岡村靖幸
2012-02-15

【収録曲】
全曲作詞作曲編曲 岡村靖幸
プロデュース         岡村靖幸

1.あばれ太鼓 ★★★★☆
2.青年14歳 ★★★★★+2
3.クロロフィル・ラブ ★★★☆☆
4.ターザン ボーイ ★★★★★
5.妻になってよ ★★★★☆
6.パラシュート★ガール ★★★★★
7.どぉしたらいいんだろう ★★★★☆
8.Peach X'mas ★★★★★
9.チャーム ポイント ★★★★★

1995年12月13日発売
2012年2月15日再発(Blu-Spec CD仕様)
EPIC/Sony Records 
最高位8位 売上約9.1万枚

岡村靖幸の5thアルバム。先行シングル「ターザン ボーイ」「パラシュート★ガール」「チャーム ポイント」を収録。今作発売後に「Peach X'mas」がシングルカットされた。オリジナル盤初回盤はブックレットに重ねる形の銀ピカシート付き。再発盤初回盤は紙ジャケ仕様。

前作「家庭教師」から5年のブランクを経てリリースされた。前作と同じく全曲の作詞、作曲、編曲、演奏、プロデュースは岡村自身によるもの。あまり実感が無いが、岡村の最大ヒットアルバムである。

収録曲は9曲で前作と変わらない曲数ではあるが、シングル曲やライブで既に披露されていた曲が多い。他にも、完成していたものの未発表だったという曲もある。
曲作りにかなり行き詰まっていたのではないかと推測してしまう。実際その推測は正解で、どうやら作詞の方でスランプに陥ってしまったらしい。バブルが崩壊してから歌詞のテーマが分からなくなってしまったようだ。スタジオに引きこもって暴飲暴食したのが原因か体型も丸くなっていた。歌声も少し変わっている。

そのような制作過程を経た作品のためか、アルバム全体で聴いてみるととっ散らかった印象がある。ギラギラした毒々しいイメージのジャケ写からもそれがうかがい知れる。歌詞は散文的で支離滅裂なものとはっきりと理解できるものと思い切り分かれている。はっきりと理解できる曲は先行シングル曲に多い。
しかしながらサウンド面は前作「家庭教師」と比べても遜色無い出来である。寧ろ「家庭教師」よりも作り込まれてアクが強くなっている。


「あばれ太鼓」はアルバムのオープニングを飾るインスト曲。この曲が岡村自身初のインスト曲となった。和風テイストなサウンド。笛やボイスサンプリング、ギターのカッティング等が使われている。しかし、聴いていると感じられるのが、作詞に行き詰まった末にインストにしたのではないかということである。とっ散らかった今作の始まりにはおあつらえ向きな曲である。


「青年14歳」は岡村靖幸ファンクの傑作と言える一曲。スガシカオもこの曲を評価していた。絡みつくようなねっとりしたサックスの音が前面に出たサウンドが格好良過ぎる。密室のように暑苦しく籠もったサウンドと岡村の太めのボーカル。そして語感の良さしか感じられない意味不明な歌詞。どれを取っても岡村の楽曲屈指の名曲と言って良いだろう。
「野蛮でノーパンで冗談で暮れる 青年14歳」というサビの歌詞。中高生時代に冴えない青春の日々を過ごし、妄想を膨らませて一人で行為に勤しんだ方なら何となく分かるかもしれない。


「クロロフィル・ラブ」は今作で最も支離滅裂な歌詞が展開された曲。最早タイトルから意味不明。往年のプリンスを髣髴とさせる情報量の多いサウンドが心地良い。全体通して散文的で全く意味が分からない歌詞だが「大きな青春 今ビンビンしたい」というフレーズだけははっきりと分かる。今作の作風を象徴するような曲である。


「ターザン ボーイ」は先行シングル曲。1991年にリリースされているため、4年越しにアルバム収録。山下達郎のようである。「家庭教師」をそのまま引きずったようなサウンドが展開されている。少年時代のことを回想した歌詞が良い。
「誰だって昔は ターザンボーイ 腕白小僧だけど 君のために ライオンと戦える男でいたい」と歌い上げている。これは名フレーズ。管理人はこのフレーズを聴く度に何故か武井壮が浮かんでくる。


「妻になってよ」はシングルカットする予定だったという一曲。結婚を考えた岡村が書いた曲。結局結婚はできていないが… 曲はしっとりとしたバラード。歌詞は少しケチをつけたくなるもの。
「20代の 真ん中じゃ手軽な 恋が出来ない 妻になってよ 別れて解ったんだ」と歌い上げる。それが結婚したい理由なのか?「妻」の女性が可哀想に思える。「大人になって女の様に泣くとは思わなかった」という女々しいフレーズが印象的。岡村靖幸は拗らせてしまったのだろうか。


「パラシュート★ガール」は先行シングル曲。ゲストボーカル(女の子の声の部分)にCHARAが参加している。学生生活を描いた岡村王道のポップな曲。不登校になってしまった女の子を励ますという内容。励ましているものの、女の子の返事は「だけど、困んのよ」「バカな勉強もしない子は、相手にしないのよ」と冷たい。でもめげない。男の子の頑張りが微笑ましい。王道と言える歌詞に加えてとてもポップな曲に仕上がっているため、今作の収録曲の中では好印象。一般受けする曲だと思う。


「どぉしたらいいんだろう」は派手なサウンドをかき鳴らしたファンク。(E)naのサウンドを一部使用している。タイトルは前作収録の「どぉなっちゃってんだよ」を思わせるものになっている。やはり歌詞は支離滅裂で意味不明。「全身で決心して悟っちゃったりするのは ひとりぼっちの夜だぜ」という歌詞が好き。しかし、「善人なんて迷信」と人間不信的な歌詞もある。この頃から前兆はあったのかもしれないが、その後の岡村自身の混乱振りをイメージさせる曲である。


「Peach X'mas」は今作発売後にシングルカットされた曲。タイトル通りクリスマスソングである。NHKのクリスマス特番のために作られた。モテない、寂しいクリスマスを過ごす方を励ます素晴らしいクリスマスソング。「クリスマス」というワードを聞いただけで心が乱れてしまう方でも安心して聴ける内容になっている。歌詞の一部を抜粋して紹介したいところだが、全体通して素晴らしいのでまとめて紹介させていただく。↓こちら

「チャーム ポイント」は先行シングル曲。ポップなメロディーと速いテンポが印象的な曲。歌詞はメッセージ性の強い内容。純粋な心を失ったような女性に物申すと言った感じ。
サビでは「だからチャームポイント全部調査したい」と歌い上げる。挙句の果てに「前人未到の純愛掲げる」と宣言している。ただ、これまた拗らせてしまっているように見受けられる。それは今作の雰囲気の一つなので仕方がない。


中古屋では比較的よく見かけるが、リマスター盤は音がとても良くなっているのでそちらの方を聴くことをおすすめする。

「家庭教師」の次の作品ということで不当な評価を受けている感が否めない。全体を通して聴くと曲を寄せ集めたようなとっ散らかった内容であるが、一曲の単位で聴くと「家庭教師」の収録曲と比べても遜色無い。ポップな曲と異常なまでに作り込まれた濃厚な曲のバランスがかなり良い。岡村靖幸の音楽を徹底的に煮詰めたようなアクの強い曲が並んでいるので、ライトリスナーにはかなり厳しい内容になっている。もう少し聴き込みたいという方にはおすすめ。
「家庭教師」と比肩する名盤だと思う。

★★★★★