山下達郎
2002-10-30

【収録曲】
全曲作詞作曲編曲 山下達郎
4.15.作詞 松本隆
5.作詞 竹内まりや
6.作詞 HAL DAVID 作曲BURT BACHARACH
8.作詞 吉田美奈子
10.作詞 康珍化&山下達郎
11.作詞作曲 BRIAN WILSON AND ROGER CHRISTIAN
プロデュース 山下達郎

1.BLOW ★★★★★
2.君の声に恋してる ★★★★☆
3.LOVE GOES ON(その瞳は女神) ★★★★★
4.HAPPY HAPPY GREETING(ORIGINAL DEMO VOCAL) ★★★★☆
5.MISTY MAUVE ★★★★☆
6.TO WAIT FOR LOVE(IS TO WASTE YOUR LIFE AWAY) ★★★☆☆
7.好・き・好・きSWEET KISS! ★★★☆☆
8.潮騒(THE WHISPERING SEA)(LIVE VERSION) ★★★★☆
9.モーニング・シャイン ★★★★☆
10.FIRST LUCK-初めての幸運(しあわせ)- ★★★★★
11.I DO ★★★★☆
12.ヘロン(GUITAR INSTRUMENTAL) 省略
13.JUVENILEのテーマ~瞳の中のRAINBOW~ ★★★★☆
14.スプリンクラー(LONG VERSION) ★★★★★
15.いつか晴れた日に(STAND ALONE VERSION) ★★★★★

初回盤のみDISC2(カラオケ集)
1.GET BACK IN LOVE
2.さよなら夏の日
3.蒼氓
4.パレード
5.ENDLESS GAME

2002年10月30日発売
MOON/WARNER MUSIC JAPAN
最高位1位 売上25.8万枚

山下達郎の3rdベスト盤。先行シングル「JUVENILEのテーマ~瞳の中のRAINBOW~」「君の声に恋してる」を収録。ベスト盤は1995年の「TREASURES」以来7年振りのリリースとなった。初回盤はDUOケース仕様でカラオケ集CDが付属。

今作はいわゆる「裏ベスト」である。シングルのC/W曲や未発表の洋楽カバーなど、今までアルバム収録を逃してきた楽曲が集められている。一部新曲が収録されている。それは次のアルバムに収録する予定だったシングル曲を前倒しで収録したものだという。

今作のタイトルは言葉の簡潔さや山下達郎本人の趣味などを踏まえて作られたもの。当初レコード会社から出たタイトルの案は「レアタツ」だったというが、「この年齢でそんなタイトルは勘弁してくれ」という山下の意見によって「RARITIES」のタイトルに落ち着いた。「レアタツ」は今作のキャッチコピーとして起用された。

可愛らしい感じのジャケ写が印象的だが、ジョージ・ベンソンの「GOODIES」のジャケ写から発想を得たものだという。中に写っている缶バッジは後に商品化された。↓ジョージ・ベンソンの「GOODIES」のジャケ写。




「BLOW」は1992年リリースのシングル「アトムの子」のC/W曲。1998年にはリミックスされて「COZY」のアナログ盤に収録された。CDのアルバムには初収録。TBS系の『アメリカンズカップ』のテーマソングに起用された。アメリカンズカップは国際的なヨットレースの大会。この曲の歌詞はそれを思わせるものになっている。山下曰くヨットレースのVTRを見ながら作ったのでその手の情景に合うという。曲の雰囲気は同じ頃に作られた「MAGIC TOUCH」と似たイメージ。終始流れるベースの音がとても格好良いが、これはベーシストの伊藤広規の努力のたまものである。山下曰く、伊藤はタコのように顔を真っ赤にして演奏していたという。何故この曲が長く埋もれていたのか疑問に思う程の良曲。管理人の中では 山下達郎のキャリアを通じてもかなり好きな曲。


