小田和正
1993-10-27


【収録曲】
全曲作詞作曲編曲 小田和正
プロデュース         小田和正


1.そのままの君が好き ★★★★★
2.またたく星に願いを ★★★★☆

3.Come on ★★★★★
4.渚 ふたりで ★★★☆☆
5.風の坂道 ★★★★★

6.だからブルーにならないで ★★★★☆
7.今はきかない ★★★☆☆

8.それとも二人 ★★★★★ 
9.let me hold you baby ★★★☆☆
10.my home town ★★★★☆


1993年10月27日発売
Little Tokyo/ファンハウス
最高位2位 売上17.5万枚

小田和正の5thアルバム。先行シングル「そのままの君が好き」「風の坂道」を収録。前作からは1年10ヶ月振りのリリースとなった。ちなみに、次のオリジナルアルバムのリリースまで6年半くらい期間が空いている。


タイトルは故郷への想いを込めたもの。「横浜」をキーワードにしているという。ジャケ写は小田の地元の横浜にある、根岸線の山手駅で撮影された。ちなみに、先行シングル曲の「風の坂道」のジャケ写は小田の母校の聖光学院のグラウンドで撮影された。


このアルバムは最高位こそ2位を記録しているが、売上がソロになってから最も低いアルバム。売上が全てという訳ではないものの、何故そうなってしまったのか不思議である。話題性やタイアップの少なさが原因なのだろうか?次のオリジナルアルバムを長くリリースしなかったのは今作の売上の少なさに小田がすねてしまったからという説まである。



「そのままの君が好き」は先行シングル曲。東映アニメ映画『走れメロス』のテーマソングに起用された。ポップだが歌詞は比較的濃厚なイメージのラブソング。AORと言った方が良いだろう。コーラスにはSING LIKE TALKINGの佐藤竹善が参加しており、存在感を放っている。シングルバージョンよりも今作収録バージョンの方が曲が長いため、実質的にはアルバムバージョンである。



「またたく星に願いを」はライブの定番としてよく演奏される曲。味の素「ほんだし」のCMソングに起用された。ワイパーと呼ばれる、観客両手を上に挙げて左右に振るパフォーマンスがある。ピアノポップ的な跳ね上がるようなメロディーがとても楽しげ。ライブの定番となるのも頷ける。「この夢は 捨てない いつまでも 追いかけてゆく この愛は 離さない そのために 生きてゆきたい」というフレーズが印象的。



「Come on」はAOR色の濃い曲。「Come on」と歌う部分が「Oh Yeah!」を彷彿とさせる。歌詞は心がすれ違って別れてしまうカップルが描かれている。「信じるものはひとつあればいい それは二人だけのもの」というフレーズが好き。このようにしっとりと聴かせるラブソングは小田和正の王道と言える。かなり好きな曲。



「渚 ふたりで」はピアノの弾き語りが中心になったバラード。夏の真っ盛りの渚ではなく、夏が来る少し前の渚の光景が浮かぶような曲。カップルの様子が手に取るように浮かんでくる、繊細な情景描写がされている。「今 遠去かる波の音が 寄りそう二人 切なくさせる」という歌詞が印象的。この対比が見事である。優しい雰囲気がたまらない曲。


「風の坂道」は先行シングル曲。シャープの「液晶ビューカム」のCMソングに起用された。サウンドは極めてシンプルに、静かに聴かせるもの。メロディーも繊細で美しい。特にこの曲は歌詞が素晴らしい。生きて行くことについて考えさせられる。小田曰く「極めて素直に、何にも考えないで書いたもの」とのこと。小田は普遍的なものを求めていたという。「いいわけしていないか 怒りを忘れてないか 弱いから立ち向かえる 哀しいからやさしくなれる時はこぼれていないか 愛は流されていないか」と力強い声で問いかける部分は鳥肌が立つこと必至。この曲を聴く時は 自然と素直な心になっている。



「だからブルーにならないで」はミドルテンポのポップな曲。打ち込みによるブラスが随所で使用され、この曲を盛り上げている。三菱の「ミラージュ・アスティ」のCMソングに起用された。恋人を「ブルーにならないで」と励ます内容の歌詞。ライブでも比較的演奏されることが多いという。小田も気に入っている曲なのかもしれない。



「今はきかない」はAOR色の強い曲。しっとりと聴かせるメロディーが非常に心地良い。コーラスには鈴木雅之が参加し、この曲の世界観を彩っている。コーラスだがかなり目立っている。「君の過去」を聞こうとしている男が描かれているが、結局「今きかない 多分」と諦めてしまう。二人の心情が浮かんでくるような曲である。アルバムの後半にあるため存在感がかなりある。



「それとも二人」はベスト盤「あの日 あの時」にも収録されたポップナンバー。イントロには打ち込みによるブラスが使われており、この曲の世界に聴き手を引き込む。そこからバンドサウンドが流れ込む展開が印象的。曲の雰囲気としては、今作収録の「だからブルーにならないで」のような感じ。「今なら君と やり直せる」というサビ。大人の雰囲気漂うサウンドと歌詞が素晴らしい。間奏の佐橋佳幸によるギターソロが非常に格好良い。



「let me hold you baby」はストレートに愛を歌った歌詞が印象的なバラード。サウンドは少なめで小田のボーカルやコーラスワークを聴かせるイメージ。タイトルのフレーズはサビで歌われている。「いつまでも 変らない 愛よりも 眼の前の 君をたゞ抱きたいだけ」というフレーズが印象的。とても優しい雰囲気がある。



「my home town」は今作のラストを飾るタイトル曲。第一生命の「パスポート5000」のCMソングに起用された。小田和正自身の故郷の横浜について歌った曲。歌詞の中には「根岸線」というフレーズも登場する。京急の金沢文庫駅の駅メロにこの曲が使われているという。小田が横浜でコンサートを行う時にはアンコールで必ず演奏されているようだ。小田の故郷を大切にする気持ちが伝わってくるような曲。サウンドは極めてシンプルに、言葉を聴かせる。「どんなに変っても僕の生まれた街」というフレーズが好き。自分の故郷を大切にしたいものである。



ヒット作ではないが中古屋ではそこそこ見かける。これと言ったキラーチューンは無く、少々地味な印象が否めないアルバム。しかし、一曲一曲はとても良い曲ばかり。先行シングルがあまりポップな曲では無かったのがヒットしなかった原因なのだろうか?過小評価されているアルバムだと思う。この頃の小田の楽曲はまだAOR色の濃い曲が多い。AOR好きな方には是非とも聴いていただきたい。

★★★★☆