【収録曲】
全曲作詞作曲 KAN
全曲編曲 小林信吾 KAN
プロデュース KAN

1.発明王 ★★★★☆
2.決まりだもの ★★★★☆
3.プロポーズ ★★★★☆
4.ときどき雲と話をしよう ★★★★★
5.ぼくの彼女はおりこうさん ★★★★☆
6.永遠 ★★★★★
7.信じられない人 ★★★☆☆
8.イン・ザ・ネイム・オブ・ラブ ★★★★☆
9.恋人 ★★★★☆

1991年5月22日発売
2010年10月26日再発(リマスター)
ポリドール
アップフロントワークス(リマスター盤)
最高位2位 売上22.6万枚

KANの6thアルバム。先行シングル「イン・ザ・ネイム・オブ・ラブ」を収録。今作発売後に「プロポーズ」がシングルカットされた。「愛は勝つ」の勢いのままに、初登場2位を獲得。前作「野球選手が夢だった。」からは約10ヶ月振りのリリースとなった。

KAN曰く「前作の好成績に気を良くしノリノリ状態で制作された1枚」とのことだが、多忙だったことが影響してか、収録曲数は今までのアルバムよりも1曲少ない9曲。

共同アレンジャーには小林信吾が全曲で参加。前作でも共同で編曲していた。どうやらKANは小林を信頼したようで、前作から12thアルバム「KREMLINMAN」までの曲は全て小林信吾が参加している。

お風呂から半分顔を出しているユニークなジャケ写が印象的だが、多忙な日々を過ごしていた当時のKANにとっては「ゆっくり風呂につかりたい」というのは心からの願いだったのかもしれない。


「発明王」は今作のオープニング曲。丁度2分程度の短い曲。アコギが主体になったとてもシンプルなサウンド。フォークテイストの曲はKANの楽曲では珍しい。忙しい今を愚痴りながら、いろんな遊びを発明していた「あの頃」を振り返る、少し寂しげな内容の歌詞。「まりなちゃんの胸もゆがんで見えた」という歌詞があるが、「まりなちゃん」とは当時人気だったAV女優の松本まりなのことらしい。現在復帰しているとかいないとか。


「決まりだもの」はKAN自らのコンプレックスを描いた曲。サウンドはファンクテイスト。コンプレックスとは、「変な顔」。「いい人なんだけど変な顔の男」と堂々自分で歌い上げている。途中の女性同士の会話の部分がかなりグサッとくる。「話題は豊富なのよね」「けっこうもの知りだしさ」「律儀なとこはかうよね」「でもそれだけなの。何か足んないの」「いい人なんだけどね」
まるで自分のことを言われているような気分になる。ただ、サウンド含めて割と好き。ここまで素直に自らを卑下した曲を作り、歌える者はいるだろうか?


「プロポーズ」は今作発売後にシングルカットされた曲。『邦ちゃんのやまだかつてないTV』の挿入歌に起用された。KANの楽曲の中ではそこそこ著名。スティービー・ワンダーの「Overjoyed」の影響を受けて作られた曲。その曲に倣って、シンセサイザーだけが使われたサウンド。公園を舞台にした、優しいラブソング。2007年リリースのベスト盤「IDEAS」では生演奏による、ジャズテイストの強いバージョンにリアレンジされている。そちらもかなり良い。


「ときどき雲と話をしよう」は「イン・ザ・ネイム・オブ・ラブ」のC/W曲。テレ朝系のスポーツ情報番組『スポーツフロンティア』の初代エンディングテーマに起用された。ピアノを中心としたポップなメロディーから放たれる喪失感を感じさせる歌詞。「愛は勝つ」が大ヒットした1990年が一番忙しい年であることを切望して書いた歌詞だという。サビの「相当がんばり過ぎたね 少し休もう」という歌詞が何とも哀愁に満ちている。「ここ2、3日は絹雲と話が合う」というフレーズはKANならでは。もっとも悲しくさせるのは「結局ぼくはいつも何かにおわれて 君をつつむ大きな 空にはなれなかった」というフレーズ。非常に気だるい雰囲気に溢れた曲だが、自然と引き込まれる。


「ぼくの彼女はおりこうさん」はタイトルのインパクト抜群な曲。これまたKANらしさ全開の歌詞。「チェックのパジャマすごく似合うんだ」「ぼくの言うことなら 何でもきくんだぜ」「とってもからだやわらかいんだぜ」… とってもおりこうさんな彼女だなあと思うだろう。しかし、タダじゃ終わらないのがKAN。何と彼女の正体は「だけど彼女は四角いPILLOWちゃん」である。つまり、枕。そう言われて上で紹介した歌詞を見返すとそれなのである。ラストの「これでもぼくはもうすぐ30歳  彼女いないまま来年で30歳」というフレーズがとてつもなく悲しい。余談だが、KANの「おりこうさん」の歌い方が桜井和寿っぽい。「everybody goes」の2番のサビ前の部分。「おりこうせ~~ん」といった感じの。恐らくKANの方が先だと思われる。


「永遠」はKAN王道のピアノバラード。Bank Bandで櫻井和寿がカバーして、そこそこ有名になった。他にも、つるの剛士がカバーした。KANの楽曲に多い、恋人への永遠の愛を誓う内容のバラード。「たとえば ぼくの存在が君の重荷になるなら その荷物はぼくがもちます」というフレーズが一番好き。発想力と愛の深さが凄い。ファンではないという方にも聴いていただきたいレベルの名曲。


「信じられない人」はラテン系のサウンドが展開された異色の曲。種ともことデュエットしている。種ともこのボーカルが独特過ぎて最早KANのボーカルを食っている。「真剣な時ほど 明るいほうが良いと思ってね」というフレーズは分からなくもない。「秋山さんが宇宙に行く時代に 目の前のぼくを何で信じらんないの」という歌詞は時代を感じさせる。秋山さんとは、日本人初の宇宙飛行士の秋山豊寛さんのこと。


「イン・ザ・ネイム・オブ・ラブ」は先行シングル曲。本人も出演していたドラマ『熱血!新入社員宣言』の主題歌に起用された。スバルの「レックス」のCMソングにも起用された。「愛は勝つ」のヒットを引きずったままの状態でリリースされた曲。KAN自身「一発屋になりたくない」と意識し、プレッシャーのかかった状態で制作していた。やはりメロディー、歌詞共にKANが納得の行くものにはならなかったという。もし他の曲だったら、KANはもっとセールスを伸ばし、ヒットメーカーになっていたのだろうか?しかし、この曲がダメな曲という訳では決してない。ポップかつ流麗なメロディーがとても心地良い曲である。もう少し評価されても良いのではと思ってしまってならない。比較的著名な曲だと思われるが、本人公認のベスト盤での収録経験は無い。本人も忘れてしまいたい曲なのかもしれない。


「恋人」は今作のラストを飾る、悲しい雰囲気溢れる曲。王道のピアノ弾き語り系バラード。タイトルから壮大なラブソングだろうと思ったら、別れを描いた悲しい内容。「切符を買う細い指を 何も言えず見ていた」という歌詞は情景が浮かんでくる。歌詞を見ていると、恋人への未練がタラタラなのがうかがい知れる。当時のKAN自身の実体験なのだろうか?


ヒット作なので中古屋ではかなり見かける。タイトルとジャケ写のインパクトが抜群なので一度見たら忘れ難い。曲数9曲、収録時間40分足らずと非常にコンパクトなアルバムだが、バラエティー豊かな内容。ライトリスナーには聴きにくいアルバムかもしれない。何度か聴くと自然にハマれる。

★★★★☆