Flipper's Guitar
2006-08-25

【収録曲】
全曲作詞 小沢健二
12.作曲 不明(民謡)
1.4.7.10.作曲 小山田圭吾
2.3.作曲  小沢健二
5.6.8.9.11.作曲 小山田圭吾/小沢健二
プロデュース 吉田仁

1.Hello -ハロー/いとこの来る日曜日- ★★★★★
2.Boys Fire the Tricot -ボーイズ、トリコに火を放つ- ★★★★★
3.Joyride -すてきなジョイライド- ★★★★☆
4.Coffee-milk Crazy -コーヒーミルク・クレイジー- ★★★★☆
5.My Red Shoes Story -僕のレッド・シューズ物語- ★★★★☆
6.Exotic Lollipop (and other red roses)-奇妙なロリポップ- ★★★★★
7.Happy Like a Honeybee -ピクニックには早すぎる- ★★★★★
8.Samba Parade -サンバ・パレードの華麗な噂が- ★★★★★
9.Sending to your Heart -恋してるとか好きだとか- ★★★★★
10.Goodbye,our Pastels Badges -さようならパステルズ・バッヂ- ★★★★★
11.The Chime will Ring -やがて鐘が鳴る- ★★★★★
12.Red Flag on the Gondola -レッド・フラッグ- ★★★★☆

1989年8月25日発売
1993年9月1日再発
2006年8月25日限定再発
2010年1月27日再発
ポリスター
ランキング圏外 売上不明

フリッパーズ・ギターの1stアルバム。デビュー作のため、先行シングルは無し。プロデュースは渋谷系音楽の元祖と称され、国内外で高い人気があるユニット、SALON MUSICの吉田仁が担当した。

当時としてはかなり珍しい、全編英語詞によるアルバム。それをデビューアルバムでやってしまうあたり、フリッパーズ・ギターのひねくれっぷりががよくわかる。ちなみに、歌詞カードには小沢による対訳が付いている。

ジャケ写からも分かるが、今作リリース時のフリッパーズ・ギターのメンバーは5人だった。しかし、今作リリース直後に3人が脱退し、小山田圭吾と小沢健二の二人組で活動していくこととなった。

楽曲面では1980年代のイギリスのネオアコ界隈からの影響が強い。アズテック・カメラ、ヘアカット100、ペイル・ファウンテンズ、モノクローム・セット、オレンジ・ジュース等… 彼らの知識をひけらかすかのようである。

今作収録曲は英語タイトルと日本語タイトルがあるが、便宜上日本語タイトルで感想を書かせていただく。


「いとこの来る日曜日」は今作のオープニング曲。とても陽気な雰囲気漂う楽しげな曲。異性のいとこが来るのを楽しみに待つ少年が描かれている。そんないとこは「にこっと笑って "ハロー"なんて言うような女の子じゃない」という。小さい頃に会う「いとこ」はやけに魅力的に見えたものだが、その思いが甦ってくるような懐かしい感じがする。


「ボーイズ・トリコに火を放つ」は小沢作曲による曲。ギターサウンドが前面に出ており、心地良い。「不運は月のように現れるけど それならすぐに沈む」というフレーズが印象的。少年時代ならではの無鉄砲さが伝わってくるような曲である。


「すてきなジョイライド」は前の曲と同じく小沢作曲による曲。歌詞は宇宙旅行について歌われている。小山田のボーカルはとてもしっとりしている。間奏のギターソロが印象的。「きのうの夜の楕円軌道」というフレーズの文学的な表現には驚かされる。


「コーヒーミルク・クレイジー」は朝に聴きたくなるような爽やかな雰囲気の一曲。コーヒー牛乳が大好きな人が歌われている。それ無しでは生きられないと宣言している。これを聴くとコーヒー牛乳を異様に飲みたくなってしまう。サウンドは心地良いネオアコサウンド。


「僕のレッド・シューズ物語」はイントロからかき鳴らされるアコギが印象的な一曲。タイトル通りストーリー性の強い歌詞が展開されている。赤い靴を買ってもらい、色々なところを歩き回る。赤い靴を歌詞の中で「彼女」と例えているのには驚かされる。


「奇妙なロリポップ」はサイケな雰囲気がある一曲。フリッパーズ・ギターの前身バンドの名前は「ロリポップ・ソニック」だったが、何か関係があるのだろうか?歌詞の中には「バラ」が多く出てくる。何かの例えなのだろうが、管理人は未だにわからない。


「ピクニックには早すぎる」は爽やかなサウンドが展開されたポップな一曲。ロッテのCMソングに起用され、フリッパーズにとって初のタイアップ曲になった。ピクニックに行っている気分になれるような明るさに溢れた曲。歌詞を読むと、主人公とその彼女は授業を抜け出してピクニックに行っているようだ。誰もが一度は「好きな人と学校をサボって出かける」…というような妄想をするだろうが、それをそのまま描いている。


「サンバ・パレードの華麗な噂が」は気の抜けた雰囲気のロックテイストな曲。歌詞は結局サンバ・パレードについて語られているだけ。何とも中身が無いが、それが良い。魅力は韻を踏む以外は考えていなさそうなフレーズ。「サンバ・パレード」「ブリリアント」「シャトー・ブリアン」… とりあえず聴いていると不思議と耳に残る。そして、一緒になって歌い出す。


「恋してるとか好きだとか」はシニカルな歌詞が印象的な一曲。「君がため息ついてるのに、何が言える?」「君が嘘をついてるのに、何ができる?」「いつだって遠くにいるのに、何が感じられるって言うんだ?」という三連発。ネオアコサウンドにこのようなシニカルな歌詞。いかにもフリッパーズの王道と言える曲。


「さようならパステルズ・バッヂ」はファンの間でも人気の高い一曲。歌詞は全編通してネオアコ界隈のファンなら分かるようなフレーズが多く使われている。「パステルズ」もバンドの名前である。他にも、バンド名や、ネオアコのアーティスト名等が使われている。大切なものとの別れを描いていると解釈している。今作でもラストに向かうところに収録されているため、特別な存在の曲だと感じる。


「やがて鐘が鳴る」は今作最長の曲。ギターのカッティングによるサウンドが何とも言えない焦燥感を生む。歌詞も青春の終わりを描いたような内容であり、サウンドとの親和性が非常に高い。疾走感の中にある、内省的な世界観。それがたまらない。


「レッド・フラッグ」は今作のラストを飾る静かな一曲。童謡「もみの木」をカバーしたもの。歌詞は小沢が書き換えた。歌詞は共産党賛歌として使われていたものだという。何故それを使おうと思ったのだろうか?何とも不思議である。


中古屋ではそこそこ見かける。伝説のバンドとして扱われることの多いフリッパーズ・ギターの始まりのアルバム。全編通して心地良いネオアコ、ギターポップを楽しめる。英語詞ではあるが、全く気にならない程メロディーが良いので、洋楽をあまり聴かない人でも大丈夫である。小山田の下手な英語の発音がかなり印象に残る。曲は多くが2分~3分程でとても短い。一番長い「やがて鐘が鳴る」でも5分と少しなので、通して聴きやすい。フリッパーズ・ギターの原点として、是非とも聴いていただきたいアルバム。
今から聴くならリマスターされて音質が良く、ボーナストラックが収録されている2006年盤を聴くことをおすすめする。

★★★★★