大江千里
1990-09-21


【収録曲】
全曲作詞作曲 大江千里
全曲編曲       清水信之
10.編曲        西本明
プロデュース  大江千里


1.APOLLO ★★★★★
2.たわわの果実 ★★★☆☆

3.BAY BOAT STORY ★★★★☆
4.舞子VILLA Beach ★★★★★

5.あなたは知らない ★★★☆☆
6.やっと気がついた ★★★★☆
7.8年土産 ★★★☆☆
8.竹林をぬけて ★★★★☆
9.dear ★★★★★

10.これから ★★★★★
11.星空に歩けば ★★★★★


1990年9月21日発売
EPIC/SONY RECORDS
最高位1位 売上29.1万枚


大江千里の9thアルバム。先行シングル「これから」「たわわの果実」「dear」「APOLLO」を収録。初回盤は三方背BOX仕様でミニフォトブック付属。
初動1位を獲得したアルバム。シングル、アルバム、映像作品を含めて後にも先にも1位獲得は無い。


全曲ニューヨークでレコーディングされた。そのためか、ジャズをイメージさせる曲もある。ジャケ写やケース裏面の写真はニューヨークで撮影されたもの。


今作のテーマは「言葉の響きが何か懐かしくて新しいもの」だという。タイトルは1969年、月面着陸に成功したアポロ11号に由来しているが、そのテーマに合っているように思える。


今作に連動したライブ「APOLLO TOUR」が1990年から1991年にかけて行われた。バブル時代だけに、ド派手な衣装や演出で魅せるライブだったようだ。武道館でもライブが行われ、その様子は映像作品化(VHSで発売、DVDはボックスセットのみ)されている。



「APOLLO」は先行シングル曲にしてタイトル曲。大江本人も出演した、不二家『アメリカンバー』のCMソングに起用された。時の流れの速さを感じさせる歌詞が特徴的。その中で溢れ、消えていった物は数多くある。しかし、時代の流れに負けず「あたりまえの未来を あたりまえに叶えたい」と願う。
「届くはずない未来 いつのまにか追い越して 憧れていた未来 こんなにすぐ追い越して」という歌詞が印象的。過去を振り返ってばかりだと、自分は年をとったと感じてしまう。だから少しでも未来を考えていたいと思う。大江らしい文学的な詞世界が展開された良曲。



「たわわの果実」は先行シングル曲。『さんまのまんま』のテーマソングに起用された。タイトル中の"の"の部分は"な"にしようか迷ったというが、"な"にすると「果実」の方に言葉のウエイトがかかるため、"の"にしたという。言葉の響きを考えた結果のようだ。
ギターが前面に出たサウンド。ポップな曲ではあるが今までの大江の詞世界からは遠く離れた、軽い男をイメージさせる歌詞。何となくあまり好きにはなれない。



「BAY BOAT STORY」は「APOLLO」のC/W曲。『邦ちゃんのやまだかつてないTV』の挿入歌として起用された。そのため、やまかつ世代なら知っている方が多いかもしれない。気だるい雰囲気の曲。モヤモヤした恋人関係を描いた歌詞。サビで繰り返される「チュニチュニ ガール」というフレーズが印象的。



「舞子VILLA Beach」は爽やかな雰囲気溢れるポップな一曲。歌詞はストレートなラブソング。「恋人になるその前に 行ってみたい場所を全部教えて」というフレーズが印象的。ホーンセクションが使われたサウンドが心地良い。
タイトルは神戸市にある「舞子ビラ」に由来する。大江は少年時代に母とそこで食事をしたことがあるという。最近知ったことだが、かなり複雑なエピソードがあったようだ。



「あなたは知らない」は大江王道のバラード。映画のワンシーンのような、美しい情景描写が展開されている。サウンドはシンプル。
「ぼくときみの日々は あなたに始まる 振り返らず今を生き続けること」というフレーズが印象的。



「やっと気がついた」は爽快感溢れるサウンドが展開された一曲。この曲もギターが前面に出ている。「身体をください」「ベッドをください」という素直な欲望を爽やかなサウンドに乗せてさらっと歌い上げている。
「時間なんて悩んでたって 時間なんて笑ってたって 同じように過ぎていくこと」と大江らしい哲学的なフレーズも登場する。このフレーズが好き。



「8年土産」は独特な曲調が印象的なバラード。学生時代の恋人を忘れられず、逢いたいと願う男が描かれている。その恋人はもう結婚しているという。何とも煮え切らない気分になれる曲。



「竹林をぬけて」は大江の楽曲では異色なハウステイストの曲。弦楽器が使われており、独特な曲の世界観を彩っている。歌詞はよく意味がわからない。とりあえず「フラレてしまった」ようだ。曲の中で繰り返される「bamboo bamboo」というフレーズがやたら耳に残る。サウンド含め、不思議な中毒性に溢れた曲。



「dear」は先行シングル曲。スズキの「カルタス」のCMソングに起用された。大江らしさ全開のポップなバラード。雨が降っている街で、別れた恋人のことを思い出している男が描かれている。
2番のサビ前の「男はいつもわがままだよ 変わらないで欲しいのさ 時は戻せないけど」という歌詞が印象的。男の真理を突いたような素晴らしいフレーズである。



「これから」はシングル曲。シングルのリリースは「1234」リリース後の1988年だが、しばらくアルバムに収録されていないままだった。曲のテイストとしては「1234」の世界観と合っていたが、タイミングが悪かった。次のアルバムはコンセプトと合わなかったため見送られ、今作に収録されることとなった。
曲はしっとりと聴かせるバラード。歌い出しから美しい情景描写が披露されている。
歌い出しは「夕暮れのニュータウンをぬけて 列車がホームから各駅で出ていった つゆあけのまえの校庭に まばらな制服がここから小さく見える」というもの。「これから何処へ行こうか」というサビが印象的。



「星空に歩けば」は今作のラストを飾る落ち着いた雰囲気の曲。今作発売後リリースされたシングル「あいたい」のC/W曲になった。疲れた時にふと聴きたくなるような優しい曲。
「想い出を数えたら 夜空の星になる」というフレーズが印象的。夜中に一人きりになって聴くのがおすすめ。



ヒット作ということもあり、中古屋では溢れている。大江千里ならではのポップな曲が展開されている。バラエティ豊かな内容になっており、何度も聴ける。1位を獲得しただけあってかなり聴きやすい作品になっている。
ベストに収録されている曲が多いため、ライトリスナーにも聴きやすいアルバム。



★★★★★