【収録曲】(大瀧詠一が絡んだもののみ)
全曲作曲 大瀧詠一
1.3.編曲  大瀧詠一
2.編曲 CHELSEA(大瀧の変名)
4.編曲 宿霧十軒(大瀧の変名)
9.編曲     多羅尾伴内(大瀧の変名)
10.作詞   大瀧詠一
プロデュース 大瀧詠一

1.熱き心に ★★★★★
2.うれしい予感 ★★★★☆
3.怪盗ルビイ ★★★★☆
4.星空のサーカス ★★★★★
5.Tシャツに口紅 ★★★★★
6.探偵物語 ★★★★☆
7.すこしだけやさしく ★★★☆☆
8.夏のリビエラ -Summer Night in Riviera- ★★★★☆
9.風立ちぬ ★★★★★
10.夢で逢えたら(Strings Mix) ★★★★★

(初回盤のみ)DISC2
1.George Whiting、作曲:Walter Donaldson、日本語詞:堀内敬三、編曲:Rinky O'hen
2.(Rip It Up)作詞・作曲:Robert Blackwell / John Marascalco
(All Shook Up)作詞・作曲:Otis Blackwell / Elvis Presley
3.作詞・作曲:George Jones / Roger Miller、編曲:Rinky O'hen
4.作詞・作曲:Sheb Wooley、日本語詞:さくらももこ、編曲:Rinky O'hen

1.私の天竺 My Blue Heaven
2.陽気に行こうぜ~恋にしびれて (2015村松2世登場!version)
3.Tall Tall Trees~Nothing Can Stop Me
4.針切じいさんのロケン・ロール The Purple People Eater 

2016年3月21日発売
NIAGARA/Sony Music Labels Inc.
最高位3位 売上約6.5万枚

大滝詠一の7thアルバム。大滝詠一名義のアルバムとしては、「EACH TIME」以来32年振り。初回盤は三方背BOX仕様でボーナスディスク付属で2枚組。タイトルは大滝が1978年にリリースしたベスト盤「DEBUT」にちなむ。

2013年に大滝詠一が死去。その後はベスト盤や、旧作のリマスター盤をリリースしてきたが、それらを除くと今作が初のアルバム。収録内容から、「アナザー・サイド・ベスト」と呼ばれていたが、公式サイトでは「奇跡のニューアルバム」と呼んでおり、ソニーサイドはソニー移籍後3作目のアルバムと扱っている。

今作は他者に提供した曲で、それを大滝詠一自らが歌った、「セルフカバー」で構成されている。生前の大滝はセルフカバーを嫌っていたという。今作収録の10曲中の7曲は大滝が亡くなった後、遺品の整理をしていた時に見つかったマスターテープを基にしている。


「熱き心に」は1985年、小林旭に提供した曲。作詞は阿久悠が担当した。小林旭のバージョンに感銘を受けた大滝が「小林の帰宅後にスタジオに入ってこっそり歌っていた」というエピソードがあった。生前、この曲の大滝バージョンのリクエストには「無いよそんなもの」と即答していたようだが、発掘された。雄大なイメージのサウンド。原曲の小林旭よりも力強さや情感を感じさせる。


「うれしい予感」は1995年、渡辺満里奈に提供した曲。作詞はさくらももこが担当した。元のバージョンはアニメ『ちびまる子ちゃん』のオープニングに起用された。サウンドは「ロンバケ」時代を想起させるような、ウォール・オブ・サウンドが展開されている。とてもキラキラしたようなイメージのサウンド。渡辺満里奈のボーカルに合わせたため、大滝が歌うと違和感抜群ではあるが、また違った魅力を感じさせる。大人の味わいがある。


「怪盗ルビイ」は1988年、小泉今日子に提供してヒットした曲。小泉が主演した、同名の映画の主題歌に起用された。作詞はその映画の脚本と監督の和田誠が担当した。昔の映画のような、懐かしい雰囲気に溢れている。マニアックな雰囲気もある。和田と大瀧で歌詞をめぐって何度も濃密なやりとりを重ねたという。大滝の楽曲では「ノベルティ・タイプ」に位置するような曲。


