【収録曲】
全曲作詞作曲編曲 高野寛
プロデュース        Todd Rundgren 

1.Proteus March ★★★★★
2.目覚めの三月(マーチ) ★★★★★
3.Smile ★★★★☆
4.てにおえ ★★★☆☆
5.テレパシーが流行らない理由 ★★★★☆
6.紳士同盟 ★★★☆☆
7.Another Proteus ★★★★☆
8.エーテルダンス ★★★★☆
9.Our Voices ★★★★★
10.Energy Clock ★★★★☆
11.ベステンダンク ★★★★★
12.Prototype ★★★☆☆
13.こだま ★★★★☆
14.船に乗った魚 ★★★★☆

1991年6月14日発売
1998年9月28日再発
2007年12月19日再発(リマスター盤)
東芝EMI
ユニバーサルミュージック(再発盤)
最高位8位 売上5.1万枚

高野寛の4thアルバム。先行シングル「ベステンダンク」「目覚めの三月(マーチ)」を収録。前作「CUE」から1年3ヶ月振りのリリースとなった。プロデュースは前作と同じくトッド・ラングレンが参加した。初回盤は三方背BOX仕様でミニフォトブック付属。
2007年リマスター盤はボーナストラック「ドゥリフター」「ベステンダンク(Four Rhythm Version)」を収録。

今作に収録されている14曲中、5曲がインスト曲。ギタリスト・高野寛の魅力が味わえる作品である。曲も全編通して前作よりも癖の強い感じになっており、売れ線ポップスは先行シングルの2曲くらい。当ブログは基本的にインスト曲の評価は飛ばすが、今作におけるインスト曲の存在は大きいので評価をさせていただく。


「Proteus March」は今作のオープニングを飾るインスト曲。高野によるギターの演奏がメインになっている。何かが始まる予感をイメージさせる、素晴らしいインスト曲。


「目覚めの三月(マーチ)」は先行シングル曲。「三月」と曲名にあるが、シングルがリリースされたのは5月。3月にリリースされていたらもう少し売れていたのだろうか?高野ならではの王道なポップスと言った感じの一曲。「マーチ」というだけあって、どんどん前に進めるような力強い曲。「変革」について歌われたポジティブな歌詞。「変革 それはとても気まぐれ 突然やってきて また消える」というフレーズが印象的。


「Smile」はタイトル通り笑顔について歌われた一曲。サウンドはロックテイスト。「笑うあなたの中で 泣いてるあなたの笑顔 騒ぐあなたの中で 悲しむあなたの笑顔」というサビの歌詞が何とも文学的。笑顔の裏には何か別の感情があるのかもしれない。


「てにおえ」は高野らしいおふざけ曲。タイトルは歌詞にも登場する「てにおえない」(手に負えない)の略。猫に振り回される暮らしをしている男が「てにおえないな てにおえないよ」と言う内容の曲。高野は猫好きなのだろうか?ほのぼのとした雰囲気に溢れた曲である。


「テレパシーが流行らない理由」はギターのカッティングによるイントロが爽やかな一曲。これまた実験性の強いおふざけっぽい曲。サウンドは格好良い。高野によるセリフが挿入されている。というかタイトルが凄い。「だましあったり争ってみたり 言葉はとても難しいから」というフレーズは身につまされる。いつかテレパシーが流行る時代が来る…かもしれない。


「紳士同盟」も実験性の強いポップス。「紳士同盟」に属する「皆さん」に語りかけるような内容の歌詞。高野のボーカルもいつもより優しさが増して感じられる。高野曰く「湾岸戦争を取り上げた」という。「東も西も関係ないでしょう」というフレーズもそういう意味なのだろう。不思議な雰囲気の曲だが、自然と引き込まれる。ポップス職人の面目躍如である。


「Another Proteus」はインスト曲。ベスト盤にも収録されたことがある。民族音楽のような雰囲気のインスト。1曲目の「Proteus March」と同じようなメロディー。アルバムの中で良いアクセントになっている。


「エーテルダンス」は「ベステンダンク」のC/W曲。高野らしい一筋縄ではいかない複雑で難解なポップス。繰り返し歌われる「廻り続ける」というフレーズが耳に残る。壮大なイメージのある曲。


「Our Voices」はトッド・ラングレンを意識して作ったという曲。ポップながらも神秘的な雰囲気がある。ストーリー性のある歌詞が展開されている。どの視点で語られているのだろうか?「何も求めず 自由に泳ぐ 僕らの声を覚えてる」という歌詞。そのまま海に溶けていくようである。


「Energy Clock」はインスト曲。時計が動いているようにせわしない感じがする曲。それは心臓の鼓動、人間の生命のようでもある。


「ベステンダンク」は先行シングル曲。「虹の都へ」と並ぶ高野寛の2大ヒット曲。MIZUNOのスキーウェア『ケルビンサーモ2』のCMソングに起用された。元々はギターポップ風のアレンジだったようだが、トッド・ラングレンによるキーボードのリフが元でキーボード主体のアレンジになったという。タイトルの「ベステンダンク」とは、ドイツ語で最大級の感謝を表す言葉のこと。
「この声は小さすぎて 君の元までは届かない 例え それを知っていても 叫ばずにいられない」という歌い出しのインパクトの強さ。何と力強い言葉だろう。届かないと分かっていても伝えようと努力する。これが人間のコミュニケーション、愛の形なのだろうか?


「Prototype」はインスト曲。謎めいた雰囲気がある曲。何とも意味深なタイトル。「試作品」という意味である。


「こだま」は神秘的な雰囲気がある一曲。胸の中に響く「こだま」について歌われている。でもその「こだま」は今はきこえない。夢を見ている時のようなふわふわした感じがする。全ての人に「こだま」があるのだろうか?


「船に乗った魚」は今作のラストを飾るインスト曲。インストで始まった今作はインストで締められる。映画のエンディングテーマのような静謐さがある。物語はまた続いていくのだろう。


中古屋ではそこそこ見かけるアルバム。全編通して作り込まれた、複雑なポップスを堪能できる。アルバムとしての統一感がある。「目覚め」というテーマの元に、進んでいくストーリー。コンセプトアルバムとも言える。「ベステンダンク」が収録されているため、ライトリスナーにも聴きやすいかと言われるとそこまででもない。ベスト盤を聴いた後、もう少し深く聴きたいという段階で聴くことをおすすめする。

★★★★☆