小田和正
1995-03-25


【収録曲】
全曲作詞作曲 小田和正
1.編曲 Rhett Lawrence and Kazumasa Oda
2.4.5.6.7.編曲 Dan Huff and Kazumasa Oda
3.編曲 小田和正
8.編曲 Robbie Buchannan and Kazumasa Oda
プロデュース Bill Schnee 小田和正

1.切ない愛のうたをきかせて ★★★★★
2.冬の二人 ★★★★☆

3.哀しみを、そのまゝ ★★★★★
4.1985 ★★★★★

5.夜の行方 ★★★★★
6.信じるところへ ★★★★☆

7.明日、あの海で ★★★★★
8.空が高すぎる ★★★★★
 
1986年12月3日発売
1995年3月25日再発
ファンハウス
最高位4位 売上16.1万枚(LP,CT,CD合算) 
LP…7.6万枚 CT…2.6万枚 CD…5.9万枚


小田和正の1stアルバム。先行シングル「1985/哀しみを、そのまゝ」を収録。オフコース在籍中のリリースとなった。


プロデュースとミキサーにオフコース時代からの旧知の仲であるビル・シュネーを迎えた。ビル・シュネーは多くの大物アーティストの作品でプロデューサー、エンジニアとして活躍している人物。エンジニアとしての代表作はスティーリー・ダンの「Aja」「Gaucho」グラミー賞の最優秀録音賞を獲得した。
オフコースの作品にもレコーディングエンジニアとして関わっている。1980年リリースの「We Are」から1987年リリースの「as close as possible」までの作品に参加した。小田とは同い年ということもあり、音楽の枠を超えた深い親交がある。


小田和正本人曰く、この作品は全米進出を目論んで現地で奮闘していた時の作品。レコーディングはロサンゼルスで行われた。バックには大物ミュージシャンを揃えている。ドラムにはTOTOのジェフ・ポーカロ、ギターにダン・ハフ、ベースにTOTOの
デヴィッド・ハンゲイト、パーカッションにTOTOのレニー・カストロが参加した。他にも、現地の実力派ミュージシャンを多く迎えた。演奏に耳を傾けて聴いても楽しめる。演奏の上手い下手がよく分からない管理人でも何となく凄いと分かる。


ちなみに、歌詞カードに掲載されている歌詞は順不同で全て小田の直筆によるもの。若干読みにくいが気にしない。



「切ない愛のうたをきかせて」は今作のオープニング曲。歌詞カードに歌詞は掲載されていない。「制作中。今日も、ロスはよく晴れています。'86.10.17(FRi)」と書かれているのみ。どうやら今作収録曲の中でこの曲が最後に完成したようで、ギリギリまで歌詞が完成しなかったという。その代わりとして書いた文章なのだろう。最初は静かに始まる。曲の後半にポップになっていく。このアレンジがとてもお洒落。歌詞はオフコースを脱退した鈴木康博へのメッセージという解釈がされることが多い。



「冬の二人」はポップな一曲。真冬の海に車で出かけたカップルの感情の機微を描いた歌詞。曲の爽やかさ、明るさに反して歌詞はそこそこ大変である。ふたりは何も言葉を交わさない。「時がこんなに ゆっくり流れてゆくなんて」というフレーズが印象的。気まずい時間を過ごしているとやけに時の流れが遅く感じられる。サウンドはキーボードとギターが前面に出たイメージになっている。間奏のギターソロは必聴。格好良過ぎ。



「哀しみを、そのまゝ」は先行シングル曲。第一生命の「パスポート21」のCMソングに起用された。全編アカペラによる静かなバラード。そのためか、編曲も今作では唯一の小田和正単独によるもの。1分50秒程度の短い曲ではあるが、とても美しい曲。歌詞は優しいラブソング。小田和正の歌声に魅了されるばかりである。



「1985」は先行シングル曲。シングルバージョンとは異なり、エンディングが長くなっているという。そのため、演奏時間が7分近い。聴き比べをしたいところだが、シングルは入手困難。小田はコンピュータでこの曲のデモテープを制作したという。それを実力派ミュージシャン達が忠実に再現して演奏した。サウンドはロック色が強い。小田の力強いボーカルを味わえる。



「夜の行方」は1stベスト「Oh!Yeah!」にも収録された曲。恋模様を描いた歌詞ではあるが、少々大人向けな世界観。繰り返し歌われる「心が揺れてる」というフレーズが印象的。バンドサウンドとサックスの絡みが心地良い。今作収録曲の中でもかなりAOR色が色濃い。タイトル通り、夜に聴くのが一番おすすめである。



「信じるところへ」は力強い歌詞が印象的な曲。内省的なイメージの歌詞が多い今作の収録曲の中では異彩を放っている。「今は 誰れに 何を今は言われても もう迷わない このまゝ」という歌詞が顕著。当時の小田和正自身の決意だったのかもしれない。ポップで開放感に溢れた曲。流麗なメロディーラインが素晴らしい。



「明日 あの海で」はタイトル通り海を舞台にしたラブソング。冒頭には波の音が入っており、この曲の世界観に引き込んでくる。歌詞は話し口調で展開されている。ギターとサックスのソロが曲中にあるが、それらが曲に良いアクセントになっている。ロサンゼルスでレコーディングされただけあって、西海岸の空気が伝わってくるような感覚がある。ファン人気が高いのも頷ける曲。



「空が高すぎる」は今作のラストを飾る静かな曲。1stベスト「Oh!Yeah!」では堂々オープニングを飾っている。サウンドはキーボードの弾き語りをメインに、シンセも使われている。元々はオフコースのデビュー当時に作られていたという。歌詞は過去を振り返っているような内省的な内容。この曲も鈴木康博への想いが込められていると言われている。この曲もとてもファン人気が高い。



中古屋ではあまり見かけない。全編通して内省的な雰囲気がある。曲はAOR色が強いものが多い。多くの実力派ミュージシャンを起用したことで、とても洗練されたサウンドになっている。曲自体も完成度が非常に高く、全曲☆5個にしてもいいくらいである。余談だが、CD初期の作品にしては音質が比較的良い。現時点では小田和正の最高傑作だと思う。名盤。

★★★★★