【収録曲】
全曲作詞作曲 桑田佳祐
1.2.3.編曲 桑田佳祐&片山敦夫
4.編曲 桑田佳祐、原由子&曽我淳一
6.編曲 島健

1.ヨシ子さん ★★★★★
2.大河の一滴 ★★★★★
3.愛のプレリュード ★★★☆☆
4.百万本の赤い薔薇 ★★★★★
5.大河の一滴(TV Edit) ★★★★★
↓初回盤のみ収録のボーナストラック
6.東京 (TOKYO Big Band Session) ★★★★☆
7.風の詩を聴かせて (Live at Onagawa Station -2016.03.26-)
8.明日へのマーチ (Live at Onagawa Station -2016.03.26-)
9.明日晴れるかな (Live at Onagawa Station -2016.03.26-)
7~9 ★★★★★

2016年6月29日発売(CD)
2016年7月29日発売予定(アナログ盤)
ビクター・タイシタレーベル
初動2位 売上8.1万枚


桑田佳祐の最新シングル。まだリリースされたばかりで情報があまり入っていないので入り次第更新させていただく。初回盤はボーナストラック4曲が収録され、三方背BOX仕様。


「ヨシ子さん」は表題曲。WOWOWの開局25周年CMソング。曲が紹介された時からその奇抜極まりないタイトルにどのような曲なのか注目が集まっていた。そして、桑田のラジオでこの曲が初めて披露された時、多くのファンがぶったまげてしまったことだろう。初めて聴いた時の管理人の印象は一言で言うと「意味が分からないけど意味はありそうなポップス」。ポップスとは言っても売れ線を堂々と外した「 変な曲」。良く言えば「マニアックな曲」。このような変な曲をシングルに、それもA面の表題曲にできるのはやはり桑田だからできる荒技である。売れ線を外したというよりは売れ線しか評価されないポップスに殴り込みをかけたと言った感じだろうか?

イントロから何とも不思議な印象のサウンド。ずっと聴いていたら頭が変になってしまいそうだが、何故か心地良いのである。世界の様々な音楽の要素に歌謡曲を組み合わせるとこうなるのだろうか?
そして歌詞。全編通して殆ど意味が分からない。とりあえず「真夏の太陽 スゲェ High!!」なのは伝わって来る。語感や言葉の面白さ以外はあまり考えていないように思える。演奏やメロディーだけでなく、言葉でグルーヴ感を出してきている。全くテイストは違うものの、圧倒的な言葉の数でリスナーをねじ伏せるという点ではサザンの「愛の言霊~Spiritual Message~」を彷彿とさせる。言うなれば「言葉の洪水」。とにかく中毒性抜群のワードがある。
「チキドン」「エロ本」「フンガフンガ」「上鴨そば」「Everybody Say」(とても変な発音)… 初めて聴いた時から耳に残って仕方がない。ふとした時に頭の中で「 ♪」と流れてしまう。それだけでなく、意味不明なPV、狂気じみた女性コーラス、「老い」をイメージさせるフレーズの数々… 「EDM」が分からないのはまだ理解できるが、流石に「R&B」は分かるだろとツッコミたくなる。
ここまでふざけた曲を大真面目に作れてしまう桑田佳祐という男には脱帽するのみである。挑戦心と遊び心に驚かされる。日本の売れ線ポップスに喧嘩を売ったこの曲は大名曲にして大迷曲だろう。



「大河の一滴」はUCCのCMソングに起用された曲。打ち込みを使用した四つ打ちビートのリズム。ドラマのオープニングのような、何かが始まる予感に満ちたスリリングなイメージのイントロ。曲の世界観は歌謡曲に近い。
歌詞は「砂に煙る 渋谷の駅」「バスのロータリー」「山手線」「ラケルの横道」「宮益坂」「御嶽神社」とリスナーの想像力を掻き立てるような具体的な地名が使われている。渋谷どころか東京とは一切縁のない田舎者の管理人は「ラケルって何だよ 兄ちゃん(Dear Friend)」と言いたい気分である。調べてみるとオムライスやパンをメインにしたレストランのようだ。特に宮益坂店は創業の地だという。桑田自身思い入れがあるのだろう。別れた男女が思い出を共有しているような歌詞が印象的。

