サニーデイ・サービス
1997-01-15

【収録曲】
全曲作詞作曲 曽我部恵一
全曲編曲 サニーデイ・サービス
プロデュース 曽我部恵一

1.忘れてしまおう ★★★★★
2.白い恋人 ★★★★★
3.JET ★★★★★
4.知らない街でふたりぼっち ★★★☆☆
5.96粒の涙 ★★★☆☆
6.雨の土曜日 ★★★★☆
7.愛と笑いの夜 ★★★★☆
8.週末 ★★★★☆
9.サマー・ソルジャー ★★★★★+2
10.海岸行き ★★★☆☆

1997年1月15日発売
2015年6月26日発売(LP盤)
RHYME/MIDI
最高位10位 売上2.8万枚

サニーデイ・サービスの3rdアルバム。先行シングル「サマー・ソルジャー」を収録。今作発売後に「白い恋人」がシングルカットされた。前作「東京」以来11ヶ月振りのリリースとなった。初回盤はスリーブケース付きでデジパック仕様。

1st「若者たち」、2nd「東京」とフォークロック路線の楽曲を展開してきたサニーデイだが、今作はサニーデイ・サービス独自のロックやポップスが展開されている。それは前作で片鱗を見せていた要素だが、本格的に現れるようになったのは今作から。サニーデイ・サービスを語る際によく登場する「1970年代」「はっぴいえんど」といったフレーズは今作以降あまり使われなくなる。サウンド面に於いても、歪んだギターサウンドが現れるなど変化を遂げている。

曽我部曰く「このアルバムが好きな人は男が多い」らしい。今作は当時曽我部が付き合っていた人と別れたことがテーマになっている。それとプラスして香港の映画監督ウォン・カーウァイの映画『天使の涙』やオアシスのサウンドに影響を受けているという。曲作りはたった一週間程度で終わってしまったという。「別れたショックから立ち直らないうちに書いちゃおうと思った。"この状況、おいしい"と思った。」とのこと。

今作のタイトルはアメリカの小説家ヘンリー・ミラーの小説『愛と笑いの夜』(原題『Nights of Love and Laughter』)から取られた。曽我部は一旦「愛と笑いの日々」というタイトルにしようと考えたようだが、結局「愛と笑いの夜」になったという。

ジャケ写の撮影は香港で行われた。それは前述した香港映画『天使の涙』の影響を受けたからだという。曽我部は「やりたいことが凄く明確だったアルバム」と語っている。


「忘れてしまおう」は今作のオープニング曲。冒頭からかなりシリアスな曲である。歪んだギターが前面に出てサウンドを引っ張っており、シリアスな雰囲気が溢れている。今までのアルバムのオープニング曲は爽やかなイメージの楽曲だった。今までとは違ったサニーデイ・サービスの姿をこのような所にも見せてきた。失恋した男が「忘れてしまおう」と誓う歌詞になっている。「ひとり飲むコーヒーは終わったばかりの恋の味」という歌詞が印象的。


「白い恋人」は今作発売後にシングルカットされた曲。前の曲とは繋がって始まる。この繋がりがたまらない。サニーデイらしい爽やかでポップな曲である。ベスト盤に収録されるくらいなので人気がある曲だと思われる。歌詞の世界は日曜日の朝を舞台にしている。「くずれ落ちて もつれ合って 浮かんでは沈んで 教会の鐘の音だけが聞こえてくるんだ」というサビの歌詞が印象的。曽我部のボーカルもとても力強く、この曲を彩っている。


「JET」はオルタナロック色の強い曲。歪んだサウンドが終始展開されている。ギターサウンドとクラビネットの絡みが非常に格好良い。歌詞は夜の街をイメージさせるもの。「いつかどこかで見たような記憶 辿るうちにもつれて行く」というサビの歌詞が意味深。「夜は鮮やかなまま」というサビ終わりの歌詞はこの曲の世界観を象徴するようなフレーズである。曲の最初と最後には飛行機の離陸音が入っている。タイトルはそこから来ていると思われる。


