サザンオールスターズ
2008-12-03

【収録曲】
全曲作詞作曲 桑田佳祐
1.10.12.13.英語補作詞    Tommy Snyder
全曲編曲       サザンオールスターズ
14.編曲 宮川泰
プロデュース  サザンオールスターズ

1.胸いっぱいの愛と情熱をあなたへ ★★★★★
2.ドラマで始まる恋なのに ★★★★☆
3.愛の言霊~Spiritual Message~ ★★★★★
4.Young Love(青春の終わりに) ★★★★★
5.Moon Light Lover ★★★★☆
6.汚れた台所(キッチン) ★★★★★
7.あなただけを~Summer Heartbreak~ ★★★★☆
8.恋の歌を唄いましょう ★★★★★
9.マリワナ伯爵 ★★★★☆
10.愛無き愛児~Before The Storm~ ★★★☆☆
11.恋のジャック・ナイフ ★★★★★
12.Soul Bomber(21世紀の精神爆破魔) ★★★★★
13.太陽は罪な奴 ★★★★★
14.心を込めて花束を ★★★★★ 

1996年7月20日発売
2008年12月3日再発(リマスター)
ビクター・タイシタレーベル
最高位1位(オリジナル盤) 
         121位(2008年盤)
売上 249.4万枚(オリジナル盤) 
       0.2万枚(2008年盤)

サザンオールスターズの12thアルバム。先行シングル「あなただけを~Summer Heartbreak」「愛の言霊~Spiritual Message」「太陽は罪な奴」を収録。前作「世に万葉の花が咲くなり」からは約3年10ヶ月振りのリリースとなった。2008年リマスター盤の初回盤はデジパック仕様。

これまでサザンは小林武史と共に楽曲制作をしてきたが、1995年頃から小林のもとを離れ、セルフプロデュースに戻った。今作もセルフプロデュースによるもの。そのため、今作のコンセプトは「原点回帰」である。6人組のロックバンドとしてのサウンドが展開されている。ジャンルもポップな曲からアクの強いロックな曲まで様々。

ミリオン達成シングルを2曲収録したうえ、CDバブル時代だったため、オリジナルアルバムの中では唯一の200万枚越えの売上を記録。当然これはサザンのオリジナルアルバム最多の売上。


「胸いっぱいの愛と情熱をあなたへ」は今作のオープニングを飾るキャッチーなロック。桑田本人も出演したキャデラックのCMソングに起用された。そのためか、歌詞の中にも「Cadillac」のフレーズが出てくる。車の方の意味ではなく、「高級なもの」といった意味合いで使われている。高級車のCMソングにふさわしい疾走感と渋さがある。サウンドはブリティッシュロック風。爽快感溢れるサウンドである。
「胸いっぱいの愛と情熱をあなたへ」の部分のファルセットが印象的。


「ドラマで始まる恋なのに」は王道と言えるサザンのバラードながらも扱いが不遇な曲。曲の内容を考えると「バラッド3」にも収録されそうだが、収録されず。今の所ライブでも演奏されず。桑田本人が嫌っているのではないかと勘繰ってしまう程である。一定のファン人気がある曲なのだが… 歌詞は英語詞が使われていない、全編日本語によるもの。割と珍しい。とてもポップで、シングルにしても良いくらいの曲。「あの日見た空がまぼろしにかわる」というフレーズが好き。


「愛の言霊~Spiritual Message~」は先行シングル曲。日本テレビ系ドラマ『透明人間』の主題歌に起用された。様々な音楽の要素を組み合わせたような無国籍サウンドが展開されている。歌詞は日本語、英語だけでなくインドネシア語のラップすら登場してしまう。歌詞の意味は気にしていないかのように、言葉遊びが多く用いられている。空耳はウエルカムと言っても良いくらい。桑田お得意の造語もキレッキレ。魂を意味する「T.C.」、鎌倉を英語風に言い換えた「COME-A COOL RAP」等… そして、桑田の歌い方もかなり凄い。「とは」を「とぅわっ」、「挿話」を「そわっ」と言った感じである。日本語の響きを追求した果てと言っても過言ではない。聴いている者は「音の洪水」ならぬ「言葉の洪水」に飲まれるだけである。


「Young Love(青春の終わりに)」はタイトル曲。ビートルズ風のサウンドが展開された心地良いロックンロール。桑田のビートルズへの愛が伝わってくるようだ。爽やかな雰囲気漂う曲。「あの頃」を思い出した歌詞が何とも言えない切なさに満ちている。曲は爽やかで楽しげなので尚更切なさが引き立てられる。何故過去は美しいのだろうか?「今」を大切にしているつもりでも、つい「あの頃」を思い出さずにはいられない。


「Moon Light Lover」はセクシーな雰囲気溢れるブラックミュージックテイストの一曲。「NIFTY-Serve」のCMソングに起用された。蒸し暑い夏の夜に聴きたくなる曲。月明かりの下で愛し合う恋人たちの姿が浮かんでくる。何と甘いラブソングだろうか。ホーンセクションが曲のムードをさらに高める。


