宇多田ヒカル
2008-03-19


【収録曲】
全曲作詞作曲編曲 宇多田ヒカル
4.編曲 宇多田ヒカル&富田謙・Alexis Smith
4.ストリングス編曲 山本拓夫 
9.ストリングス編曲 富田謙
11.編曲 富田謙&宇多田ヒカル
プロデュース 宇多田ヒカル 三宅彰 宇多田照實

1.Fight The Blues ★★★★☆

2.HEART STATION ★★★★★
3.Beautiful World ★★★★★
4.Flavor Of Life -Ballad Version- ★★★★★
5.Stay Gold ★★★★☆

6.Kiss&Cry ★★★★☆
7.Gentle Beast Interlude インストなので省略
8.Celebrate ★★★★☆
9.Prisoner Of Love ★★★★★
10.テイク 5 ★★★★☆
11.ぼくはくま ★★★★☆
12.虹色バス ★★★★★

13.Flavor Of Life ★★★★★


2008年3月19日発売
2008年3月26日配信開始
EMIミュージック・ジャパン
最高位1位 売上101.1万枚


宇多田ヒカルの5thアルバム。先行シングル「ぼくはくま」「Flavor Of Life」「Beautiful World/Kiss&Cry」を収録。今作発売後に「Prisoner Of Love」がシングルカットされた。 配信限定で「Beautiful World -PLANiTb Acoustica Mix-」がリリースされた。
前作「ULTRA BLUE」から1年9ヶ月振りのリリースとなった。売上は前作で達成できなかったミリオンを達成。


前作でも言えることだが先行シングル曲が多い。今作は2~6曲目が全てシングル曲で固められている。これはかなりぶっ飛んだことをしていると思ってしまうが、曲順については宇多田が2週間考え抜いた末の決断だったという。


今作はCD音源と配信音源では別のマスタリングをしている。「それぞれの視聴環境において、できるだけオリジナル音源に近い音質を提供したい」という意向によるもの。
CD音源ではTed Jensenを、配信音源ではTom Coyneを起用している。CD音源でしか聴いたことが無いが、管理人の耳でも分かる程音質が良い。
Ted Jensenは日本人アーティストの作品も数多く手がける世界的なエンジニア。桑田佳祐の「MUSICMAN」のマスタリング、「I LOVE YOU -now & forever-」でのリマスターや、Mr.Childrenのベスト盤「micro」「macro」でのリマスター等、数多くの作品を手がけている。



「Fight The Blues」は今作のオープニング曲。TBS系の報道番組『報道特集NEXT』のテーマソングに起用された。タイトルには「「ULTRA BLUE」を越える」という意図もあるという。アルバムのオープニングにふさわしい、明るく力強いメッセージが込められたポップな曲。宇多田は「憂鬱と戦え」というメッセージを表現したという。
「くよくよしてちゃ敵が喜ぶ 男も女もタフじゃなきゃね」という歌詞が印象的。



「HEART STATION」はタイトル曲にして先行シングル曲。ここからはしばらくシングル曲が続くことになる。レコード会社直営♪のCMソングに起用された。深夜の高速道路で、仕事や遊びの帰りに、ふとカーラジオを付けた時に流れてくる曲をイメージして作ったという。タイトルは「心の電波を発信する場所」という意味。聴いている人にそっと寄り添ってくれるような優しい雰囲気がある。
「離れていてもあなたはここにいる 私のハートの真ん中」というフレーズがこの曲の世界観を象徴している。



「Beautiful World」は先行シングル曲。『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』の主題歌に起用された。制作の時にはかなりプレッシャーがあったようだ。静かな中に疾走感が溢れている曲。曲のテーマは「願い」。つかみどころの無いふわっとした曲を意識したという。



「Flavor Of Life -Ballad Version-」は先行シングル「Flavor Of Life」のC/W曲。TBS系ドラマ『花より男子2(リターンズ)』のイメージソング、挿入歌に起用された。配信数の総計700万ダウンロードを突破したという大記録持ち。デジタルダウンロード数世界第2位という凄い記録がある。
曲はしっとりと聴かせる王道のバラード。管理人もリアルタイムで聴いていた(小1~小2くらいの時)曲だが、当時からかなり好きな曲だった。ドラマのちょうど良い場面でいつも流れていたので印象深い。



「Stay Gold」は先行シングル曲。「HEART STATION」とは両A面。シャンプーの『アジエンス』のCMソングに起用された。女性語が使われており、宇多田自身「これほど女性らしい曲は初めて」とコメントしている。ピアノが前面に出たサウンド。音の数がとても少なく、使われた楽器はピアノとドラムマシンだけ。ベースを使わない曲は初めてだという。
曲名は知らなかったが、「だーいすきだから ずーっと」というフレーズ(歌い方)は何となく覚えていたので、CMに合った曲だったのだろう。