「知らない街でふたりぼっち」はここまでの流れを落ち着けるような歌謡曲テイストの曲。この曲は今までのサニーデイの雰囲気を感じさせる。アコーディオンの音が耳に残るサウンド。タイトル通り知らない街にいるような感覚になる歌詞が展開されている。「月がきみの瞳に登ればそれはいつもの恋のあいず」という二番の始まりの歌詞が好き。何ともロマンチックな世界観である。曽我部の艶のあるボーカルが素晴らしい。しかし、今作の中では浮いている印象が否めない。


「96粒の涙」は曽我部のギター弾き語りによる曲。曲は2分半程度ととても短い。シンプルではあるがとても引き込まれる。「あの丘の上湧きたつ碧く深い泉は ぼくが昨日流した きみのための涙さ」という歌い出しからインパクト抜群。気になるのは「96粒」という数字の理由。とくに深い意味は無いのだろうか?


「雨の土曜日」はベスト盤にも収録された人気曲。今作の収録曲の中でもトップクラスでポップな曲。バンドサウンドとピアノが絡んだサウンドがとても心地良い。爽やかな曲ではあるが雨の日のようにジメジメとした雰囲気も感じさせる。雨の降る街を「青白くけぶった街並み」と表現し、空を「そっぽ向いた空」と表現する曽我部には脱帽である。タイトル通り「雨の土曜日」になるとラジオでよくリクエストされるのだとか。曜日関係無く、雨の降った日には聴きたくなる曲である。


「愛と笑いの夜」はタイトル曲。サウンドはシンプルなバンドサウンドでまったりとした雰囲気がある。ロンドンの風景が浮かぶような歌詞。「倫敦の霧の向こうに消えて行くような そんな夜がある」というサビの歌詞が印象的。「倫敦」と漢字表記するのもサニーデイらしい情緒がある。後半には外国の雑踏を想起させるような声や、機関車の音が入っている。どこか旅先で聴きたくなるような魅力がある。


「週末」はゆったりとした曲調が心地良い曲。穏やかな雰囲気がたまらない。サウンドはアコースティックなイメージのもの。「ゆっくりと だけど確かにおだやかに時間は過ぎる 気付いたらもうこんな所だなんてぼくなんか思ってしまう 寄せては返すように波のように土曜日へと走る車の中」というサビの歌詞は聴く度に鳥肌が立つ。金曜日の夜、日付が変わる間際に聴きたくなるような曲である。


「サマー・ソルジャー」は先行シングル曲。タイトル通り夏を舞台にした曲。ギターのアルペジオによる静謐なイントロから始まり、力強いバンドサウンドが流れ込む。突き刺してくるような夏のギラギラとした太陽が思い浮かぶような力強いサウンド。妄想と現実の境目が分からないような歌詞。そして繊細ながらも荒々しさを感じさせる曽我部のボーカル。どれを取っても圧倒的な存在感と完成度を誇る。夏の真っ盛りよりも夏の終わり際に聴きたくなる。特に夕暮れの中で聴くと素晴らしいだろう。管理人の中では サニーデイ・サービスの楽曲単位での最高傑作 だと思っている。
余談だが、このシングルのリリースは10月。その辺りもサニーデイらしさを感じさせる。


「海岸行き」は今作のラストを飾る曲。「サマー・ソルジャー」で最高潮に達したアルバムの雰囲気をそっと落ち着けるようなこの曲。全ての演奏を曽我部自らが行った。録音やミックスも曽我部自身が行った。ボーカルが聴こえにくいような音作りがされている。「すぐに秋が来て海にはだれもいなくなる」というフレーズがとても切ない。夏の終わりに聴くのがおすすめ。こうしてアルバムは静かに幕を閉じる。


ヒット作ではないが中古屋ではそれなりに見かける。暗い雰囲気漂う楽曲が多め。しかし、今作はサニーデイ・サービス独自の音楽の萌芽と言える作品。ポップで繊細かつ爽やかな曲、叙情的でどこか懐かしい歌詞、良い意味でスカスカしたバンドサウンド…どれを取っても変えが効かない。一曲単位の完成度もさることながら、アルバム全体の統一感がある。サニーデイの最高傑作とまでは思わないが、確かな名盤だと思う。

★★★★★