「汚れた台所(キッチン)」はここまでのアルバムの流れをぶち壊すようなハードロック。社会(世間)を強烈に風刺した歌詞。デリヘル、サラリーマンの現実、学校、政治、深夜に遊ぶ女子高生、メディア…様々なものを皮肉った歌詞だが、不思議と爽快感がある。サビでは「絵に描いたシンボル達やロックンロールは死んだ」と宣言し、「平和という神経ガスにCheers!!」と言ってのける。「Cheers」は声援や万歳を意味するワードだが、何故使ったのだろうか?桑田の詞世界はやはり難しい。サウンドはギターが前面に出たハードロック。サウンドだけでなく、吐き捨てるような桑田のボーカルも非常に渋い。大森が脱退した現在、このような曲が再び作られることは無いのかもしれないが、たまにはこの曲のようなロックなサザンの姿も見たくなる。


「あなただけを~Summer Heartbreak~」は先行シングル曲。ミリオン達成曲。フジテレビの月9ドラマ『いつかまた逢える』の主題歌に起用された。王道と言える爽やかなポップソング。タイトルからも察しがつくが、「真夏の失恋」が歌われている。桑田も気に入っている曲のようだ。良い曲なのは事実だが、何となく王道過ぎる感じがする。そのためリピート率は低め。


「恋の歌を唄いましょう」は原由子ボーカル曲。とても可愛らしい雰囲気のある曲。ピアノ中心のサウンドも心地良い。アルバムの中でも良いアクセントになっている。女心がよく表現された歌詞だが、作詞が桑田だというのに驚かされる。夫婦でお互いをしっかり理解しているからできることなのだろう。


「マリワナ伯爵」はアクの強いファンクな一曲。歌詞はマリファナ中毒になったミュージシャンを揶揄したもの。「ローリング・ストーンズ」が登場しているが、彼らのことも皮肉っているのだろうか。歌詞よりもサウンドに引き込まれる。バックで流れるベースの音が好き。


「愛無き愛児~Before The Storm~」は母からの愛を貰えない子供について歌われたシリアスな曲。子供はもう亡くなってしまったのだろうか?それを想起させるフレーズも登場する。「"ママ、僕を迎えに来て"」という歌詞が印象的。この部分の桑田のボーカルはその子供が言っているように感じさせる、真に迫ったものになっている。サウンドはどことなくプログレをイメージさせる。


「恋のジャック・ナイフ」は「愛の言霊~Spiritual Message~」のC/W曲。「キリン・ラガー」のCMソングに起用された。打ち込みを多用したサウンドがかなり格好良い。「海のYeah!!」にも収録されているため、C/W曲ながらも比較的知名度は高いと思われる。爽快感溢れるメロディーと、それに詰め込まれた言葉が心地良い。「夢を見るのって良いじゃない」というフレーズが好き。


「Soul Bomber(21世紀の精神爆破魔)」はアクの強いロックな一曲。サブタイトルはキング・クリムゾンの名曲「21世紀の精神異常者」を捩ったもの。日本語と英語をごった煮にした歌詞。曲の始まりから雑踏の中にいるような車のクラクションのSEが使われており、実に騒がしい雰囲気ある曲である。サウンドはギターやベースが前面に出た、歪んだイメージのサウンド。ポップな曲だけでなく、このような曲もやはり良い。


「太陽は罪な奴」は先行シングル曲。曲は王道と言える非常にポップなものだが、先行シングルだったせいかミリオンは達成ならず。「キリン・ラガー」のCMソングに起用された。イントロに波の音が追加されており、アルバムバージョンである。幸せ感溢れる歌詞であり、聴いていると真夏の海岸に恋人といるような気分になれる。恋する二人を、太陽は照らし続けてくれるのだろう。


「心を込めて花束を」は今作のラストを飾る曲。オーケストラとピアノの伴奏だけのサウンドによる、荘厳な雰囲気溢れるバラード。編曲にはデビュー当時親交があった宮川泰が参加した。歌詞の内容から、結婚式で使われることも多いという。新婦への愛が表現された歌詞が素晴らしい。歌い出しの「夢追う無邪気な子供の頃に 叱られた理由が今解るの」という歌詞が好き。管理人が選ぶ、結婚式で使いたい曲ランキングでかなり上位に入ってくる(笑) 


大ヒット作なので中古屋でもよく見かけるが、リマスター盤が出回っているのでそちらで聴くことをおすすめする。

ポップな曲、アクの強いロックな曲までバラエティ豊かなアルバム。全編通してメンバーによる演奏が主になった曲が多く、「原点回帰」のコンセプトに合ったものになっている。
シングル曲が素晴らしいのはもちろん、アルバム曲もそれぞれ個性が強く、中にはシングルクラスの名曲も。管理人はサザンについてはまだまだニワカの域を脱していないが、このアルバムは初めて聴いただけで名盤だと感じた。それは何度も繰り返し聴いてもなお変わっていない。ベストの後に聴くオリジナルアルバムならこれが一番良いと思う。

★★★★★