【収録曲】
全曲作詞作曲 草野正宗
全曲編曲 スピッツ&亀田誠治
12.編曲 スピッツ&クジヒロコ
14.編曲 スピッツ
プロデュース スピッツ&亀田誠治

1.醒めない ★★★★★
2.みなと ★★★★☆
3.子グマ!子グマ! ★★★★☆
4.コメット ★★★★☆
5.ナサケモノ ★★★★☆
6.グリーン ★★★★☆
7.SJ ★★★★★
8.ハチの針 ★★★★★
9.モニャモニャ ★★★★☆
10.ガラクタ ★★★☆☆
11.ヒビスクス ★★★★★
12.ブチ ★★★★☆
13.雪風 ★★★☆☆
14.こんにちは ★★★★☆

初回盤のみDVD(Blu-ray)
1.醒めない
2.みなと
3.ヒビスクス
4.撮影オフショット

2016年7月27日発売
ユニバーサルミュージック
初登場2位 初動売上8.3万枚

スピッツの15thアルバム。先行シングル「雪風」「みなと」を収録。「雪風」は配信限定シングル。前作からは約2年10ヶ月振りのリリースとなった。初回盤はオリジナルスリーブケースパッケージ仕様で映像DISC付属。DVDとBlu-rayで分かれており、Blu-rayの方が若干値段が高い。また、初回盤はSHM-CD仕様。アナログ盤でも発売された。完全盤と言えるのはSpitzbergen会員限定盤。ファンクラブ会員限定ライブの音源を収録したライブアルバムが付属している。

いつものアルバムレビューならアルバムそのものの背景やレコーディング中のアーティストについての話を添えてから楽曲の感想に映るが、発売間もない新譜なのでそれは省略させていただく。追々加筆できたらしたいと思う。と言うわけで?発売前に今作について思っていたことを書き連ねます。

発売前に発表された曲名一覧を見た時、管理人は「何か可愛い感じのばっかりだな」と思ってしまった。そして、根拠も無く「今作は微妙かも…」と不謹慎なことを考えてしまった。とは言っても、管理人がCD収集や音楽を聴くことを趣味にしてから初めてのスピッツの新譜。期待しないはずがない。スピッツは管理人の音楽の趣味の原点と言える存在。6歳の頃に母の車の中で流れていたのをはっきりと覚えている。恐らく「RECYCLE」か「CYCLE HIT」の1991-1997。「君が思い出になる前に」「ロビンソン」「涙がキラリ☆」「スカーレット」辺りが好きだった。本格的に音楽を聴き始める前から好きで聴いていたので、ニワカリスナーではあるがファン歴はそれなりに長いと思う。

当然、予約して発売を心待ちにしていた。フラゲに成功し、ワクワクと不安の入り混じる中で聴いてみると、ロック色が比較的強いアルバムだった。しかし、他のどのアルバムにも似ていないと思う。そろそろ楽曲の感想に移ろう。


「醒めない」は今作のオープニング曲にしてタイトル曲。発売前に音楽番組でも披露されたり、PVが先行公開されたりとリード曲と言える存在。「ロックに憧れた思春期の頃の初期衝動を今もなお持ち続けている」というテーマのもとに作られた。そのテーマの通り、少年時代を振り返るような歌詞もある。曲はとても爽やかなロックナンバー。「ロック大陸」というサビのフレーズがとても印象に残る。サビの張り上げるところが大好き。終わりの無い「ロック大陸」の冒険が幕を開ける。


「みなと」は先行シングル曲。NTT東日本のCMソングに起用された。曲自体は近年のスピッツの曲で言うと「若葉」や「スワン」に似た感じ。Mステでも披露され、草野が歌い出しを間違えるミスをして話題になった。美しく、繊細なアルペジオから始まるイントロ。それを裏で支えるベースとドラム。一糸乱れぬ演奏は流石スピッツ。とても幻想的な雰囲気漂う曲になっている。「君ともう一度会うために作った歌さ」というサビの歌詞。「君」は亡くなってしまったのだろうか?管理人は東日本大震災で亡くなった方への鎮魂歌だと解釈している。聴いていると凄く落ち着ける曲である。間奏の口笛のところは歌詞だけでは伝わりきらない想いが表現されているようだ。


「子グマ!子グマ!」はタイトルに驚かされる曲。「そう来たか」と思わずにはいられない。曲も「そう来たか」と思ってしまうような展開。最初は割と王道と言えるポップな感じだが、途中で急にハードになる。スピッツの新機軸と言ってもいい。野太い声で「子グマ!子グマ!」と呼びかけるところが印象的。その部分ではプロデューサーの亀田誠治も参加しているようだ。「喜びの温度はまだ~」のところのメロディーが「ババロア」の「驚いてほしいだけの見え透いた空振り」のところのメロディーと似ているような気がする。


「コメット」は世間が思うスピッツの楽曲というイメージの曲。フジテレビ系ドラマ『HOPE~期待ゼロの新入社員~』の主題歌に起用された。草野曰く「"投げやり"から"前向き"に変わろうとする途上を歌っている」という。前述した「世間が思うスピッツの楽曲」というのは爽やかな雰囲気のポップな曲。2000年代前半くらいの曲っぽい。イントロのキーボードの音がとても心地良い。コメットは彗星のことだが、消えてしまいそうな程に美しく、優しい曲である。


「ナサケモノ」は気だるい雰囲気のあるポップな曲。これまたタイトルがインパクト抜群だが、歌詞の一部分を見てみると「情けない獣」というフレーズがあるので、その略だと思われる。生活感漂うフレーズが散りばめられたラブソング。他にも、電子レンジのチンの音も入っている。自分のことを「情けない獣」に例えている。「恋」を「本能でさらに強く 伝えたい気持ちがある」と表現する草野には脱帽の一言。


