電気グルーヴ
1996-03-01

【収録曲】
1.2.作詞 石野卓球、ピエール瀧
3.作詞 電気グルーヴ
4.5.9.作詞 石野卓球
6.8.10.作詞 ピエール瀧
1.8.作曲 砂原良徳
2.4.5.7.9.作曲 石野卓球
3.作曲 電気グルーヴ
6.作曲 ピエール瀧
10.作曲 電気グルーヴ、ラロ・シフリン
プロデュース 電気グルーヴ

1.ママケーキ ★★★★★
2.誰だ! ★★★★★
3.キラーポマト ★★★☆☆
4.VIVA!アジア丸出し ★★★☆☆
5.なんとも言えないわびしい気持ちになったことがあるかい? ★★★★★
6.ポパイポパイ ★★★★☆
7.反復横飛び ★★★☆☆
8.スコーピオン ★★★★☆
9.スマイルレス スマイル ★★★★☆
10.Tシャツで雪まつり Including 燃えよドラゴンのテーマ ★★★★☆

1996年3月1日発売
KI/OON SONY RECORDS
最高位10位 売上6.8万枚

電気グルーヴの6thアルバム。先行シングルは無し。今作発売後に「誰だ!」が別バージョンでシングルカットされた。前作からは1年3ヶ月振りのリリースとなった。

前作「DRAGON」、そのまた前作「VITAMIN」は本格的なテクノを追求してインスト曲が多いアルバムだった。テクノとは言ってもハウスやクラブサウンド的なテクノ音楽である。しかし、今作に収録されたインスト曲は1曲のみ。つまり、10曲中9曲がいわゆる歌モノである。ネタ路線に傾倒した曲が殆どを占めている。

制作から数年間はメンバーからの評価が低かったという。今作リリース直前、砂原良徳は今作について「イマイチ…」と語っていたようだ。しかし、近年ではメンバーが「今までで一番ほっとして聴けるアルバム」と語っており、再評価されたと言える。


「ママケーキ」は今作のオープニング曲。砂原良徳がボーカルに参加している数少ない曲。かなり下手だが味がある。低音が響くハウス風の曲。このサウンドが格好良い。歌詞は冴えない男の生活を描いたもの。サビの「ついてねぇ こんなハズじゃなかった」「ついてるわけがねぇから もちろんのってるわけもねぇ」というフレーズが印象的。特に後者は中山美穂の「ツイてるねノッてるね」のパロディーである。この男、上京8年目で里帰りし、「兄貴の女房」に手を出してそのまま漁船に乗せられるハメに。普通に聴いていると面白いが男の立場になったとすると恐ろし過ぎる。このような「怖い曲」がある。


「誰だ!」は今作発売後にシングルカットされた曲。NHK『ポップジャム』のオープニングのほか、フジテレビ系クイズ番組『天才!ヒポカンパス』のメインテーマ、毎日放送制作ドラマ『古代少女ドグちゃん』のエンディングに起用された。当初はシングル化する予定はなかったが、タイアップが決まったので慌てて演奏時間をカットしたバージョンを作ってリリースしたようだ。これまたネタ路線の歌詞。色々なことをしている人に「○○してるのは誰だ!」と繰り返すだけのサビ。とてつもなくくだらない歌詞である。しかし、管理人がそれ以上にくだらなくて好きなのは2番の 「素っ裸で捕まり死刑はねーじゃん」というフレーズ。確かにそうなのだが実にくだらない。ただ、このナンセンスな歌詞が電気グルーヴらしさを感じさせる。


「キラーポマト」は前作収録のシングル「虹」のC/W曲の別バージョン。その時のタイトルは「Pomato」だった。サウンドはディスコサウンド。踊りたくなるような軽快さがある。誰のことを歌っているのか分からないが、ある人物について歌われている。「体がデカくて 朴訥フェイス」な「チラシに絵を描く 天才画伯」らしい。夜中に飛び起きて神社を掃除し、そのまま寝込んで捜索願いを出されるという奇行ぶり。遂には殺傷事件になってしまう。ふわふわとしたボーカルにかき消されがちだが結構恐ろしい内容である。