「君の声に恋してる」は先行シングル曲。NTTコミュニケーションズのCMソングに起用された。「ヘロン」と同じような、フィル・スペクターやナイアガラサウンドを彷彿とさせるウォール・オブ・サウンドが展開されている。とてもポップで優しげな曲調。タイアップ相手からも想像がつくが、電話が歌詞の中に使われている。遠距離恋愛をテーマにした歌詞である。「遠く離れていたって 淡い光のボタンで いつも君を呼べるよ」という歌い出しのフレーズが顕著。


「LOVE GOES ON(その瞳は女神)」は新曲。フジテレビ系番組『サタ★スマ』(2002年以降は『デリ!スマ』と改題)のエンディングテーマとして作られた。タイトルの「女神」は「Goddess」と読む。1970年代初めのR&Bテイストの曲。山下曰く、「夕暮れの街への憧憬を歌った」曲。この点はシュガー・ベイブ時代の「パレード」を彷彿とさせる。ホーンセクションが使われており、とても楽しげな曲になっている。多幸感溢れるラブソングである。


「HAPPY HAPPY GREETING(ORIGINAL DEMO VOCAL)」はKinKi Kidsに提供した曲のセルフカバー。今作収録にあたって新録された。KinKi Kidsバージョンには太鼓や鼓のような和楽器が使われていたが、こちらは使われていないため、山下曰く「いかにもデモテープと言った感じのシンプルでインディーなオケ」とのこと。作詞は松本隆が担当した。山下達郎バージョンでは歌詞が若干変更されている。様々なお祝い事が詰め込まれた楽しげな歌詞である。「NEW YEAR」「BIRTHDAY」「VALENTINE」等。KinKi Kidsの堂本光一の誕生日が1月1日なので、それを祝う意味もあるようだ。KinKi Kidsバージョンも良いが、山下達郎が歌うと不思議と重みが生まれる。山下の声が入るだけで山下達郎のオリジナル曲だと感じられる。


「MISTY MAUVE」は鈴木雅之に提供した曲のセルフカバー。鈴木雅之バージョンは1988年リリースの「RADIO DAYS」に収録されている。「ARTISAN」の頃にミックスダウンまで済ませていたが未発表のままだったという。作詞は竹内まりやが担当した。このパターンでの楽曲提供はあまり無いという。鈴木雅之に提供した曲というだけあって、大人の雰囲気漂う上質なラブソング。鈴木雅之バージョン、山下達郎バージョン共に素晴らしい歌唱力。ホーンセクションがこの曲のムードを高める。夜に聴きたくなるような曲である。


「TO WAIT FOR LOVE(IS TO WASTE YOUR LIFE AWAY)」は未発表曲。バート・バカラック、ハル・デイビッドの作品のカバー。多くのアーティストによってカバーされている。「SEASON'S GREETINGS」のアウトテイクだった。今作収録にあたって、全面的に録音をやり直したという。山下の若い頃は自分には渋すぎるように感じていたという曲。タイトルは歌詞の対訳を見ると「恋を待つなんてただ人生を無駄にしているだけさ」というような意味があるようだ。シンプルながらも美しいメロディーにサウンド。とても心地良い曲である。


「好・き・好・きSWEET KISS!」は1998年リリースのシングル「いつか晴れた日に」のC/W曲。今作収録にあたって追加でレコーディングされているという。元々は誰かへの楽曲提供を想定して作ったので作家としての山下達郎の部分がよく表れているとのこと。結果的には1980年代のEPOの曲のようになったという。山下曰く歌詞は渋谷のハチ公の交差点のビジョンがあるところでのデート風景らしい。サウンドは打ち込みがメイン。この曲も幸せな感じに溢れている。他者への提供を想定しなければ作らないだろうなあ…と思うような曲。


「潮騒(THE WHISPERING SEA)(LIVE VERSION)」は1985年リリースのシングル「風の回廊(コリドー)」のC/W曲。タイトルからも分かるがライブバージョンである。今作収録に際してリミックスされている。このような機会が無いといつまでも埋もれていそうなライブバージョン。聴いていると思うのは生歌の上手さ。この曲を生で聴いたら泣く自信がある。


