山下達郎
1998-08-26

【収録曲】
特記以外全曲作詞作曲編曲 山下達郎
プロデュース                       山下達郎
1.5.13.14.作詞 松本隆
3.作詞 ALAN O'DAY
7.作詞作曲 弾厚作(加山雄三の別名義)
10.作詞 MELISSA MANCHESTER

1.氷のマニキュア ★★★★★
2.ヘロン ★★★★★
3.FRAGILE ★★★☆☆
4.DONUT SONG ★★★★☆
5.月の光 ★★★★☆
6.群青の炎 -ULTRAMARINE FIRE- ★★★☆☆
7.BOOMERANG BABY ★★★☆☆
8.夏のコラージュ ★★★★★
9.LAI-LA -邂逅- ★★★★☆
10.STAND IN THE LIGHT -愛の灯- ★★★★☆
11.セールスマンズ・ロンリネス ★★★★☆
12.SOUTHBOUND#9 ★★★★☆
13.DREAMING GIRL ★★★★★
14.いつか晴れた日に ★★★★☆
15.MAGIC TOUCH ★★★★★

1998年8月26日発売
1998年10月25日発売(2枚組アナログ盤)
MOON/WARNER MUSIC JAPAN
最高位1位 売上78.9万枚

山下達郎の11thアルバム。先行シングル「MAGIC TOUCH」「愛の灯~STAND IN THE LIGHT」「DREAMING GIRL」「ヘロン」「いつか晴れた日に」を収録。「MAGIC TOUCH」はシングルリリースから5年越しのアルバム収録となった。「ヘロン」以外の先行シングル曲は別バージョンでの収録。
初回盤は三方背BOX仕様でジャケ写の人形を模したペーパークラフト付属。ジャケ写の人形がサンタコス仕様のクリスマス限定盤もある。管理人はまだ見たことが無いが、このような感じらしい。

↑クリスマス限定盤のジャケ写

前作「ARTISAN」から7年のブランクを経てリリースされた。この辺りから山下達郎は寡作になり始めた。アルバムも既発曲の詰め合わせ等と不名誉な言われ方をされることになってしまった。山下のオリジナルアルバムの中では最も収録曲数が多く、収録時間が長い。
タイトルは「素敵な」「居心地が良い」と言った意味がある。妻の竹内まりやが友人と話していた時に出てきたフレーズで、印象に残ったからだという。

1995年にベスト盤「TREASURES」をリリース後、翌年にオリジナルアルバムをリリースする計画があったものの、山下が完成度を考慮してリリースを見送った。その没になったオリジナルアルバムのタイトルは「DREAMING BOY」。夢のままだったということだろう。

1990年代に入ってから山下の周辺の人間関係の軋轢、ワーナーの組織改編、自社スタジオが閉鎖されてしまったこと等、様々な問題が絡んでしまい、元の体制に戻すことに時間がかかってしまったことも活動のブランクを生む原因となった。山下本人も後に1995年から1997年のことを「空白の3年」と語っている。


「氷のマニキュア」はアルバムのオープニング曲。今作では数少ない書き下ろし曲。爽快感溢れるファンク。山下のアルバムの一曲目は作品の世界に引き込まれるような素晴らしい曲が多い。(「LOVE SPACE」「いつか」「SPARKLE」「悲しみのJODY」「新・東京ラプソディ」等)
この曲も御多分に洩れず格好良いサウンドを響かせたファンクである。作詞は松本隆が担当した。「氷柱」「凍りつく」「氷点下」「みぞれ」などの字を見ただけで寒そうな言葉が多数使われ、曲の世界を彩っている。
2015年にリリースされた、ギタリスト佐橋佳幸のコンピレーション盤「佐橋佳幸の仕事」では山下本人が特別にリミックスしたバージョンが収録されている。


「ヘロン」は先行シングル曲。長野オリンピックの時期のキリンビール『ラガー』のCMソングに起用された。元々はTBSの『モーニングワイド』のテーマソングとして作られた。タイトルは青鷺を意味する。「朝を象徴する鳥で、鳴きながら飛ぶと雨が降ると言われている」ようで、その話は歌詞にも登場している。この曲も爽快感溢れるサウンドが心地良い一曲。聴いた人の心にそっと寄り添うような優しい曲である。「もうすぐ夜明けが来る」というフレーズが印象的。


「FRAGILE」は全編英語詞による曲。作詞はアラン・オデイが担当した。1998年春のSANYOブランドのCMソングに起用された。しっとりと聴かせてくる一曲。サウンドも静かなイメージ。山下の、リスナーの耳元で囁いているようなボーカルが印象的。


「DONUT SONG」はミスタードーナツのCMソングに起用されたポップな一曲。今はどうかわからないが、店頭で流されていた(流されている?)ようだ。渋谷の公園通りのミスタードーナツの店舗が舞台になっているようだが、その店舗は閉店してしまったという。
「せまるツイスト よろめくハニーディップ いつかはとろけるエンゼルクリーム」と堂々とメニューの名前を歌詞に入れている。疑い過ぎかもしれないけど、何かこのフレーズがエロいんだよなあ… もし本当にそのような意味があったとしても、しっかり隠して幸せなイメージのラブソングにしてくるからやはり山下達郎は凄い。