「VIVA!アジア丸出し」は浮遊感のあるサウンドが印象的な曲。ジャーマンテクノを彷彿とさせる。前半のスキャットの部分には岡村靖幸が参加している。バックで聴こえるがかなり存在感がある。歌詞は全くもって意味不明。「丸出し むき出し アジアだし」というフレーズが繰り返される。「アジアだし」って何だよ。歌詞はあるが実質インストに近い。サウンド面はとても格好良い感じ。かなり好きなサウンド。


「なんとも言えないわびしい気持ちになったことがあるかい?」は長いタイトルが印象的な曲。聴いていると本当に「なんとも言えないわびしい気持ち」になれる。サウンドはファンクっぽい感じ。タイトルと同じフレーズが何度も繰り返し歌われる。「なんとも言えないわびしい気持ち」になる例がセリフ形式で語られている。例えば「平日、閉店間際のデパートの屋上 耳の付いたドラエモン風の乗り物に母親と二人。ほかの乗り物にはすでにビニールシート。」というもの。なんとも言えないがわびしくなる。


「ポパイポパイ」はピエール瀧が作曲した曲。この曲を最後に、アルバム内のピエール瀧作曲による曲は少なくなる。聴いていると思うが、ピエール瀧の歌声は結構渋くて格好良い。歌詞はピエール瀧らしくネタ路線。様々な人や集団を挙げて、その名前は「ポパイ」と繰り返す。その中でも好きなのが「オカマバーのヒゲが似合う美人ママの名前がポパイ ハイヒール」「母親が送ってくれたトレーナーの胸にデカくポパイ 捨てられず」という二つ。よく分からないが言いたいことは大体分かるのである。


「反復横飛び」はインスト曲。ミニマルな感じのテクノサウンド。この曲でも前作やそのまた前作で多用されたリズムマシン「TB-303」が活躍している。後半にはいきなり德光和夫によるアナウンスが入ってくる。臨時ニュースの読み上げをしている。何ともシュールな曲である。


「スコーピオン」は砂原良徳作曲による曲。低音が強調されたサウンドが心地良い。恐ろしくなるような事態を挙げて「困っちゃう」と繰り返す歌詞。「サソリが部屋の中にたくさんいて 困っちゃう」「うしろの正面のぞいたらオレが立ってた 困っちゃう」と言った具合。困っちゃうなんてレベルでは無い。このようなお気楽な感じがたまらない。


「スマイルレス スマイル」は石野卓球の自信作。「このアルバムに入ったばっかりに不遇なんだけど割と好きな曲」とのこと。とても静謐なサウンドが展開されている。ジャンルで言うとダブやチルアウトにあたる。ここまで盛り上がってきたアルバムの流れを一気に落ち着けるようなイメージ。銀世界の中にいるような感覚になる。「気持ちで笑わない それもスマイル」というフレーズが印象的。凄く意味がありそうなのだが、結局意味は無いのかもしれない。


「Tシャツで雪まつり Including 燃えよドラゴンのテーマ」は今作のラストを飾る曲。タイトル通り『燃えよドラゴン』のテーマが使われている。そのため、作曲のクレジットには『燃えよドラゴン』のテーマの作曲者の名前が加えられている。サウンドはジャングルと言った感じのもの。1990年代中頃に流行ったような音楽である。この曲の凄いところは「Tシャツで雪まつり」のフレーズが一言も出てこないところ。比較的速いテンポの中で意味不明なフレーズが詰め込まれている。このような意味の分からない感じが電気グルーヴらしいのだろう。


ヒット作ではないが中古屋ではそこそこ見かける。「VITAMIN」や「DRAGON」でのストイックなテクノ、ハウス路線でもなければ次作「A」のような聴きやすさや多様性がある訳でもない。この作品は初期のネタ路線に走っていた頃を思わせる作風である。サウンド面は前作程凝ったものは少ない。しかし、同じネタ路線とは言っても歌詞の感じはかなり異なる。今作制作当時のメンバーは悩んでいたのか分からないが、かなり後ろ向きなイメージの歌詞が多い。能天気なほどの明るさはあまり感じさせない。ファンからの評価はあまり高くはない作品だが、一曲単位で聴くと良い曲ばかり。 少々不遇なイメージの強い作品である。もう少し評価されても良いと思う。

★★★★☆