「グリーン」は跳ねるような曲調が印象的な曲。ライブで演奏したら盛り上がりそう。何となく初期のスピッツっぽい。「憧れに届きそう」というフレーズだけで「グラスホッパー」と似ていると考えてしまった。実際の関係性は無いと思うが。2番の初めの「コピペで作られた 流行りの愛の歌」というフレーズがかなりズシンと響く。最近の音楽を直球で皮肉った歌詞である。


「SJ」はキャッチーながらも力強いバンドサウンドが展開された曲。これまたタイトルがよく分からない。何かの略なのか、「Y」のような記号的なタイトルなのか。歌い出しから「夢のかけらは もう拾わない 君と見よう ザラついた未来」と今までに無かった決意表明のような歌詞。全編通して比較的メッセージ性の強い歌詞になっている。よく分からないことが多い曲だが、力強さ溢れる曲なのでかなり好印象。


「ハチの針」はグルーヴ感溢れる演奏が格好良い曲。ハードなイメージのサウンド。管理人がこの曲を初めて聴いた時の印象は「イエモンっぽい」というものだった。ただ、サビはとてもキャッチー。歌詞は非常に散文的で意味不明。これぞスピッツの歌詞といった感じ。「ハチの針」は何かの例えなのだろう。自分の中に隠し持った、他人に負けない強みや凶暴なところの比喩だと解釈している。サウンドだけでもハマれる曲。


「モニャモニャ」はここまでの流れを落ち着けるようなゆったりとした曲。何ともゆるふわな印象のタイトルだが、ジャケ写に登場している幻獣の名前だと思われる。「モニャモニャは撫でるとあったかい」そうです。誰もにモニャモニャのような存在がいる(ある)と思う。一緒に過ごしているだけで心から安心できる、楽しくなれる存在。小さい頃からずっと持っている物にも同じような効果があると思う。聴いていると暖かく、懐かしい気分になれる曲。


「ガラクタ」は「みなと」のC/W曲。遊び心を感じさせるサウンド。バンドサウンドだけでなく、トイピアノ、リコーダー、フレクサトーンと様々な楽器が使われている。おもちゃ箱をひっくり返したような、とっ散らかった雰囲気のある曲。語感の良さだけを考えたような意味不明な歌詞が繰り広げられている。分かるのは「ガラクタ ラブストーリー」というものだけ。許されない恋をしてしまったのだろう。「出会っちゃいけない二人 燃え上がってランナウェイ」という歌詞からうかがい知れる。「ゲス」というフレーズも使われている。そのためか、発表当時はベッキーと川谷絵音のアレを思い浮かべた方もいるようだ。ちなみに、曲は「ハチミツ」の時点でできていたようだ。


「ヒビスクス」は今作のハイライトと言える曲。SUBARUの「フォレスター」のCMソングに起用された。タイトルはどういう意味かと思っていたが、どうやら「ハイビスカス」の別名らしい。ハイビスカスの英語のスペルは「Hibiscus」である。ラテン語読みすると「ヒビスクス」になるようだ。今はフヨウ属の植物の仲間の学名になっているという。ミュージックビデオはハワイで撮影された。ハワイと言えばハイビスカスのイメージがある所。関係があるのかもしれない。
曲は、静謐なキーボードの音色から始まり、力強いバンドサウンドが入っていく。「夜を駆ける」をイメージさせる始まりである。サビの「恐れるな 大丈夫 もう恐れるな」というフレーズは鳥肌が立つこと必至。ここまで壮大な印象の曲は今までのスピッツの曲には見られなかった。「ロック大陸」の冒険は終盤に入っていく。


「ブチ」はファンクラブ会員限定ライブで披露されていた曲。タイトルだけでなく、曲自体も可愛らしいイメージのもの。「君はブチこそ魅力」という訳が分からないが言いたいことは分かるサビの歌詞。「いつでも一生懸命なところが君の魅力だよ」と解釈している。応援歌的な歌詞になっている。一回聴いただけだと「?」となる曲だが、何回か聴くと自然とハマる。


「雪風」は配信限定シングル曲。テレビ東京系ドラマ『不便な便利屋』の主題歌に起用された。アルバム収録に際し、ボーカルが再録されている。曲は3分と少しと比較的短い。アコースティックなイメージの比較的シンプルなサウンド。優しい雰囲気の曲。歌詞の意味はやはりよく分からないが、死生観が語られたものだと思っている。


「こんにちは」はアルバムのラストを飾る曲。パンクっぽい曲。長さは2分20秒とかなり短いが、言葉が詰め込まれている。親しい人との再会を歌ったもの。「心に生えた足でどこまでも 歩いて行ける」というフレーズが印象的。このタイトルの曲がアルバムのラストというのもスピッツらしい。「おもろくて脆い星の背中」を歩いて行こう。


収録曲の曲名とは裏腹に、全体的に力強いロックサウンドが展開されている。そのようなアルバムは過去にも何作かあるが、そのどれとも似てはいない。結成30年を前にして、新機軸の音楽を披露してのけたスピッツのこれからに期待するのみである。演奏もボーカルも若々しさと円熟味を併せ持ったものになっている。好きなバンドの久し振りの新譜ということで多少評価が甘くなってしまうのは否めないが、それを抜きにしても素晴らしいアルバムだと思う。このアルバムを聴いたファンは スピッツというバンドの魔法から醒めることは無いだろう。

★★★★★