スピッツ
2002-10-16


【収録曲】
全曲作詞作曲 草野正宗
1.作曲 三輪徹也
9.作曲 田村明浩
全曲編曲 笹路正徳&スピッツ
プロデュース 笹路正徳&スピッツ


1.花泥棒 ★★★★☆
2.初恋クレイジー ★★★★★
3.インディゴ地平線 ★★★★☆
4.渚 ★★★★★
5.ハヤテ ★★★☆☆

6.ナナへの気持ち ★★★★☆
7.虹を越えて ★★★☆☆
8.バニーガール ★★★★★
9.ほうき星 ★★★★☆

10.マフラーマン ★★★★☆
11.夕日が笑う、君も笑う ★★★★★
12.チェリー ★★★★★


1996年10月23日発売
2002年10月16日再発(リマスター盤)
2008年12月17日再発(SHM-CD盤)
ポリドール(オリジナル盤)
ユニバーサルミュージック(2002.2008年盤)
最高位1位 売上134.4万枚


スピッツの7thアルバム。先行シングル「チェリー」「渚」を収録。前作から1年1ヶ月振りのリリースとなった。「渚」は特に表記は無いが、イントロが追加されており、アルバムバージョンと言える。初回盤はボックスケース、オレンジトレイ、ピクチャーレーベル仕様である。


曲の内容が現実的な曲が増えた。今まではファンタジーなイメージの曲が多かったが、これはブレイクした影響だという。草野は「裸足で地面に立って、真っ直ぐ地平線を見つめるイメージ」と語っている。


レコーディングに苦労したアルバムだという。忙しかったため歌入れの日に歌詞が完成していなかったり、三輪が急にギターを弾けなくなったりしたようだ。後に回復しているが、ギターを弾けなくなった理由は今でも不明のようだ。リリースが延期されることはなかったが、9月の初めまでアルバム制作をしていた。
メンバー曰く、「一番思い出深いアルバム」。



「花泥棒」は今作のオープニングを飾る1分51秒の短い曲。作曲は三輪が担当した。パンク系の楽曲。草野はこの曲を「俺には絶対に作れない曲」と絶賛している。本当は30秒程度の曲にしたかったようだ。「花泥棒〜」というコーラスが耳に残る。次の「初恋クレイジー」とそのまま繋がっている。



「初恋クレイジー」はシングルと言われても違和感の無いポップな一曲。ドラマ『メロディ』の主題歌の依頼が来た時、メンバーはこの曲をシングルカットして主題歌にしようと提案したが、テレビ局サイドから「どうしても新曲を」と言われて「スカーレット」を作ったというエピソードがある。タイトル通り初恋に舞い上がってしまっている少年の姿が浮かんでくるような微笑ましい歌詞が展開されている。
「言葉にできない気持ち ひたすら伝える力 表の意味を超えてやる それだけで」というフレーズが好き。



「インディゴ地平線」はタイトル曲。この言葉は草野の造語。ずっしりと重みのあるサウンドが展開されている。聴いていると目の前に地平線が広がっていくような感覚になる。今作全体の雰囲気を象徴するような壮大なイメージの曲。



「渚」は先行シングル曲。ポッキー、スバルの「フォレスター」のCMソングに起用された。スピッツ自身初の初動1位を記録したシングルだが、ミリオンは達成ならず。シーケンスで作られたイントロが追加されている。元々草野がシーケンスで遊びながら作った曲らしい。
「渚」というタイトルではあるが、楽しく盛り上がる夏の渚の風景ではなく、秋に入り始めた頃の人気の少ない渚の風景が浮かぶような曲。サウンドは非常に爽やかなものになっている。終始奏でられる大地の鼓動のような崎山のドラムにはただ聴き惚れるのみである。



「ハヤテ」は比較的分かりやすい歌詞のラブソング。ピュアなカップルの姿が想像できる。「でも会いたい気持ちだけが膨らんで割れそうさ 間違ってもいいよ」というサビの歌詞が印象的。



「ナナへの気持ち」はベースが前面に出たサウンドが心地良い一曲。間奏で女性の声が聞こえるが、これは田村の奥様、嘉子さんの声。「ナナ」というのは特にモデルは無いようで、響きの問題でそれに決めたという。ナナは日焼けし、髪を染め、大きなピアスをしている。そんなナナへの気持ちをストレートに歌い上げている。今でいうと黒ギャルだろうか?草野曰く「コギャル賛歌」。



「虹を越えて」は思春期を越えて少し成長したイメージの二人の恋を描いた一曲。それと言って明言するような歌詞は無いが、何となくそのように解釈している。繰り返される「虹を越えて」というフレーズが印象的。



「バニーガール」は「チェリー」のC/W曲。B面止まりなのが惜しい位ポップな曲。アルバムの流れはここまで比較的落ち着いた印象のある曲が多かったが、ここで思い切りアップテンポな曲である。「Only youの合図で回り始める」というサビの歌詞が何とも意味深である。



「ほうき星」はスピッツのキャリアを通しても数少ない田村作曲による曲。ふわふわとしたイメージのサウンド。サビでは「弾丸 桃缶 みんな抱えて 宙を駆け下りる」と韻が踏まれている。割と意味が分からないがとても語感が良い。



「マフラーマン」はイントロが若干怖い一曲。(バンドサウンドが入り始める15秒くらいまでの部分) かなり激しめのロックサウンド。格好良い。タイトルは草野曰く「正義も悪も超越したヒーロー」らしい。英単語がかなり多く使われている珍しい曲。



「夕日が笑う、君も笑う」は元々アルバムのラストにするつもりだったという一曲。跳ねた感じのポップな曲。その点では前作「ハチミツ」の雰囲気がある。歌詞は幸せ感溢れるラブソング。実際にこの曲がラストでも良かったかもしれない。



「チェリー」は先行シングル曲。ファンではない層からの知名度も抜群。カラオケでも大人気のようだ。スピッツの曲の中では比較的歌いやすいからだろうか?最早語る必要も無いレベルの曲。
「愛してるの響きだけで 強くなれる気がしたよ」という気の抜けたサビの歌詞が好き。あくまで強くなれる気がしただけで強くなってはいないのである。
何となくライトリスナーの方がこの曲が好きと言う確率が高い気がする。ラストに収録されているのは他に置く所が無かったのだろうか?タイトルはアレを経験していない男がもれなく付けられる称号が由来である。



大ヒット作ということで中古屋でもよく見かけるが、リマスター盤が出回っているのでそちらで聴くことをおすすめする。


前作のような勢いや飛び抜けたポップさは無く、どっしりとした迫力や渋さを感じさせるアルバム。一度聴いただけでは良さは完全に分からないかもしれない。「渚」「チェリー」と著名なシングルヒット曲が収録されているため、シングルコレクションからもう少し聴いてみたい方にはおすすめできる。

★★★★★