もう一つのこの曲の歌詞の特徴は、ボブ・ディランからの影響を思わせるフレーズが使われていること。「Dylan(かみ)」と名前が出てきている。「時代は変わり 答えは風に吹かれている」というフレーズはボブ・ディランの名曲「時代は変わる」「風に吹かれて」を思わせる。「転がる石は女の如く」というフレーズは同じく名曲「ライク・ア・ローリング・ストーン」「ジャスト・ライク・ア・ウーマン」を思わせる。非常に文学的な歌詞になっている。歌詞とサウンドがとても合っている。この曲はかなりの名曲だと思う。



「愛のプレリュード」はJTBのCMソングに起用された曲。軽快かつ爽やかな雰囲気で、いわゆる王道の曲である。歌詞は友達以上恋人未満の男女が描かれている。喧嘩をしても、結局は仲直りして離れないようだ。恋人の関係になれない男は最後には「恋人未満の僕でいい」と宣言している。何とも切ない。ラストの「MAHALO NUI LOA」というフレーズだが、ハワイ語で「どうもありがとう」と言った感じの意味があるようだ。
とても爽やかなポップスではあるのだが、「普通の良い曲」からは脱することができないでいる。正直桑田佳祐レベルのアーティストなら幾らでも作れそうな感じが否めない。管理人は捻くれ者気質なのだろう。



「百万本の赤い薔薇」はフジテレビの情報番組の『ユアタイム~あなたの時間~』のテーマソングに起用された曲。ポップながらも流麗なメロディーが耳の保養 になる。特に素晴らしいのはサビのメロディー。何処までも広がっていくような圧倒的な開放感に満ちている。歌詞は情報番組のテーマソングらしく世の中について触れているが、それと同じぐらい愛について歌っている。
『ユアタイム』は一日の終わりと言える時間に放送されているが、それを思わせるフレーズが使われている。
「おやすみする前 君は 決まって僕を見つめて 優しい微笑みくれる それが明日への力」というもの。
「「愛と平和」なんてのは 遠い昔の夢か」「強くあれと言う前に己の弱さを知れ」という歌詞は名言である。


この曲が最初に流された時から指摘されていたサビの「Oh oh 紗椰」というフレーズ。これは『ユアタイム』のメインキャスターを務める市川紗椰の名前を使っている。桑田佳祐の世間的なイメージの一つである「女好き」を上手く利用していると言える。
「Oh oh 紗椰」の後に登場する「輝く星は君の水瓶座(アクエリアス)」というフレーズは市川の星座。(市川は2月14日生まれの水瓶座)  最早市川紗椰へのラブソングと化しているが、それを除いても素晴らしい曲である。
少し気になるのは「紗椰」と具体的に漢字を指定しているところ。全国に「さや」という名前の女性は沢山いらっしゃると思うが、漢字のバリエーションは幅広い。それを考えると「さや」「SAYA」等とした方が良かったかもしれない。しかし、明日もまた頑張ろうと思わせてくれる曲である。



「大河の一滴(TV Edit)」はテレビ用のバージョン。曲中の男女の会話の部分がカットされているだけ。この会話の部分は曲の世界観を演出する大事なものだと思う。元のバージョンより評価が下がっているのはそのためである。



「東京 (TOKYO Big Band Session) 」は2016年6月25日にWOWOWで放送された特別番組でのスタジオ音源。タイトル通りビッグバンドでの演奏のため、迫力が凄い。管楽器や弦楽器が前面に出た分厚いサウンド。原曲よりもこちらのバージョンの方が間違いなく好き。



「風の詩を聴かせて」「明日へのマーチ」「明日晴れるかな」の3曲は2016年3月末に女川さいがいFMが閉局するという話を知った桑田が、東日本大震災の復興への思いを込めて現地から『桑田佳祐のやさしい夜遊び』の生放送を行った時にサプライズで演奏した曲。とてもシンプルながら、桑田たちの思いが伝わってくるような演奏である。被災地の方々に優しく向き合っている姿が浮かぶ。MCや観客の拍手が入っているため、その場で聴いているような気分になる。素晴らしいライブである。


新曲は総じて好印象だった。ますますアルバムのリリースが楽しみになった。ボーナストラックも素晴らしい出来で、初めて聴いた時に鳥肌が立ってしまった。聴くなら是非とも初回盤を聴いていただきたいと思う。


★★★★★