「月の光」は今作では数少ない書き下ろし曲。松本隆が作詞を担当した。松本らしさ全開の文学的で優しい歌詞が展開されている。ソウルテイストのサウンドが心地良いバラード。ラストにはゴスペル風のコーラスが入っている。耽美的な世界観がたまらない。 


「群青の炎 -ULTRAMARINE FIRE-」は全編ファルセットで歌われている珍しい一曲。キリンラガービールのCMソングとして作られたものの、そのCMは殆ど放映されなかったという。この曲もしっとりと聴かせてくるバラード。亡くなってしまった恋人を想っているような歌詞が印象的。


「BOOMERANG BABY」は加山雄三の曲のカバー。当時加山の還暦を祝したトリビュートアルバムがリリースされた。山下にもその誘いがあったものの、突っぱねたという。そして、自分のアルバムで一人トリビュートをした。原曲は聴いたことが無いので違いについては何とも言えないが、全編英語詞というのに驚かされた。加山の英語の堪能振りには圧倒されるばかりである。海岸でギターを弾きながら歌っている姿が浮かんでくるようだ。


「夏のコラージュ」は今作リリースから最も直近のタイアップ曲。トヨタの『カリーナ』のCMソングに起用された。「夏だ海だタツローだ」時代を髣髴とさせる爽やかなサマーソング。海沿いをドライブしながら聴いてみたい一曲。


「LAI-LA -邂逅-」はギターの弾き語りが前面に出たサウンドが展開された一曲。1994年放映のNHKドラマ『赤ちゃんが来た』の主題歌に起用された。「君がいてくれるのなら さみしさはもういらない」というサビの歌詞が印象的。


「STAND IN THE LIGHT -愛の灯-」は先行シングル曲。アルバムバージョンでの収録。アメリカの歌手メリサ・マンチェスターとデュエットしている。作詞はメリサ・マンチェスターが担当した。壮大なラブソングと言った印象。サビでの開放感溢れる二人の力強い歌声には圧倒される。


「セールスマンズ・ロンリネス」はアルバムの書き下ろし曲。ハンバーガーショップで見かけたセールスマンの哀愁が歌われている。山下曰く舞台はモスバーガーなのだそう。孤独なセールスマンが見ている街はあまりにも輝き過ぎている。その対比が何とも切ない。


「SOUTHBOUND#9」は夏を舞台にしたポップな一曲。1995年放映の日産『スカイライン』のCMソングに起用された。タイトルの「#9」は当時のスカイラインが9代目だったこととかけている。繰り返される「南へ」というフレーズが印象的。


「DREAMING GIRL」は先行シングル曲。アルバムバージョンで収録されている。NHKの朝ドラ『ひまわり』の主題歌に起用された。山下曰く「今作のベストトラック」。作詞は松本隆が担当した。朝ドラ主題歌というだけあって、爽やかな雰囲気溢れる曲。「どんなカメラにも写せない君の 生き生きとしてる眩しさが好きだよ」という歌詞が印象的。


「いつか晴れた日に」は先行シングル曲。アルバムバージョンで収録されている。TBS系ドラマ『先生知らないの?』の主題歌に起用された。作詞は松本隆が担当した。アコースティックサウンドが中心になっていてシンプルなサウンド。歌詞は「あの頃の少年に逢う」というのがテーマになっている。懐かしい雰囲気溢れる曲。


「MAGIC TOUCH」は先行シングル曲。アルバムバージョンでの収録。maxellカセットテープのCMソングに起用された。山下曰く「最初は外すつもりだったけど、スタッフやカルトな人からの受けが良かったからボーナストラック的に入れた」とのこと。
シングル中心の選曲である「TREASURES」に収録されず、「OPUS」にも収録されず、挙げ句の果てに「MIDAS TOUCH」という似たタイトルの曲が発表された…と中々に不憫な曲。「OPUS」に収録してほしかった…正直「ジャングル・スウィング」よりも良い曲だと思う。
曲は打ち込みによるサウンド。歌詞は優しさ溢れるものになっている。
「君はひとりじゃない たとえどんな時でも」というフレーズが顕著。この曲に今紹介したフレーズを言ってあげたいくらいだ。ここまで熱く語れるのはこの曲は管理人の大好きな曲だからである。1990年代以降の曲では一番好き。山下達郎の全キャリアを通じてもかなり好きな部類に入ってくる。槇原敬之がこの曲をカバーしていなければ知らない曲だったんですけどね。


大ヒット作ということで、山下のアルバムでは珍しく中古屋で安価に入手できる作品。
タイアップ曲が多く、ライトリスナーにも聴きやすい。山下達郎の音楽に興味がある方には是非とも聴いていただきたい。アルバム全体で聴くとバラエティー豊かであるが、とっ散らかっている印象が否めない。サウンド面で聴きごたえがある山下のアルバムは今作が最後だと思う。

★★★★☆