小田和正
2000-04-19

【収録曲】
全曲作詞作曲編曲 小田和正
プロデュース        小田和正

1.忘れてた 思い出のように ★★★★☆
2.また、春が来る ★★★★☆
3.the flag ★★★★★
4.woh woh ★★★★★
5.青い空 ★★★☆☆
6.君たちを忘れない ★★★★☆
7.はるかな夢 ★★★☆☆
8.19の頃 ★★★★★
9.こんな日だったね ★★★★☆
10.風のように ★★★★★
11.とくべつなこと  ★★★★☆

2000年4月19日発売
Little Tokyo/BMGファンハウス
最高位4位 売上29.3万枚

小田和正の6thアルバム。先行シングル「こんな日だったね」「woh woh」を収録。オリジナルアルバムとしては「MY HOME TOWN」以来6年半振りのリリースとなった。

1993年に「MY HOME TOWN」をリリースした後、あるインタビューで「もしかしたら、オリジナルアルバムはこれで最後かもしれない」と語った。ファンはもうオリジナルアルバムという存在を求めていないのではないかと感じた小田が発した言葉。シングルで新曲を発表してはいたが、今作リリースまでに発表したアルバムはオフコース時代の楽曲のセルフカバーの「LOOKING BACK」やベスト盤だった。

今作収録曲は今までの小田和正の楽曲とはどこか違った雰囲気がある。普通の恋人同士のラブソングではなく、人間全てへの愛を歌ったようなイメージのラブソングや、メッセージ性を感じさせるような歌詞を持った曲が多い。管理人の推測ではあるが、1998年に小田が起こしてしまった自動車事故の経験が影響していると思っている。そこで助かった小田に待っていたのは多くのファンからのメッセージや新曲を待つ人々の声。その声に応えるべくアルバムを制作し始めたのではないだろうか?

今作の収録曲は以前の小田和正の楽曲に似ているところがあるという。これは小田自身が計画して行ったこと。その辺りも「個人主義」というタイトルに関わっているのかもしれない。そのためか今作に対してのファンからの評価はかなり分かれる。


「忘れてた 思い出のように」は今作のオープニング曲。毎日放送の『世界ウルルン滞在記』のエンディングテーマに起用された。落ち着いた雰囲気溢れるラブソング。サウンドは打ち込みとバンドサウンドが上手く調和したもの。コーラスにはスターダストレビューや山本潤子が参加している。思い出を振り返りつつも、今の恋人に感謝を伝える内容の歌詞。「雨に架かる 虹のように 通り過ぎる 春風のように 忘れてた 思い出のように どんな時も 近くにいてくれた 君に ありがとう」というサビの歌詞が印象的。


「また、春が来る」は繊細な季節の描写がされた歌詞が展開された曲。タイトルからも推測できるが、冬が舞台になっている。別れた恋人への想いを綴った歌詞である。「もう一度 二人 会わないで いいかな」というフレーズが印象的。小田和正ならではの切なさを感じさせるメロディーが心地良い。ポップなのだがそれでいて切ない。ギターは基本的に佐橋佳幸に任せることが多いが、アコギは小田自らが演奏している。


「the flag」はベスト盤(「自己ベスト-2」)にも収録された曲。Yahoo! JAPANスポーツ応援プロジェクトテーマソングに起用された。コーラスにはスターダストレビューが参加している。高揚感溢れるピアノによるイントロから始まり、力強いギターサウンドが曲を引っ張る。心地良いポップロックナンバー。歌詞は小田と同世代の人々へのメッセージと取れるもの。小田は「"応援"というより"喚起"」と歌詞について語っている。小田と親交のある星野仙一はこの曲を聴いて涙したという。今作の作風を象徴するような曲である。ジャケ写は旗のようなデザインになっているが、この曲と関係があるのだろうか?


「woh woh」は先行シングル曲。JRAの2000年、2011年のCMソングに起用された。競馬を思わせるような疾走感やドラマチックさは全く感じさせないが、聴く度に好きになれるような魅力がある。音はかなり少なめ。アコギの弾き語りがメインである。小田のボーカルを聴かせるイメージ。恋人への想いを優しく語った歌詞。「確かな ことなど 今は 何も ないけど ほんとうに 大切なことは 君が 教えてくれた」という歌詞が印象的。