「星空のサーカス」は1983年、ラッツ&スターに提供した曲。作詞は長年のパートナー、松本隆が担当した。大滝の得意技と言える、一人多重録音による分厚いドゥーワップコーラスが曲を彩っている。大滝のオリジナル曲と言っても違和感は全く無い。何故これがずっと未公開だったのかと言いたくなるほどのクオリティー。


「Tシャツに口紅」は前の曲と同年に、ラッツ&スターに提供した曲。作詞は同じく松本隆。R&B色の濃い曲。しっとりと聴かせるようなアレンジになっている。ラッツ&スターのリードボーカルの鈴木雅之とは違った味わいの大滝のボーカル。一人多重コーラスが展開され、本格的なオールディーズものR&Bを聴いているような感覚になる。一人称が「俺」なのが印象的。


「探偵物語」は1983年、薬師丸ひろ子に提供してヒットした曲。作詞は松本隆が担当した。映画『探偵物語』の主題歌に起用された。大滝は西武球場でのライブ「ANN SUPER FES '83」に出演した時にこの曲を披露している。このライブは大滝詠一にとって生涯最後の公演となった。女性目線の歌詞ではあるが、全く気にならない。元のバージョンには使われていなかった、ハモンドオルガンが使われている。


「すこしだけ やさしく」は前の曲と同年に薬師丸ひろ子に提供した曲。作詞は松本隆が担当した。この曲も同じく、西武球場でのライブイベントのためのバージョン。スタジオ録音テイクがあることは知られていなかったという。少しだけ遠ざかったような感じで歌っているが、それが独特な魅力を生んでいる。何とも言えない距離感があるが、それが良い。


「夏のリビエラ -Summer Night in Riviera-」は今作では数少ない、既発の曲。作詞は松本隆が担当した。1982年、森進一に提供した「冬のリヴィエラ」のセルフカバーバージョン。初出は1985年。当時としては世界初のプロモーション限定によるコンピレーションアルバム「SNOW TIME」に収録された。夏をイメージさせるような英語詞が付けられた。森進一のバージョンと比べてキーを全音下げている。


「風立ちぬ」は1981年、松田聖子に提供し、ヒットした曲。作詞は松本隆が担当した。このバージョンは、同年の12月3日に渋谷公会堂で行われたヘッドホンコンサートの音源。入場時に渡されたFMウォークマンで流れる音源をヘッドホンで聴くという実験的そのものなコンサート。「今日歌ったら一生、二度と歌うこともないだろうという歌をやってみたいと思います」と前置きをして歌われた。その後、本当に歌われることは無かった。


「夢で逢えたら(Strings Mix)」は非常に多くのアーティストにカバーされた、ポップス界のスタンダードと言える曲。元々は1976年に吉田美奈子に提供した曲。ラッツ&スターバージョンが有名だろうか?長らく「大滝詠一が歌ったバージョンは無い」と言われ、大滝本人も無いと言い続けた。しかし、大滝の死後、家族が遺品の整理をしている時に発見されたという。2014年にリリースされた大滝詠一初のオールタイムベスト盤「BEST ALWAYS」に収録された。今作収録バージョンは「BEST ALWAYS」と、ボックスセット「Niagara CD BookⅡ」の同時購入者特典として抽選で300名限定でプレゼントされた7インチレコードに収録されたバージョン。


DISC2は洋楽のカバー。4曲中3曲は1997年7月から9月にかけて信濃町ソニー・スタジオで行われた「ナイアガラ・リハビリ・セッション」と呼ばれる極秘のセッションでの音源。同年の11月に「幸せな結末」をリリースするが、それに合わせてスタジオセッションの感覚を取り戻すために行ったという。
DISC2の収録曲の評価は省略させていただく。


今作は大物アーティストやバンドが死去したり、解散したりした後によく出される、「未発表音源集」の類の作品である。どれも資料的価値がとても高く、長年のファン垂涎の作品だと思う。セルフカバーを発表するのは嫌っていたという大滝詠一なので、生前にこのような作品がリリースされることは無かっただろう。生前の大滝詠一が残した名言を紹介させていただく。「いつまでも あると思うな ナイアガラ あとは各自で」恐らく、これからも今作のような作品がリリースされるかもしれない。
著名な楽曲が収録されているため、原曲と比べながら聴くのが良い楽しみ方である。ライトリスナーにもおすすめできる作品。

★★★★☆