「Kiss&Cry」は先行シングル曲。「Beautiful World」とは両A面だった。日清食品『カップヌードル』のCMソングに起用された。歌詞の中にも「今日は日清CUP NOODLE」とさらっと出てくる。そこまで違和感無く入れてくるのでやはり宇多田ヒカルは凄い。「とにかくエネルギッシュで生命力のある曲」を意識して作ったという。
タイトルの「Kiss&Cry」はフィギュアスケートで演技を終えた選手とそのコーチが採点結果を待つ場所のこと。喜びと悲しみが混じり合った場所なのでそのように呼ばれるようだ。



「Gentle Beast Interlude」はインスト曲。元々は「Celebrate」のイントロとしてあったというが、周囲のアドバイスによってインストとして独立させたようだ。歌入れは最後の最後に行い、アルバムでの最後の作業になったという。タイトルは「Celebrate」の歌詞のワンフレーズ「優しい瞳を持つ化け物」から取った。



「Celebrate」は今作でもかなりノリノリな雰囲気の一曲。前の「Gentle Beast Interlude」からはそのまま繋がっている。5日で作曲から歌入れまで全ての作業を終わらせたという。
「秘密のウェディング」をする二人が描かれている。終始テンションの高い曲だが、仮タイトルは「やけくそ」だという。そう聴くと少し無理をしたのではないかと邪推したくなる。



「Prisoner Of Love」は今作発売後にシングルカットされた曲。フジテレビ系ドラマ『ラスト・フレンズ』の主題歌に起用された。友情とも恋愛とも取れるような歌詞が展開されている。この曲が主題歌に起用されたドラマは管理人もリアルタイムで見ていたが、中々に重い内容だった。ドラマの世界観とよく合った曲だったのは事実。



「テイク 5」は宇多田曰く「一番へんちくりんな曲」。バックトラック自体は前作「ULTRA BLUE」の時点で作られており、インストでも良い程気に入っていたという。歌を乗せるのが難しく、文学的な詩のようなものにしたようだ。タイトルが何とも意味不明だが、ただ単に今作が宇多田の5枚目のアルバム、宇多田における「テイク5」という意味。
幻想的な雰囲気溢れる曲。終わり方が何とも衝撃的。意図的にプツっと演奏が途切れてそのまま次の「ぼくはくま」に移る。宇多田曰く「このぐらいしないと繋がらない」という理由だが、初めて聴いた時は怖くて仕方が無かった。管理人はCDが壊れたかと思った。流石に慣れたが、初めて聴いた時のインパクトが強過ぎて未だに「怖い曲」と言えばこの曲が浮かぶ。次の曲が「ぼくはくま」で本当に良かった。そのお陰で恐怖が中和された。



「ぼくはくま」は先行シングル曲。宇多田ヒカルが童謡に挑戦するというかなりの衝撃。当時のリスナーは「動揺」してしまっただろう。『みんなのうた』で放送された曲。何故この曲が今作に収録されたか。この曲をきっかけに宇多田の心境が「ULTRA BLUE」から「HEART STATION」に変化したからだという。この曲は宇多田にとってかなり大きな存在の曲のようだ。歌詞は子供にも分かりやすい言葉が使われ、とても可愛らしい内容になっている。



「虹色バス」は懐かしい雰囲気がある曲。宇多田自身はレトロ感を出したかったようだ。「ビートルズっぽい」とも語っており、子供の頃の思い出も振り返って作ったという。「虹色バス」という架空のバスに乗って、どこかへ行こうとする女性が描かれている。とてもポップで可愛らしい曲になっている。ラストの「誰もいない世界へ 私を連れて行って」というフレーズが印象的。



「Flavor Of Life」はボーナストラック。こちらはオリジナルバージョン。こちらの方がテンポが速い。歌詞に違いは無い。こちらのバージョンも良いが、やはり思い入れで言うとバラードバージョンの方が強い。



大ヒット作なので、中古屋でもそこそこ見かける。全編通して統一感があり、何度も聴けるような感覚がある。一人の女性として書いたような歌詞が多い。等身大の宇多田ヒカルが表現されたアルバムと言える。聴いた方に寄り添うような優しさも感じさせるアルバム。これは今までの宇多田のアルバムには見られなかった世界観。聴いた方それぞれの「HEART STATION」を見つけていただきたい。
現時点では今作が宇多田ヒカルの最高傑作だと思う。

★★★★★