分半程の短い曲である。ビートルズを彷彿とさせるサウンドが印象的。上京した人ならこの曲の良さがよくわかるかもしれない。


「悲しみの役割」は不倫について歌われた一曲。アコースティックでシンプルなサウンドが歌詞のどんよりした雰囲気をさらに高める。「結局は本当の意味で彼女に幸わせは来ない ぼくに出来ることと言えば 時々一緒にため息つくだけ」という歌詞は不倫の本質を突いたようなものになっている。


「ホタル」は夏の蒸し暑さを想起させる一曲。煌びやかで妖しげな魅力を持ったサウンドが良い。歌詞はセクシーなイメージのもの。サビでは「火照る」「ホタル」と韻が踏まれている。ホタルの命と暑い夏の短さを重ねているような切ない世界も持った歌詞が印象的。


「Girlfriend」は退廃的な世界観を持った一曲。今までの楽曲には無かった雰囲気がある。アダルトなイメージを持った曲。これから何かが始まるようなムードがある。「今夜も君に心惑わされてたい」というサビの歌詞が印象的。ホーンセクションが淫靡な世界観を演出する。


「すべての悲しみにさよならするために」は今作発売後にシングルカットされた曲。重厚感溢れるロックサウンドによるバラード。KANお得意の永遠の愛を誓うバラードである。何度も歌い直されたようで、歌詞の一言一言を噛みしめるように歌われているのが印象的。
「優しさの意味 間違がえぬように 君の隙間をうめて行こう 君が笑う時 君が悲しむ時 そのすべてを 受けとめてたい」という歌詞が素晴らしい。


「星屑の帰り道」はアルバムのラストを飾る落ち着いたバラード。アコギとストリングスによるシンプルなサウンド。友達以上恋人未満の男女が主人公。女友達を慰めている男が歌われている。本当に優しい男である。「うつむかないでいこう とりあえず笑おうよ」という歌詞が印象的。中高生時代の帰り道の光景が浮かんでくる。恋人同士になってほしいなあと思えて仕方がない。KANのデビュー20周年記念のベスト「IDEAS」にも収録されているので、KANにとっても思い入れがある好きな曲なのかもしれない。


中古屋でそこそこ見かける一作。ヒット曲や著名な曲は無いのでライトリスナーにはお勧めできない。一回聴いただけでは良さがあまり分からないと思う。何度か聴くと落ち着いた今作の世界観にハマれるだろう。突出した名曲と言えるような曲はあまり無いものの、アルバム全体を通して流れが良い。
ベストの後、オリジナルアルバムを何作か聴いてから聴くことをお勧めする。

★★★★☆