スピッツ
2002-10-16


【収録曲】
全曲作詞作曲 草野正宗
全曲編曲       スピッツ&棚谷祐一
11.編曲          スピッツ&笹路正徳
プロデュース スピッツ 
共同プロデュース 棚谷祐一


1.エトランゼ ★★★☆☆
2.センチメンタル ★★★★★
3.冷たい頬 ★★★★☆

4.運命の人(Album Version) ★★★★★
5.仲良し ★★★★☆
6.楓 ★★★★★
7.スーパーノヴァ ★★★★☆
8.ただ春を待つ ★★★
9.謝々! ★★★★☆

10.ウィリー ★★★★☆
11.スカーレット(Album Mix) ★★★★☆

12.フェイクファー ★★★★★


1998年3月25日発売
2002年10月16日発売(リマスター盤)
2008年12月17日発売(SHM-CD盤)
ポリドール(オリジナル盤)
ユニバーサルミュージック(2002、2008年盤)
最高位1位 売上70.0万枚


スピッツの8thアルバム。先行シングル「スカーレット」「運命の人」「冷たい頬/謝々!」を収録。今作発売後に「楓」が「スピカ」と両A面でシングルカットされた。初回盤はスリーブケース、乳白色のトレイ仕様。前作からは1年5ヶ月振りのアルバムリリースとなった。1997年はスピッツのデビュー以来初めてアルバムのリリースが無かった。


「Crispy!」から「インディゴ地平線」までの間プロデュースを担当していた笹路正徳から離れ、今作はほぼセルフプロデュースの形となったが、サポートとして当時カーネーションでキーボードを担当していた棚谷祐一を起用した。アレンジは棚谷との共同である。棚谷を起用した理由は当時スピッツのメンバーがカーネーションの音楽をよく聴いていたからだという。しかし、レコーディングは苦労したようだ。


今までよりもギターサウンドが前面に出た曲が増えた印象がある。ロックバンドとしての姿が見えてくる一作である。どうやらこの頃から草野マサムネもレコーディングでギターを弾くようになったようだ。初期はよくギターを弾いていたものの、「Crispy!」以降は殆ど弾いていなかった。



「エトランゼ」はアルバムのオープニングを飾る1分半程度の短い曲。正直この曲については語りようがない。いつも聴き流してしまう。タイトルはフランス語で外国からの旅行者を意味する。



「センチメンタル」はギターサウンドが前面に出たロック。当時はギターリフに凝っていたようで、ギターリフが印象的な曲。タイトルからバラードだと思ったらここまで激しいロックというギャップがたまらない。1曲目からの落差が凄い。



「冷たい頬」は先行シングル曲。曲はポップであるが、少々地味な印象がある。裏で結構目立って聴こえるベースの音が好き。歌詞は少し切ないものになっている。「さよなら 僕の可愛いシロツメクサと手帖の隅で眠り続けるストーリー」という歌詞が好き。何故か日曜日の午後に聴きたくなる。



「運命の人(Album Version)」は先行シングル曲。シングルバージョンとは異なり、半音下げられている。どうやら草野本人もキツかったようだが、半音下げても一般の男性に出せるような高さではない。この曲を原キーで歌える一般男性は世にどれくらいいるのだろうか?この曲も歌詞が大好き。歌い出しから凄い。「バスの揺れ方で人生の意味が解かった日曜日」で始まったかと思えば、「愛はコンビニでも買えるけれどもう少し探そうよ」と歌ってしまう。このバージョンも良いのだが、管理人はシングルバージョンの方が好き。高揚感や多幸感はシングルバージョンの方が出ていると思う。



「仲良し」は「運命の人」のC/W曲。タイトルが意味深ではあるが、片想いについて歌われている。解釈によっては同性愛とも取れる。サウンドはアコースティックでシンプルな印象がある。
「いつも仲良しでいいよねって言われて でもどこかブルーになってた あれは恋だった」というフレーズがかなり心に突き刺さる。曲は2分40秒程度で短い。



「楓」は今作発売後にシングルカットされた一曲。比較的一般的な知名度が高いバラードの名曲。「RECYCLE」のラストを飾る曲だったからだろうか?「さよなら 君の声を抱いて歩いていく」というサビの歌詞が良い。この曲も草野は至って普通に歌っているがとても出せるような高さではない。スピッツの曲をカラオケで歌うと挫折するのは草野のボーカルのせいではないだろうか。



「スーパーノヴァ」は重厚感溢れるギターサウンドが前面に出たハードロック。バイクについて歌われている。「稲妻のバイクで東京から地獄まで 膨らみもくぼみも 迷わず駆け抜けた」というフレーズが好き。「東京から地獄まで」のインパクトが恐ろしく強い。タイトルは超新星を意味する。



「ただ春を待つ」は変拍子で構成された曲。「渋滞に巻き込まれてイライラしているカップルの歌」を作ろうと思って作られたという。独特な雰囲気を持った曲。変拍子で構成されているためだろうか?タイトル通り春が近付いてくる時期になると聞きたくなる。



「謝々!」は先行シングル曲。「冷たい頬」と両A面という形でリリースされた。ホーンセクションが前面に出た曲。ゴスペル風の女性コーラスも入っている。一般の方が思うスピッツの曲のイメージ通りと言った印象。歌詞は笹路正徳への感謝が歌われているという解釈もある。スピッツの楽曲の中で初めてですます調が歌詞に使われた曲。



「ウィリー」は初期を彷彿とさせる雰囲気を持った曲。草野のボーカルは低音が中心。間奏の直前には小さめの音ではあるが三輪テツヤの叫び声が入っている。それがかなり印象的。



「スカーレット(Album Mix)」は先行シングル曲。ドラマ『メロディ』の主題歌に起用された。今作収録曲の中では最も先に作られた曲のため、この曲のみ編曲に笹路正徳が参加している。正直シングルバージョンとの違いは分からない。どうやらギターの音に変更があるようだ。ポップではあるが音はあまり多くない。管理人が一番最初に触れたスピッツの楽曲の一つということで思い入れがある。



「フェイクファー」はタイトル曲。イントロのギターは草野が弾いている。ポップなバラードと言った感じ。歌詞の意味はあまり分からないが、何かとの出逢いと別れを歌っているように思える。「フェイクファー」というタイトルが意味深である。つまりは偽物なのだが、自分たちに対しての皮肉なのだろうか?



ヒット作ということで、中古屋でよく見かける一作ではあるが、リマスター盤が出ているのでそちらを聴くことをおすすめする。


スピッツが音作りに迷っていた時期ということもあってか、全体的にモヤモヤしたような印象がある。前作までは王道のポップな曲ばかりであったが、今作ではロックバンドとしての姿を再び見せ始めた。次のオリジナルアルバムではロックサウンドがかなり強調された作品になった。そのためか、過渡期という印象が強い。


管理人はこのアルバムのジャケ写が大好きである。全てのアルバムの中でもかなり上位に入ってくるくらい好きなジャケ写だ。メンバーが面接して田島絵里香というモデルになったようだ。可愛らしいのだが、それでいて儚い。「あっ、この人可愛いな」と思ったその瞬間を切り取ったような姿である。その雰囲気がたまらない。今作を聴いているとジャケ写の中の世界観に入り込んでしまいそうになる。


★★★★★