「青い空」はミドルテンポの内省的な雰囲気の曲。歌詞は社会に対しての自らの夢を歌ったもの。まさに「個人主義」というタイトルに合っている。コーラスワークがとても美しい。山本潤子がコーラスで参加している。曲はどことなくメロウな感じ。「思っているよりずっと この街は 大きくて ちっぽけな 僕は どうでもいいらしい」 「思ってたよりもさらに ずっと ずっと 早く 人生は 過ぎて行くみたいだ」のように内省的な歌詞が多め。タイトルの「青い空」は希望に満ちた未来の比喩だと解釈している。 社会派なイメージの楽曲だが小田和正の歌声にかかればさらっと聴けてしまう。


「君たちを忘れない」は自動車事故から復帰して最初に発表した曲。NHKのドラマ『必要のない人』の主題歌に起用された。同タイトルのサウンドトラックに収録されていた。聴き比べはしていないが、再録されているようでかなりサウンドが違っているという。サックスの音が印象的なAORテイストのサウンドである。コーラスは小田和正との相性抜群なSING LIKE TALKINGの佐藤竹善が参加している。自動車事故からの復帰作ということで、今までに会ってきた人たちを振り返るような内容の歌詞が展開されている。タイトルもどことなく意味深である。今作の世界観を象徴するような曲だと思う。


「はるかな夢」はしっとりと聴かせる内省的な内容の曲。アコーディオンが使われたサウンドが特徴。歌詞は人が思い描く夢について語られたもの。コーラスには山本潤子が参加している。「幼い子らは 誰を 信じて 何を 見つめて 歩けばいい」という歌詞はとても考えさせられるものがある。この頃の小田和正の楽曲の世界観を代表する曲である。


「19の頃」はアルバム曲ながらCMソングに起用された曲。2000年と2012年のJRAのCMソングに起用された。派手ではないが力強さを感じさせるバンドサウンドが展開されている。コーラスにはスターダストレビューと山本潤子が参加している。タイトル通り、小田が19歳だった頃のことを回想した内容の歌詞。小田の同世代はもちろん、全ての世代が共感できるような人生の応援歌になっている。「この道を今 行くほかはない 自分の場所へ たどり着くためには」という歌詞が好き。今作収録曲の中で管理人が最も好きな曲。


「こんな日だったね」は先行シングル曲。日産の「エルグランド」のCMソングに起用された。自動車事故から復帰して最初のシングル。ポップではあるが壮大なイメージのサウンド。コーラスは佐藤竹善が参加している。サビは字余りしているような歌い方になっている。これまた歌詞は過去を振り返るような内容。「悩むことさえ知らなかったあの日々も たゞ立ちつくしていたあの日々も 僕ら二人は いつもそばにいた 流れてゆく 同じ時の中を」というサビの歌詞が印象的。


「風のように」は既発曲。日産の「エルグランド」のCMソングに起用された。1997年リリースのシングル「緑の街」のC/W曲だった。今作収録バージョンは1998年2月3日に東京国際フォーラムで行われたライブで演奏されたライブ音源。ファン人気がとても高い曲。静かながらも圧倒的な力強さを感じさせる曲になっている。小田自身も気に入っているようで、自動車事故で入院している際にテレビから流れたこの曲を聴いて「よし!」と励まされたというエピソードがある。ライブバージョンとのことだが、小田和正の生歌がとてつもなく上手い。というか執筆するにあたって調べるまでライブ音源だと気づかなかった。ベスト盤「自己ベスト」に収録されているバージョンもこれと同じ音源。「誇りある道を歩いてく どんな時も やがていつか ひとりだけになってしまうとしても」というサビの歌詞は聴く度に鳥肌が立ってしまう。


「とくべつなこと」は今作のラストを飾る曲。小田によるピアノの弾き語りがメインになったゆったりとした雰囲気の曲。歌詞は別れた恋人達の再会を描いたもの。「きっと また二人 会う時が来る 君の言葉が こうして今 ほんとうになったんだね ほんとうになったね」というラストの歌詞が印象的。とても優しい雰囲気の曲。ラストにふさわしい曲である。


中古屋ではそこそこ見かける。内省的な雰囲気の曲が多く並ぶアルバム。過去の楽曲と似たように作った曲もあるようなので評価がかなり分かれるが、少なくとも管理人は好きなアルバムである。小田和正の音楽を振り返る中で今作はかなり重要な立場にあると思う。今作を境に歌詞のテーマが変わってきたように感じる。全編通して地味な印象が否めないアルバムではあるが、一曲単位では良作ばかり。一回聴いただけでは魅力が分からないかもしれないが、何度か聴くと自然と良さが分かってくる。

★★★★☆