高野寛
2013-07-24


【収録曲】
全曲作詞作曲編曲 高野寛
プロデュース       Todd Rundgren


1.I・O・N(in japanglish) ★★★★★
2.虹の都へ ★★★★★
3.やがてふる ★★★☆☆

4.Eye to Eye ★★★★★
5.一喜一憂 ★★★☆☆
6.DAN DAN ★★★☆☆

7.幻 ★★★★☆
8.From Poltamba インストなので省略
9.人形峠で見た少年 ★★★★☆
10.友達について ★★★★☆

11.大切な「物」 ★★★★★
12.化石の記憶 ★★★★☆
13.9の時代 ★★★★☆

14.October ★★★★☆


1990年3月7日発売(オリジナル盤)
1998年9月23日再発
2007年12月17日リマスター再発紙ジャケ盤
2013年7月24日SHM-CD再発
東芝EMI(オリジナル盤)
ユニバーサルミュージック(再発盤)
最高位2位 売上11.4万枚


高野寛の3rdアルバム。先行シングル「虹の都へ」を収録。前作「RING」の最高位は61位だったものの、今作は2位を記録。初のトップ10入りを記録した。初回盤はスリーブケース仕様。プロデュースには高野が以前から好きでよく聴いていたというトッド・ラングレンが参加した。2007年再発盤はボーナストラック「虹の都へ (Pre-CD Version) 」を収録。


レコーディングはアメリカで行われた。全曲書きかけのままアメリカに行き、最初の一週間は曲作りをしていたというが、行き詰まった時にトッド・ラングレンが手助けをしてくれたため短期間で仕上がったという。


前作よりも売れ線のポップスが展開されている。前作はマニアックなポップスと言った印象だが、マニアックさはそのままに、売れ線を突いたものとなっている。やはりシングルヒットが出たからだろうか?「虹の都へ」は最高位2位を獲得し、27.7万枚のヒットを記録した。今作によって高野寛の名が広まった。高野の出世作と言える。



「I・O・N(in japanglish) 」はアルバムのオープニング曲。タイトルが何とも不思議ではあるが、日本語と英語が入り混じった歌詞になっているためだと思われる。サビまでは日本語→英単語という構成の歌詞になっている。「I・O・N」のタイトルはその英単語のスペルが「ion」で終わるからである。ギターが主体になったロックサウンドが心地良い。このような遊び心のある曲も高野の楽曲の魅力である。



「虹の都へ」は先行シングル曲。MIZUNOのスキーウェア『ケルビンサーモ』のCMソングに起用され、前述の通りのヒットを記録した。MIZUNOは当時の人気番組『ねるとん紅鯨団』のスポンサーだったため、よく放映されていた。その世代の方なら知名度は高いと思われる。キーボードが前面に出たサウンドがお洒落。
「君と僕はいつでもここで会っているのさ 太陽しか知らない 二人だけの秘密」というサビの歌詞が好き。多幸感溢れる上質なラブソングである。



「やがてふる」は「虹の都へ」のC/W曲。雨が降ることと、「君」が来るのをずっと待っている男が描かれている。タイトルはそこから来ていると思われる。自然が好きな人なのだろうか?
「繰り返す過ちの中 後悔を何度しただろう」というフレーズが印象的。



「Eye to Eye」は高野らしい作り込まれたポップス。目と目で繋がっている。きっとそんな二人には言葉は要らない。言葉には頼らず、彼女と目と目で会話する男が描かれている。とても微笑ましい内容である。



「一喜一憂」は高野特有の言葉遊びのような曲。前作収録の「五十歩百歩」のような感じ。「一喜一憂」のフレーズが本当に使われている。サウンドはテクノ風。YMOの影響を受けた高野ならではの曲である。



「DAN DAN」はこれまた言葉遊びのような曲。タイトル通り「だんだん」のフレーズが多用されている。時の流れを想起させる歌詞が印象的。サウンドはシンプル。



「幻」はベスト盤にも収録された曲。「写真の中の僕は幻」「記憶の中の君は幻」というフレーズが印象的。幻想的な雰囲気を持った曲。段々記憶から消えて幻になっていくのかもしれない。



「From Poltamba」はインスト曲。高野のアルバムはインスト曲が収録されることが多い。歌詞カードに記載されているが「Poltamba」は高野自身が考えた架空の地名だという。



「人形峠で見た少年」は軽快なギターポップが展開された曲。サウンドで言うなら前作に近い。「人形峠」は岡山県にある峠。1950年代~1960年代はウラン鉱石の採掘場や精錬工場があり、その残土は今も高い放射能を出しているとされている。



「友達について」はタイトル通り「友達」という存在について歌われた曲。恋人やライバルという形ではなく、友達でいたいと思える人がいる。そのような人が相手となっている曲。「僕等は少し離れて 歩いてゆくだけだから」というラストの歌詞が印象的。友達を大事にしたいと思える曲である。



「大切な「物」」は別れについて歌われた曲。「物は はかなくて 人は悲しくて そして 今何が要る」というサビの歌詞は色々と考えさせられる。物が溢れている現在だからこそ、本当に大切な物とは何か、考えたくなる。



「化石の記憶」は静かなサウンドが展開されたバラード。「君」と出会ったのは、もしかしたら遥か昔なのかもしれない。そのようなことを考えてしまう男が描かれた歌詞。



「9の時代」は時の流れをイメージさせるような曲。「一円玉と共に 世界の夜が目覚めてく 加速してゆく時に 目眩すら覚えるけれど」というフレーズはかなり驚いた。とても文学的な歌詞だと思う。管理人はタイトルを1990年代のことだと解釈している。



「October」はアルバムのラストを飾る、秋の自然が描かれた曲。秋になると聴きたくなるような曲である。秋にふさわしく静かなサウンドがとても心地良い。



ヒット作ということで、中古屋ではかなり見かける。高野寛ならではの丁寧に作り込まれたポップスを楽しめる。「虹の都へ」を収録しているため、ベストの後のオリジナルアルバムとしてもおすすめできる。高野寛の音楽に興味を持った方も手軽に触れられる一作。

★★★★☆