MY LITTLE LOVER
1998-03-04


【収録曲】
全曲作詞作曲編曲 小林武史
プロデュース         小林武史
7.作詞 小林武史・AKKO
9.作詞 小林武史・AKKO


1.OVERTURE~Times Circle~ インストなので省略  
2.空の下で ★★★★★
3.My sweet lord ★★★★☆
4.回廊(コリドー)をぬけて ★★★★☆
5.Shuffle ★★★★★
6.Naked ★★★★☆
7.anniversary ★★★☆☆

8.NOW AND THEN ~失われた時を求めて~ ★★★★★
9.愛のために ★★★☆☆
10.YES ~free flower~ ★★★★☆

11.遠い河 ★★★★★


1998年3月4日発売
2008年5月1日再発
トイズファクトリー
avex trax(再発盤)
最高位2位 売上59.1万枚


My Little Loverの2ndアルバム。先行シングル「NOW AND THEN ~失われた時を求めて~」「YES ~free flower~」「Shuffle」「空の下で」を収録。前作「evergreen」から2年3ヶ月振りのアルバムリリースとなった。オリジナル盤は白いスリーブケース入り。「NOW AND THEN ~失われた時を求めて~」は特に表記はされていないが、アウトロが追加されているため、アルバムバージョンと言える。


1996年にはAKKOと結婚した。一時産休に入ったものの、作品のリリースにはそこまで大きな影響は無かった。アルバムをリリースしなかったため、シングルだけが溜まっていき、7作も溜めてしまっていた。今作にはそのうちの4作を収録。あと3作は同年に発売された3rdアルバムに収録された。


前作は約280万枚の大ヒットを記録したものの、今作は急激にダウンし、59.1万枚という売上に。初動で29万枚売れたが、2位になってしまっている。相当な数のファンが離れてしまったようである。しかし、楽曲が前作より劣っているという訳ではない。楽曲の幅で言ったら今作の方が幅広いのではないだろうか。



「OVERTURE~Times Circle~」はアルバムのオープニングを飾るインスト曲。2000年代以降の小林武史の代名詞と言えるストリングスをメインにしたサウンド。しかし、インストなので45秒程度ととても短い。聴き流す程度で良いだろう。時計のチクタク音が使用されている。



「空の下で」は先行シングル曲。日産『ウイングロード』のCMソングに起用された。跳ねるような調子の良いドラムから始まるイントロが心地良い。メロディーは比較的シンプルなものになっている。子供の頃を振り返ったような微笑ましい歌詞が展開されている。「空の下で」二人は出会い、迷ったことも風に運ばれていく。晴れた日に自転車に乗りながら聴きたくなる曲である。



「My sweet lord」は「Shuffle」のC/W曲。ギターのリフによるイントロが渋い。ポップなメロディーではあるが、ポップ過ぎない感じ。クールなイメージの歌詞が印象的。「なんとなく 流れに任せ生きてる」女性が主人公に描かれている。



「回廊(コリドー)をぬけて」は今作では数少ない新曲。サウンドはシンプルなものになっている。ミディアムテンポのしっとりとしたラブソング。「誰にでもなれるなら バーチャルの向こうで 私になりたい」という2番のサビが印象的。



「Shuffle」は先行シングル曲。跳ね上がるようにポップな曲。ホーンセクションが前面に出たサウンドが心地良い。AKKOのギリギリな高音がこの曲の開放感を演出している。AKKOの声でないとこの曲の世界観は表現しきれない。



「Naked」は「DESTINY」のC/W曲としてシングルカットされた曲。AKKOも出演した資生堂『セレンシュア』のCMソングに起用された。AORテイストのサウンドがクール。ベースが強調されている。「あなたとならば Naked」というサビが印象的。少々地味ではあるが何回か聴くとハマれる曲。 



「anniversary」は今作では数少ない新曲。ずんずんと迫ってくるようなドラムの音が印象的。タイトル通り「二人のanniversary」が描かれている。微笑ましい内容になっている。結婚当時の小林、AKKO達をそのまま描いたような曲。



「NOW AND THEN ~失われた時を求めて~」は先行シングル曲。My Little Loverとしてはバラードのシングルはこの曲が初。終わった恋を振り返っての後悔、これからの希望を描いた歌詞。ストリングスが主張しているサウンドに乗せてしっとりと聴かせてくる。シングルバージョンとは異なり、アウトロが追加されている。全編通して壮大なイメージのサウンドではあるが、その部分が最も大仰な感じがする。表記は無いがアルバムバージョンである。



「愛のために」は今作では数少ない新曲。地味なイメージのサウンド。ラブソングではあるのだが、ネガティブな雰囲気の歌詞。「世界が今 終わるならば」という歌詞が顕著。ノストラダムスの大予言で人類滅亡と騒がれていた今作リリース当時の社会が垣間見える。



「YES ~free flower~」は先行シングル曲。映画『スワロウテイル』の劇中歌に起用された。気だるい感じだが疾走感を感じさせるサウンドが特徴的。サビは「Yes」が連呼されているものだが、そのような曲でもシングル1位を獲得している。それ程当時のMy Little Loverは勢いがあったのだろう。



「遠い河」は今作のラストを飾るバラード。曲の前半に鳴っている粗い打ち込みサウンドが印象的。2004年リリースの「Self Collection」にもラストで収録されているのでメンバーとしても自信作なのだろう。曲の後半の転調が聴かせどころ。曲の寄せ集めのようなイメージの今作だが、しっかりと締めてくれる曲である。



ヒット作ということで、中古屋ではよく見かける。王道と言えるポップな曲も、実験的なサウンドが目立つ曲もあり、バラエティー豊か。売上が60万枚程度に終わってしまったのが不思議である。シングル曲の構成だけでもミリオンくらいは達成できると思うのだが… 


前作「evergreen」と比べるとアルバム全体の完成度では見劣りしていると感じてしまうが、一曲単位の完成度で言うなら負けていない。まだ小林武史のアレンジ能力は卓越したものがある。My Little Loverの音楽に興味があるなら是非とも聴いていただきたい。

★★★★☆