「モーニング・シャイン」は1991年リリースのシングル「さよなら夏の日」のC/W曲。元々はTBS系情報番組『ビッグモーニング』のテーマソングとして作られた曲。山下自身ではお気に入りだったというが、アルバムに入れる機会を逸してしまい、今作に収録されることとなった。朝の番組にふさわしい爽やかな雰囲気溢れる曲。「遠い場所から 僕等の街へ かけがえのない 朝が来る」という歌い出しのフレーズが印象的。山下達郎の楽曲と朝の雰囲気は合うのかもしれない。


「FIRST LUCK-初めての幸運(しあわせ)-」は1988年リリースのシングル「GET BACK IN LOVE」のC/W曲。1987年にホンダの「インテグラ」のCMソングとして作られた。「僕の中の少年」に入れようとしたが、作風と全く合わなかったため収録されなかったという。作詞は康珍化との共作。イントロから山下によるギターのカッティングが流れ、爽やかな雰囲気に包まれている。今まで埋もれていたのが勿体無いくらいの良作。車のCMと山下達郎の楽曲の相性は抜群だと思う。


「I DO」は1993年リリースの「MAGIC TOUCH」のC/W曲。The Castellsが1964年にリリースした曲のカバー。ブライアン・ウィルソンが作曲、プロデュースを務めた曲。ほぼ全てのパートを山下本人が演奏している。2分半という短い曲。原曲は全く分からないが、爽快感溢れるサザンポップになっている。歌詞は対訳を見ると恋人への愛を誓うストレートなラブソングのようだ。「だから約束しよう 約束しよう 君を選ぶ 君を妻に選ぶよ そう 約束しよう 一生かけて」という感じのサビらしい。何度でも聴きたくなるような素晴らしい曲。


「ヘロン(GUITAR INSTRUMENTAL) 」は1998年リリースのシングル「ヘロン」のC/W曲。タイトル通りインストバージョン。フェンダー・テレキャスターの音を複数回重ねてメロディーを演奏しているという。このような作品でないと収録されないような曲。


「JUVENILEのテーマ~瞳の中のRAINBOW~」は先行シングル曲。2000年公開の映画『ジュブナイル』の主題歌として作られた。今作収録にあたってリミックスされた。映画の内容を意識したためか、作曲・編曲共にとても内向的なアプローチになっているという。子供の頃の夏休みを思い出させるような懐かしい感じがする曲。このような曲は山下達郎の王道と言えるかもしれない。「胸にしみ込んだ 雨のささやき 遠い風の匂い 今でも忘れはしない」というフレーズが印象的。


「スプリンクラー(LONG VERSION)」は未発表曲。1983年にリリースされたシングル曲「スプリンクラー」のロングバージョン。当時はこの曲のようなロングバージョンが流行していたようで、元のテープに色々と手を加えて加工して、無理やり作ったという。サックスソロは今作リリースの2年5ヶ月前に亡くなった井上大輔さん。今作に収録されたのは彼への哀悼の意でもある。このバージョンを聴いていて思うのは、頑張って引き伸ばしたなあ…ということ。こちらのバージョンも良いが、管理人は元のバージョンの方が好き。


「いつか晴れた日に(STAND ALONE VERSION)」は1998年にリリースされたシングル「いつか晴れた日に」のC/W曲。ギター一本で歌った弾き語りバージョン。元々弾き語りを目論んだ作品だったので、このような弾き語りバージョンをどうしても入れたかったという。元のバージョンもシンプルなサウンドだったが、こちらはさらにシンプルになっている。ラストを飾るのにふさわしいシンプルさと力強さがある。


中古屋ではそこそこ見かける。「裏ベスト」なのでマニアなファン向けの作品のようなイメージがあるが、ライトリスナーが聴いてもいい曲と思えるような曲が多い。C/W曲でも手を抜いて作らないという山下達郎の姿勢を表しているかもしれない。もっと取り上げられても良いのではないかと感じる程完成度の高い曲が並んでいる。ベストの次に聴いてみるのも意外に良いかもしれない。

★★★★★